第63話 2020年の初仕事前の車内の会話……(12)

 彼が今の年齢迄おこなってきた。自身の異性に対しての悪しき想いを押さえて、『良い男性(ひと)を続けてきたのだ。


 自身の異性に対しての、悪しき想いと欲望心……。


 それと? テレビコマーシャルに出演する俳優男性への嫉妬心から、本物の妖狐──。おさん狐さまを黄泉の国から召喚したにも関わらず。


 彼女の手や腰……。髪こそ、何度も触れているのに。それ以降の行為は何も無い。『良い男性(ひと)』を続けながら。おさん狐さまの妖力の糧となる。男としての、異性への悪しき荒々しい性と欲望、嫉妬心だけ、自分の心の奥底にしまい込み、募らせて、狂いそうになる寸前でいたのだが。


 今の、おさん狐さまの自分への想いを聞き安堵……。自分の心の奥底に眠る邪念から解放──。


 彼の初夢がやっと叶い──成就されたのだ。


 自分にこの世の者とは思えないほど美しいお嫁さんが。彼の許へときてくれた。


 でッ、彼女の自分への愛おしいと思う想いと。自分が彼女のことを愛している想いを告げた山田瞬なのだが。彼はまた口を開いて。


「今日の初売りは、おさん、のために、僕はがんばるからね~」


 と、優しい声色で告げる。


「そうか~? わらわの婿殿~。今後はわらわの為にしっかり稼いでおくれ~」


 山田瞬の想いに応えるように、おさん狐さまも優しい声色で言葉を返すのだよ。


 でッ、その後二人は、未だ車を運転している最中にも関わらず。初めての接吻を優しく愛情を込めて交わしたのだよ。


 二人の正面から対向車が次から次へと走行してくるのに気にも留めないで。愛し合う二人は、接吻を続けながら車を走行させたのだ。



 ◇◇◇◇◇

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