第12話 Reggaber(レゲーバー)
僕は山田に誘われ、その店へと足を踏み入れた。流れている音楽はバリ島の雰囲気に合うレゲーの曲が流れていた。僕と山田はボーイへ案内され、スタンディングテーブルへナビゲートされた。こういった店では、ほとんどがスタンディングスタイルの店が多い。そちらの方が店にとっても回転率もいいからだろう。定員へ席に案内された僕と山田は、まずはドリンクのオーダーをした。
ボーイ「いらっしゃいませ。ご注文はおきまりですか。ドリンクは何になさいますか。」
山田「メニューをみますね。俺、ビール飲んじゃってもいいですか。酒井さん。インドネシアのビールってあるんですか。」
僕「OKですよ。インドネシアで有名なビールといえばビンタンビールですね。酔っぱらったら僕がホテルまで連れて帰りますから、大丈夫ですよ。山田君がビールって珍しいですね。」
山田「ありがとうございます。そこまでは飲みませんから、安心してください。なんだかこの雰囲気の中にいると、アルコールが飲みたくなっちゃいました。バリ島の南国の雰囲気がそうさせちゃうんでしょうかね。」
僕「そうかもね。山田君、インドネシアのビンタンビールが飲みやすいよ。ボーイさん、ビンタンビール2つお願いします。サテアヤムも10本お願いしますね。」
ボーイ「かしこまりました。オーダーをリピートしますね。ビンタンビール 2つ。サテアヤム10本ですね。サテカンビンはいかがですか?元気がでてきますよ。」
僕「サテカンビンはいらないです。サテアヤムだけで大丈夫ですよ。」
山田「カンビンってなんですか?」
僕「カンビンってインドネシア語でヤギなんだよね。ヤギの肉の櫛さしですよ。」
山田「ヤギの肉なんてなんだか、癖がありそうですね。」
僕「そうですね。肉が硬いという印象を受けますね。それとヤギの肉は精力剤ともいわれるので、この時間に食べちゃうと、夜が大変になっちゃいますよ。」
山田「マジですか。笑えますね。そうなんですね。まるで日本でいうところの赤まむしドリンクみたいですね。俺はそれでも大丈夫ですけどね。」
山田は南国の気候に解放されたのか、羽目を外しそうになっていた。確かにこの南国の解放感ならそれも仕方ないかもと僕は思った。
僕「それにインドネシアには、昔ながらの土着のインドネシア版漢方といわれているジャムーというものをワルンで売っていますよ。ちなみにワルンというのは、インドネシア版露店・屋台といったところでしょうかね。」
山田「そうなんですね。ジャムーですか。なんだか怪しいですね。」
僕「その通りなんだよね。僕は飲んだことがないけど、なんだか怪しい薬とかが入っていそうなんだよね。僕がバリ島へ初めて訪れたときには、マジックマッシュルームというキノコが流行っていたね。そのキノコを食べると気分がハイになるんだとか言っていたよ。いわゆる今でいうところの脱法ハーブのようなものだったけどね。」
山田「そうなんですね。今でいうハーブのドラッグみたいな感じなんですかね。」
僕「たぶんそうだと思うよ。もちろん、僕は食べたことないけどね。そういうのってまったく興味ないんだよね。」
こんな少し前のバリ島の話をしながら、バーで僕と山田の二人は、ビンタンビールを味わった。もちろん、肴はサテアヤムだった。僕は、にぎやかな雰囲気を山田と一緒に楽しんでいると、そんな中ふとマルチンの声が聞こえてきたような気がした。
僕「山田君、今、何かいった?」
山田「いいえ、何も言っていませんよ。」
僕「僕の気のせいだね、たぶんね。」
山田「この世の声じゃない声が、聞こえてきたんじゃないんですか。」
僕「そうかもね。」
山田「ところで、このビンタンビールとサテアヤムの相性は、抜群ですね。すっごくうまいです。」
僕「このサテのココナッツソースが、いい具合に絡んでおいしいよね。」
僕と山田が立ち寄ったレゲーバーは、更に夜が更けるとともに盛り上がり続けていった。
山田「本当にバリ島っていいところですね。南の島の楽園って感じがして、俺、本当に気に入っちゃいました。」
僕「よかった。山田君がそんなに気に入ってくれて本当にうれしいです。今回、一緒に来れてよかったよね。」
僕は、本当に山田と一緒に今回バリ島へ来れた偶然に感謝した。明日の夜は、マルチンの弟と会えるといいのだが、どうなることやらって感じだ。明日の今頃、僕はなにを感じているんだろうか。友人の死を身近に感じ、僕は生きるってことがどんな意味があるのかとふと考えてします。もちろん、今はその答えは僕には見つかっていないけれども。
僕と山田は、盛り上がっているレゲーバーを後にした。改めてホテルに向かって歩き始めた。先ほど通った道をただ戻るだけなんだけれども。僕と山田が夜風に吹かれながら歩いていると、先程とは別のバロンで夜道を練り歩いている集団と出会った。
僕はその集団を見ていると、なんだか山田には見えていないように感じ取れた。僕がそのままその集団とふとすれ違う時に、確かにマルチンの声が聞こえた。何と言っていたかはそこまでは聞き取れなかったけれども。それと同時に山田が僕にこういった。
山田「先ほどなんだか生暖かい空気の塊を感じちゃいました。その瞬間、何かが俺の視界に入ってきたような気がしたんですよね。」
僕「そうなんですね。おそらく、バリ島にいるせいかもしれませんね。バリ島は不思議な空気を持っていますからね。バリ島の神様のいたずらかもしれませんね。」
僕たちは、また歩き始めた。間もなくすると滞在ホテルのアグン・コテージへ到着した。夜の風に吹かれながら、心地よい気分だった。夜の寄り道散歩をだった。
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