第36話 Purification(浄化)

エディ「みなさん、お疲れ様です。ようやくホテルへ到着です。」


僕「エディ。お疲れ様。長い時間の運転ありがとうございます。助かりました。」


山田「エディ、ありがとう。本当に助かりました。充実したスケジュールでした。貴重な経験ができたのもエディのお陰ですよ。ありがとうです。」


ヘルマワン「エディ、お疲れ様。運転ありがとうございます。兄の供養もできて、本当にうれしい限りです。酒井さん、山田さんも本当にありがとうございます。一緒に貴重な時間をっ過ごせて本当にうれしかったです。兄も喜んでいます。」


ホテルの駐車場に置かれた車から降りた僕たち四人は、こんな会話を交わした。


ヘルマワンはそのまま、バイクに乗って帰宅した。


僕「ヘルマワン、気を付けて帰ってくださいね。道が混みあう時間ですからね。」


ヘルマワン「はい、ありがとうございます。」


山田「ヘルマワンさん、ありがとう。」


ヘルマワン「山田君もバリ島を楽しんでくださいね。」


エディも今日の仕事は、僕と山田とのガイドのみだったようで、帰宅すると言っていた。僕と山田は、もちろん部屋に戻り一休みといったところだ。部屋に戻った僕と山田は、クーラーのあらかじめセットされた部屋に入り「ほっと」した。さすがの山田も疲れていたようでベッドの上に横たわった。


僕「山田君、疲れたでしょう。さすがに。」


山田「なんだか貴重な体験することが多くて、少々疲れちゃいましたよ。酒井さん、シャワーを浴びられますか。」


僕「そうですね。先に山田君、浴びてきてもいいですよ。」


山田「では、お先にシャワータイムしちゃいます。」


僕「了解。」と、山田はバスルームへ入っていった。


僕はといえば、先ほどまで見学していたブサキ寺院とランプヤン寺院の画像をチェックし始めた。僕たちの滞在しているコテージは、2ルームあるため、僕はリビングルームで画像をチェックしている。部屋の扉は開け、ホテルで焚いているバリ島のお香の香りが漂う風を感じている。この香りって本当心落ち着くんだよねって一人、感じていた。間もなくするとバスルームから汗を流しすっきりした山田が出てきた。


山田「酒井さん、お先にシャワーありがとうございました。酒井さん、バスタブにお湯をはっていますから、どうぞ。」


僕「山田君、気が利くね。」


山田「いえいえ、いつも酒井さんが俺にしてくれていることを、真似をしただけですよ。」


山田は、僕の行動パターンを身に着けてくれていた。僕は山田の心遣いに感心した。


僕「じゃ、山田君のお心遣いで、今からバスタイムにしますね。」


山田「ごゆっくり。バスタイムをお楽しみください。」


僕は、バスルームへ向かった。バスルームの扉を開け、日差しの差し込んでいる心地よい

室内へはいった。バスルームの鏡に向かい、日焼けを確認した。やはり、ここはバリ島である。日焼けしていないつもりでも、結構、日焼けはしているものだ。顔がほんのり赤らんでいる。腕は少々ピリピリする。


僕は、まず火照った顔に洗顔クリームで汚れを落とした。次にバスタブに足を付け、足の脹脛をゆっくりと揉みほぐした。


ブサキ寺院とランプヤン寺院では、結構な距離を歩いたからだ。僕はゆっくりと体を湯船に沈めていった。思わず「あっ」と声が漏れる。この瞬間が、僕は好きだ。


湯船に沈んだ体も日焼けをしているらしく、少々、二の腕のあたりがひりひりとする。バスタブに体を沈める。僕は足を思いっきり延ばすことができる。湯船にはエッセンシャルオイルをいれてある。この香りはジャスミンの香りだ。ホテルのアメニティにエッセンシャルオイルが用意されている。お湯の中に入れたエッセンシャルオイルが温まり、更にバスルーム中にジャスミンのほのかな香りが漂っている。僕は湯船につかりながら、うつらうつらとしてしまった。


僕の意識が、ほんわかとリラックスし始めたころ、湯船のお湯が波立ち始めた。と、同時に僕は金縛りにあった。波打ち始めたお湯が、空中に塊となり始めた。僕は、怖いという気持ちは全くなかった。ただ、何だろうという好奇心が先立っていた。そのお湯の塊は、見る見るうちに人の方となった。その人の形は二人の人間の姿としていた。


僕は、そのお湯の塊でできた人型の塊がインスピレーションを送ってきた。それには「今日は、われらの氏寺を参拝してくれてありがとう。ようやく、私は現世で成し遂げられなかった方と結ばれた。本当に感謝している。」というメッセージだった。


僕は、そのメッセージを受け取り、なんだか「ほっと」したような感覚と、それと同時に涙が止まらなくなった。お湯の人型の塊が、消えると同時に僕の涙も止まった。大海原の女神とブサキ寺院へ行く途中の山の中で出会った青年の霊がようやく結ばれ、安心した涙だったと思った。僕の金縛りが解け、バスルームを後にした。


僕「山田君。今、バスルームで不思議なことがありましたよ。」と僕は先ほど起こった現象を山田に話をした。


山田「そうなんですね。でも、酒井さん、いいことをされ人助けをされたので、また徳を積まれましたね。」


僕「人助けというか、霊助けというか、まぁ、何にせよお役に立てたことには間違いないので、とりあえず、よかったってことで。」


山田「今日こそは、クタビーチでゆっくりと夕日を眺めませんか。」


僕「OK。今日はゆっくり時間がとれそうですからね。」


この時、僕の時計は17時00分を指していた。


僕「山田君。丁度、夕日を観に行くにはいい時間帯ですよ。準備ができたらクタビーチまで散歩しに行きましょうか。」


山田「やった。待っていました。俺、準備OKですよ。」


僕「僕も準備OKなんで、それじゃ、出かけましょう。」といい、僕と山田は部屋を出てフロントへルームキーを預けた。



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