新天地を求めて

 旧・ニクラム隊は『木組みの村』から離れた草原地帯に移動した。

 『木組みの村』の者たちも戦意を喪失そうしつしており、これ以上殺人を続けるのも興ざめだった。

 いろいろやらねばならないことがあった。

 ニクラムをはじめとする幾名かの死者の埋葬まいそう、新しい長の取り決め、イェードを含む負傷者の治療ちりょうなどだ。

 便利な毒消しなどもなく、イェードは止血などの効果があるとされる薬草を水と煮詰めた薬品を、ナイフが刺ささった左太ももに塗られて横になっていた。

 たまにうめき声を上げるが、起きる気配もなく、周囲には心配そうに彼を見る者たちも居た。

 おそらく、死にはしないだろう。

 そう、薬品を扱う男がそういった。

 確かにイェードは、戦いから半日近く経ってから起き、満足に動けるようになった。

 ニクラムなど死者の埋葬は終わっており、ニクラム隊は、マルス隊と名前が変わっていた。

 ニクラムは五〇年を生きた男だったが、最後はあっけないものだった。

 マルスは成人してから大分経つ大男で、次の長としては、年齢から決まったのだった。

 イェードは隊全体の取り決めに逆らうことはなく、そのままを受け入れたのだった。

 驚いたのは、マルスを補佐する役割の副長ふくおさの三人に、イェードが選ばれていたことだった。

 班長にも格上げされており、どういうことなのかと訪ねるイェードだが、人手不足なのと今までの活躍、判断能力からそう決めた、ということを時間をかけて残る二人の副長が説明した。

 イェードはそれで自信をつけ、治療に礼を言って立ち上がって元気さを見せた。

 問題は、さらにこれからどうするか、だ。

 イェードが起きたのは、ちょうど日が登ったあたりで、すぐに話し合いとなった。

 イェードを座らせて、マルスたちが話す。

 報復はもう十分に為した、ということで良いだろう。

 あの村(『木組みの村』)は半分は壊滅したので、これ以上の罰を与える必要はない、と。

 イェードもそれにうなずく。

 周りを見わたせば、以前より多くの食料を運んでいることに気がつく。

 『木組みの村』から略奪したのだ。

 奴隷どれいは管理が面倒なので、そういったことはしていない。

『もっと世界を見たい』。

 イェードの素朴な言葉だが、負傷者の勇敢ゆうかんなその一声にマルスに二人の副長が大きく頷く。

 移動を続けよう、そう決まった。

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