夏休み③
女性を中心として抜群のの人気を誇っているスイーツショップ『パティスリー』。
特にフルーツタルト系のケーキが人気のようで、数々のインフルエンサーがSNSに載せるた写真を撮るために遠方からはるばる訪れるほど。
ふんだんに使われた数々のフルーツの中でも一番人気は、シャインマスカットと有名ブランドイチゴを使用した『ツブ王タルト』と呼ばれるケーキ。
訪れた際は是非食べてみてはいかがでしょうか───
※抜粋 オーガストのスイーツ日記より
「だってよ」
「なんか修斗がそういう話すると違和感があるよね」
「なんでだよ」
確かに俺はそう言ったものを食べてこなかったし、前に梨音にケーキを買って行ったときも近くにあったチェーン店で買ったものだ。
でも新しいことに挑戦しようとしている時はなんだって始めは違和感あるもんだろう。
もしかしたら俺がこの先スイーツにどハマりする可能性もあるだろうに。
「というか調べなくても結構有名だよそこ。クラスの女の子達もこの前話してたし、私も中学生の頃に一回食べたことあるもん」
「へぇ。俺がこの手の話に疎いだけか」
「そうだよ」
「…………ちなみになんだが、これは完全に俺の100%偏見になるんだけど……前橋も知らなかっただろ」
「!? し、しし知ってるし」
「目が個人メドレー泳いでるぞ」
水泳選手もビックリするほどのスピード。
「流石にそれは失礼すぎるんじゃない修斗。きいだって女の子なんだから、有名な『パティスリー』ぐらい知ってて当然だよ。ねぇきい?」
「………………………もちろん」
すんごい
異能力者を疑うレベルで数秒時止まったぞ。
フォローどころか友人をより一層追い込んでいることに梨音が気付くことはあるのだろうか。いや、ない。反語。
「ほら、目的のケーキ屋さんに着いたよ。今の時間は意外にもそんなに並んでないみたいだね」
「じゃあさっくりと人数分買って帰ろうぜ」
「もうっ。風情ってものがないんだから。もうちょっと有名店を見た時の感想とか……」
「別にじっくり外観から眺めて堪能してやってもいいが、早く店に入らないとほれ、そっちの温室育ちのトマトが茹でってる」
「え?」
「あっつい…………」
既にテクニカルノックアウト間近が一人。
汗だくで歩くのもやっとな様子。
ワイシャツがほんのりと湿り、背中に薄っすらと透けて見える水色様の何か。
気付いていても見ないふりをしてあげるのが紳士ってやつだな。
「きい大丈夫? サッカーやってたし温室育ちってわけでもないから平気だと思ってたけど……」
「暑いのに慣れなんてないよ……」
「しかも今は普段から部屋に篭りきりだしな。もう一回外に出て駆け回った方がいいんじゃないか?」
「小学生みたいな扱いしないで」
怒ったように少し頬を膨らませる前橋。
ハムスターかな。
数分並ぶとすぐに店内へと入ることが出来た。
店内の席はそれほど多くない。
既に満員状態であったが、俺達はテイクアウトだったので問題は無かった。
「修斗達はどれがいいとかある?」
「いや、梨音に任せるよ」
「私も」
「オッケー。じゃあ適当に選んじゃうね。これと…………これ…………あとはこの辺かなぁ」
梨音がテキパキとケーキを選んでいく。
ろくにケーキを食べたことない俺が選ぶとしたら、間違いなく無難にショートケーキ系を選んでしまうだろう。
もしくはイチゴが乗ってるやつ。
まるで安牌なバックパスを繰り返して、チャレンジな縦パスを出さないプレーヤーのようだ。
こういうのは適材適所というものがあるのだ。梨音に任せておけば間違いない。
「じゃあこれでお願いします」
「はい。合計六つで……3800円のお会計となります」
「結構すんなぁ」
大体一つ600円を超えてくるのかよ。
普通に大盛り弁当買える値段じゃないか。
「タルト系は割とこんなもんだよ。600円代ならまだ優しいほうかな」
「俺の知らない世界だな…………前橋?」
「……な、なに?」
「いや…………なんでもない」
店員さんがショーケースからケーキを次々取り出すのを前橋はキラキラしたように、まるで田舎から出てきた少女が都会の夜光に見惚れるように眺めていた。
ケーキに興味ないような素振りしていてその
あえてそれを指摘するのも野暮ってもんだ。俺は後方理解者面しながら腕組みして頷いているか。
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