第39話 たまには皆で映画鑑賞でも。
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何気ない日常の日々に、変化は訪れる
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私がもっとも嫌いな時期である夏が迫り来るこの頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?私事紅雹夜(Vtuber名義)はこの数ヶ月でいろいろな体験を経験し、心身ともにすこーし疲れている状態でありますです。自分が決めた事なので文句は全く無いが、身体はそうはいかない。「そろそろ俺を休ませろ!」と怒声を上げそうなので休むことにした。ゲーム配信を。
誰も配信を休むとは言ってないので大丈夫じゃろ。とは言えゲームするほどの気力が残っていないので、今日は別の配信をする。それが映画鑑賞。勿論映画を流すのではなく、各自でDVDや有料動画サイトなどで映画を見ながら配信を聞いてもらう感じである。ちなみに私は某無料動画サイトで放送されるのでそれを見る予定であり、一応権利のある会社にお電話して実況配信していいか聞いてみた。個人の配信だからどうなんだろうなぁと思ったけど、快く許可を頂けた。めちゃくちゃ優しくて好き。あと今回の配信は念の為に収益化はOFFにしておいた。一緒に映画が見たいだけだからね。貰うのはなんか違う気がする。
とりあえず今日の配信に向けて飲み物とお菓子を買いに行こうと思います。ついでに両親の給料日で二人共お休みなので一緒に買い物に行くことにしましたぜ。ここ何年かは兄の運転する車に乗ることが多かったから、久々に父の運転する車に乗ったなぁ。なんというか、安心する。兄の運転が荒いわけじゃない。居心地が悪いわけでもない。ただ、なんというか、子供の頃見た父の背中の頼もしさって言うのかな。でかくて、強くて、優しくて、頼もしくて。そんな父の背中を、久々にしっかりと見た気がする。懐かしくて、なんだか寂しい気持ちもあった。歳を取ったんだなぁ。
そんな昔の事を思い出しながら、車は大きなショッピングセンターにたどり着いた。車から外に出ると、致命的な暑さではないとはいえ、ぼーっと立っていたら額に汗が出るくらいには暑かった。まぁあれです、要するに暑い。なのでさっさとお店の中に入ることにした。平日だから人は少ないだろうと思ったけど、全然そんな事はなかったよ。よく考えりゃ給料日なんだから、そりゃこんな昼前でも混んでるよね。しっかし、久々にこの時間にこういう場所に来たけど、魅力的な物が多くて困りますなぁ……スイカとかアイスとか。あと飲み物ね、暑いからどんどん飲んじゃう。
なるべく余計な物は買わないようにしよう。荷物が増えるのは困るし。今日は飲み物とお菓子だけ買うぞー。絶対に他の物は買わないぞー。絶対だぞ!……と思いながら、一階の食品売り場で買い物する両親と別れ、私は二階の本屋に向かう。違うぞ、本を買うんじゃない。既にお菓子と飲み物はカゴに入れてあり、両親の買い物が終わるまで時間があるから暇つぶしに来ただけだぞ。見るだけだもんね。それに今欲しい本なんて無いしなぁ。あったら買ってそうだけど。……うん?
……ほほぅ、これが噂のホットサンドメーカーですか。よくおすすめ動画に出てくるアレですな。パンだけじゃなく肉も普通に焼けるという。ちょっとだけ興味あったけど、へぇー……こういう風になってるのか。あっ……この閉まる時の「カチッ」って音いいなぁ。……おぉ?これ、外れるのか。凄いなぁ、これなら2つに分けて同時に調理したり出来るね。面白いなぁ。あと意外とコンパクトで軽いのもなかなか素晴らしい。うーん、イイモノだなぁ。
「――どうですか?こちら、結構人気商品なんですよ?」
「……うぇ?あぁ、はい。そうみたいですねー。動画とかでよく紹介されてますよね」
のんびり見ていたら可愛い店員さんに声を掛けられちゃった。
いかんなぁ、この流れはいかんですぞ。
「そうなんですよ♪キャンプにもよく使われてまして。勿論、お家でも十分使えますよ!」
「キャンプには行かないですけど、家で使えるのはいいですよねぇ。
フライパン代わりになりますし」
「そうなんです!よければお一つ、いかがですか?」
「んー、そうですねぇ……」
「どうでしょうか……?」
あぁいかん。やめてください。
そんな目をされたら買いたく……なることはないけど、断ったら後味が悪いよねぇ。それも見通しての行動だとしたらなかなかの策士ですな。うーむ……悩ましい。ぶっちゃけ店員さんが可哀想かどうかはいいんだけど、問題はちゃんと使うかなんだよね。買って満足なんて事は大いに有り得るし、ほとんど親にご飯任せてるからなぁ。……んや、この機会にこれを買ってたまに料理するのもアリかな?
料理するために具材買いに外出る機会も……ふむ、意外と悪くないかもしれない。値段も安いほうだし、まぁ、いいか。買ったら両親も喜んで使いそうだし。
「えーと、そうですね、んじゃ一つ貰います」
「ありがとうございます♪」
買っちった。結局買っちゃったね。
こういう所が弱いんだよなぁ。まぁいいか。使い道はあるわけだし。
とりあえずコイツを大事に抱えながら目的の本屋に来たわけですが……いやぁ、いかんね。なんか知らない内にいろいろ面白そうな本出てる。いや、数ヶ月も外出てなけりゃそうなんだけどさ。
それにしても面白そうな本が沢山……いかんいかん。また余計な買い物する所だったなぁ。見るだけ見て親の所に戻ろうーっと。……ふむふむ、今は転生モノが多いんだなぁ。あ、これアニメでやってたやつだ。へぇー、結構巻数出てるんだなぁ。……さて、そろそろいい時間だし、親の所に帰りますかぁ。……おや?
【毎日の献立を楽しく簡単に♪】
そういえば、母さんが新しいレシピ本欲しいって言ってたなぁ。
確かこれ家に無かったはずだし、買っておこうかな。
……そうだ、父さんと兄さんも欲しい本あるって言ってたような……えーと……
「ただいまー。おっ、沢山買ってますなぁ」
カゴ一杯に食材を買ってる両親の所まで戻った私は買ってきた本を2人に見せた。なかなか喜んでくれてて、買ってきた私も嬉しい気持ちになる。料理本も買ってなかった奴だったみたいでよかった。ダブったら勿体ないしね。あとホットサンドメーカーも見せたら母さんがめっちゃ喜んでた。どうやら母さんも欲しかったらしい。よかった、これで無駄にならないで済むね。そんなこんなで必要な物を買い揃えた両親がそろそろレジに向かおうとした時だった。
「え?他に欲しい物ないのかって?
うーん、必要な物は買ったけどなぁ」
両親や兄が欲しがってた本は買ったし、急とはいえ、
興味はあったホットサンドメーカーも買えた。
多分親が使うだろうけど。
今日のための飲み物とお菓子は買ったから後は何も無いんだけどなぁ。
そう両親に伝えると、もっと個人的に欲しい物は無いのか聞かれた。
服とか、本とか、ゲームとか。何かないのかと。
しばらく考えて、それから私は両親に言った。
「んー……無いかな。あっても我慢すればいいしね」
そう答えた私に対して、何故か両親は悲しそうな目をしていた気がする。うーむ、いつも通りに答えたはずなんだけどなぁ。
「ただいまー。そしておかえりー」
家に帰ってきた私は自分と両親に向けてそう言って、荷物をリビングへと運んだ。それからうがいと手洗いをして、部屋に戻り時間までのんびりしようか考えた時だった。母さんが調味料の買い忘れがあったらしく、慌ただしく再び出かけようとしていた。まだ時間もあることだし、せっかくなので私が代わりに買いに行くことを伝えた。
すんごい驚かれたけど、悩みに悩んでお願いされた。
なんじゃい、そこまで信用できないのかい。
ついでに他の物も頼まれ、お金とメモ用紙を渡された。
多めに渡されたお金は、余るから好きに使っていいと言われた。
そこまでしなくていいのにと思いつつ、とりあえず受け取って家を出る。
夕日がいい感じに昇っていて、日中の暑かった風が徐々に涼しさへと変わっていた。夏だし、まだ明るいからか、夕方になっても子供達が楽しそうに公園で遊んでいた。私も昔はあんなんだったなぁと思いつつ、近場の小さなスーパーへとたどり着いた。
必要な物を揃えて、一応スマホの電卓で計算し、確かにお釣りが多めに残ることを確認した。わかりやすく言えばお高い方のロング缶のお酒が二本買えるレベル。 安い方のお酒で小さめならもう数百円足す事で六本入りが買えるくらいの。まぁ、要するにワンコインちょっとが残ってるわけで。さて、どうするか。このまま親に返すのもアリだし、何か買っていくのもアリなわけで。とは言え欲しい物ねぇ……んー……
「買って買って買って!!」
「もう!さっき違うお菓子買ってあげたでしょ!?」
「やだやだやだ!!これも欲しい!!」
「いい加減にしなさい!!もう……」
「やぁぁぁだぁぁぁぁぁ!!」
あー、どの季節もあることだけど、夏になると一番見かける気がする。
ママさんと子供の攻防戦の始まりですよ。地面に子供が寝転がったらもう勝ち確定だけど、最近はあまり見ないよね。大体は我慢させるか、ママさんが負けて買うかだけど、どうかなぁ……あらま。
はい、勝者わんぱく小僧。よかったな、今日は2つもお菓子を買ってもらえたぞー。今のうちに甘えるだけ甘えときなさいな。大人になれば思い出して恥ずかしくなるから。そうやって黒歴史というものが出来上がるわけですよ。いやぁ、よく出来てんなぁ。
私も昔はあんな――
【〇〇、欲しい物はないのか?】
【……うん。無いよ】
【……本当か?いいんだぞ、何かねだっても】
【大丈夫だよ】
【……そうか。じゃあ、帰るか】
【はい】
……んぁ、親と兄にビールでも買って帰るかな。ビールビールっと~。
「――ふぃー、いいお湯でしたっと」
お使いから帰ってきた私は両親に買ってきたビールを渡した。いつもお疲れ様と言って。父さんも母さんも複雑そうな顔をしていたけど、最後には喜んでくれた。やったぜ。その後すぐに兄も帰ってきて、本とビールを渡したら無言で頭を撫でてくれた。それからお風呂にゆっくり入って、アヒル隊長と遊んで、今に至るのである。
ちなみに今日の入浴剤はラベンダーの香りだぞ。トイレの匂い言わないでね。お風呂も入ったし、ご飯も食べたし、後は配信ですな。配信予定時間までまだ30分あるんだけど……んー、たまには早めに配信開始するのもいいか。よーし、皆には悪いけど、もう始めちゃうぞ―。
「皆さんこんばんは。雹夜です。
今日は映画鑑賞だけど、早めに配信開始しちゃった」
:こんばんはー。
:急に配信通知来てびっくりした!
:早めの配信いいぞ!いいぞ!!
:まだ家に着いてないです旦那ぁ!
:お?もう始まる?こんばんは。
:ばんわー。早いですねー。
:早めの配信嬉しい……嬉しい……
:まだ時間あると思って風呂入っちゃったよ……急いで上がろう
:こんな早い時間から珍しいですねー。こんばんは。
:雹夜ぁぁぁぁぁぁ!来たぞぉぉぉぉぉ!!
:雹夜貴様!!はやて丸と配信時間被せるとは……!!
:2窓余裕でした。
:逆に考えるんだ。両方見ちゃってもいいんだと
:雹くんこんばんは!!
「時間まで雑談でもしますか。いやー、今日も暑かったね。久々に外出たけど汗が大変だったよ。あ、ちなみに確認だけど今日見る予定の映画は――」
「――お?そろそろ始まる?
よーし、皆さん一緒に映画鑑賞始めますよー」
:来たか
:予習で昨日も見たけど面白かった
:1人で映画見るからこういうの初めてだなぁ
:キターーー名シーンしか無い映画
:そろそろコロニー落ちるか……?
:あれから数十年。そろそろ落ちそう
:あのシーンのコメントヤバそうだな
:この皆で見る雰囲気すこ
:先に乾杯しちまった
:やっぱ初代やなぁ
:映像綺麗だな
:これどっちが主人公?初見なんだけど
:天パが主人公やぞ
:どっちも主人公で間違いないけど天パだな
:うむ
「噛みました!噛んだんです!……普通に痛そうだね」
:俺も噛まれたい
:おまわりさんこの人です
:むしろ噛みたい
:この頃はまだ可愛げがあった
:ほほぅ、これが噂のアマガミですか
:違うぞ
:この女嫌いだわぁ
:子供だからなぁ
:あっちこっち引っ掻き回して最終的にアレだからなぁ。
:好き嫌いがわかれやすいキャラだな
:あ、CMだ
「チ○ーンがチャーミングすぎるからさ。だって」
:まっ
:草
:草
:草
:なんやこいつ
:ア○ロぉぉ……
:なにイチャイチャしてんだよ
:俺達は何を見せられてるんだ?
:何回見てもここのやり取り草生える
「ラ○ァしつこすぎない?」
:しつこいね
:だいたいコイツのせい
:ある意味呪いだよな
:早くママになっていればこんな事には……
:私はラ○ァにバブみを感じている……!
:何いってんだシ○ア……
:最低だなシャ○
:それどっかの声優さんが言ってた気がするぞ
:なんもかんも○ラァが悪い
「あんな女キライだ。僕はキミが嫌いだわ」
:せやな
:同意見
:雹さんは嫌い派かぁ。俺は好きだな
:好みが分かれるよねぇ
:チ○ーンは貰っていきますね
:じゃあ俺アスト○ージ
:じゃあおれケー○
:ここまで全員……
「あ、あ、ア○トナージぃぃぃぃぃぃ!!!」
:ウッソだろ……
:嘘みたいだろ?これがアイツ最後なんだぜ……
:あっけなさすぎる……
:ここまでずっと生き残ってたのに……
:これは……どっちが悪いんだ?
:何とも言えん
:注意不足だったチ○ーンかなぁ 警告無視したし
:これは多分チ○ーン
:悲しすぎる
「ハサウ○イなにしてんの?」
:やらかした
:うわぁ……
:ハサウ○イは糞
:はーつっかえ
:ここ賛否両論
:どう考えてもハサウ○イが悪い
:腹が立つわぁ
:何度見ても許せんな
:でもこれのおかげで……
「すまない、みんなの命をくれ。いや、かっこよすぎる」
:いいよ
:いいぞ
:くれてやるぞ
:わかった
:いいですぞ!
:いいぜ!!
:いいぞ!!かっこいいなぁ
:やっぱブラ○トさんよ
「いい子だ……。やっぱロリコ……」
:それ以上はいけない
:もうわかりきってるから……
:年下にママになってくれ言ってるやつだし
:幼女にバブみを感じるのはわかるけど、ラ○ァはなぁ……
:シ○アにも癒しが必要なんや……
:イケメンだから許される行為やなぁ
「ふざけるな!たかが石ころ1つガ○ダムで押し出してやる! これ言ってみたい」
:わかる
:わかるけど言う機会がなさすぎる
:まず機体用意しないと
:雹夜さんはガン○ムというよりニルバー○ュニルバーシュじゃない?
:気ままに動き回ってそう
:武器は睡眠効果だな
:マップ兵器レベルだからな
:もうゼオラ○マーでええやん
:チリ一つ残らなそう
「やってみる価値ありまっせ!いや君達さ……」
:ま、まぁ乗せられただけだし
:やっぱ滅ぶのが惜しいんだよ きっとそうだよ
:考え直しただけなんや……
:一枚岩では無かったんやな
:兵士もカッコいいなぁ
:言いたいことはわかる でも雰囲気や
:なんだかんだこういう展開好き
「終わったー。いやぁ、何度見ても面白いね」
:名作だったな
:お疲れ様です。いやぁ、面白かった
:っぱ逆シ○アよ
:ツッコミどころ多いけどやっぱ名作だよな
:何度見ても面白い昨日だわ
:内容覚えてるのに毎回新鮮な気持ちだわ
:おつかれー!一緒に見れてよかった!!
:面白かった!!
「素晴らしい作品だったね。またこういう機会があれば映画鑑賞しましょうか。んじゃ、今日はこれで終わりますね。お疲れ様でした」
:またやってほしいわ お疲れ様!
:次回はポケ戦で!おつ!!
:いい企画でした!!お疲れ様です!
:おつー!また一緒にみたいです!
:皆で映画鑑賞も全然アリだな。おつかれ!
:おつおつ!ゆっくり休んでてくださいー!
:面白かった!お疲れ様です!
いやぁ、楽しかった。やっぱ何度見ても面白い。
たまに流し見で見ようとするけど、結局途中から全部見ちゃうんだよなぁ。ほんといい作品だ。さてと、SNSで今日の配信の事呟いて、寝るかなぁ。……お?サキさんからDMだ。
【雹くん、Vtuber祭って知ってる?】
【お疲れ様です。ちょっと知らないですねぇ】
【Vtuberのためのイベントみたいなものなんだけどね?
大きなイベントなんだけど、今回私も出演することになったわ】
【そうなんですか?おめでとうございますー!】
【ふふ、ありがとう。それでね?雹くんもイベントに来てみない?】
【それってどこでやるんです?】
【東京ね】
【東京ですか……ふむ】
【どうかしら?】
【んー……多分行けないですね。いろいろとあるので】
【そっか……残念だけど、わかったわ】
【すみません】
【いいのよ。ただ、応援してくれたら嬉しいわ】
【念じておきますね。がんばれぇぇぇって】
【ふふ、ありがとう。お願いするわ】
東京ねぇ。まぁ、行く機会はないだろうな。
【――お待たせしました!Vtuber祭、開催です♪】
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