第67話 2020年の初売り(4)

「ん? そうか~? 山田~? 儂の声は、そんなにも良く澄んで聞こえるのか~?」


「あああ~。聞こえるよ。おじさん~。僕の声を大にした叫びよりも。おじさんが出した声色の方が、重みがあるよ~」


「う~ん、そうか~?」


「あああ~。そうじゃけぇ~。だって~? この売り場から僕が、向こうの端を歩くお客さんへと。声を大にして叫び──。呼び込みしても、誰も振り向いてはくれないからね~。う~ん、でも~? おじさんがこの場から、声を大にして叫んだ──。お客さまへの呼び込みの場合は。建物の反対側の端を歩くお客さんでも振り返るから本当に凄いと思う~」


 まあ、こんな感じで、山田瞬の御老体が持つ声色の絶賛に対して彼は。自分の声音など若い山田瞬の声音と比べると劣ると申すのだが。山田瞬はそんなことはない。御老体の持つ声色……。化け物染みた声音に対して絶賛を贈るのだよ。

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