第216話 2020年三月前後?(17)

 何処からともなく声が聞こえてくるではないね。


 そう、只今SNSで流れていた動画を興味津々と覗き見ていた三人。と、いうよりも? おさん狐は、自身の夫である山田瞬の後方から控えめに凝視をしているようだから。山田瞬が持ち握るスマートフォンを大島のオジサンが覗き込むように見て動画を聴写しているようだから。おさん狐さまには、動画の画像が見えているのか、見えていないのか定かではない。


 だからSNSで流れている動画を聴写しているのは、大島のオジサンと山田瞬の二人となる。


 そんな二人に声をかけてきた青年……。




 そう、年頃も山田瞬と近い年齢の青年でね。やはり山田瞬や大島のオジサンのように岡山県は備前市、五味の市の店頭販売ブースで、自身のオリジナルの雑貨やコーヒー豆などを販売している。山田瞬や大島のオジサンいわく【コーヒーのお兄さん】と、呼んでいる彼。おさん狐さまは普通に『コーヒー屋さん』と、呼んでいる青年男性でね。身なりの方もコーヒーや雑貨を販売しているだけあって、同じ年齢の山田瞬よりは今風……。彼の髪型もそうなのだが、服装の方も洒落た物をいつもチョイスして着込んでいる青年でね。この未だ肌寒い。


 と、いうか?


 この五味の市周辺は瀬戸内海の海に囲まれた港町なので。いくら岡山県の中で南よりの町ではあるのだが。この三月前後の春先手前の次期であっても海から吹き付けてくる風は大変に強くて冷たいのだ。


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