第14話 邪魔者なしでの街案内 

「んで、2人はここで何をしてるんだ?」


 翔太は素直すぎる質問を目の前の女子に向かって同時に放つ。返事に苦慮する真宙と違ってぷりんは素直だ。質問を聞いたと同時にその口が動く。


「私、この世界初めてだから案内してもらってたの」

「ちょ」


 いきなりのカミングアウトに真宙は動揺する。けれど、そこはぷりんの能力が発動しているおかげで、翔太もその言葉をツルンと飲み込んだ。


「そっか、ならしょうがねーな。俺も一緒に案内してやるよ」

「本当? やった!」

「ちょっと待ったァ!」


 彼の誘いにぷりんが喜んでいるところで真宙が大声を張り上げる。この突然の物言いに翔太は口をとがらせた。


「何だよ。俺がいたらわりーのかよ」

「と、トーゼンよ。これは女子だけの秘密の冒険なんだから!」

「冒険? 街の案内だろ? 俺だって案内くらい……」


 彼は自分の行為を否定されたのもあって、必死に食い下がる。話が長引くとややこしくなると感じた真宙は、強引にぷりんの手をとって歩き始めた。


「行くよ!」

「ちょ、待てって」

「待たない。それより、秘密は守ってよね!」

「何だよ。訳分かんねえ」


 結局、ふてくされる翔太を置き去りにして真宙とぷりんは公園を後にする。強引に引っ張られる形になったものの、ぷりんは特に文句を言わず真宙の好きにさせていた。


 それからは近所のお店や各種施設の説明、知りうる限りの地元の名所などを2人で周る。徒歩で歩き回れる範囲の案内はたかが知れていて、ぐるっと周囲を一周した後にまた公園に戻ってきていた。

 当然、再度戻った公園にはもう翔太はいない。面倒臭い男子がいないのを確認して、真宙はほっと胸をなでおろしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る