第15話 無茶振りしないでくれませんか!?
金色に染まる講堂の席。前と後ろの席にそれぞれ見目の整った少年達を配し、まるで侍らせているような緑の髪の少女。
絶妙に顔が窓の反射光で不鮮明なその写真が一面を飾る
「やっぱり、この色、合う、よね」
「な。写真映りバッチリじゃん。流石サラ」
「ふふ」
違うだろ。そんなツッコミを入れる人物が不在なのは幸か不幸か。
「しっかし、俺ら二人を誘惑して手玉にねぇ……」
「オレの、
「だな。ま、話題性の為に何とか考えてって部分が大きいだろうけど、サラの化粧の腕があってこそだろ」
学園報の中で、貴族の令息と黒陽を侍らせ誘惑する魔性の少女といった実際とは激しく
「ひま、なんだね」
「暇だよな。まあ、わからなくもねーけど」
ゴシップ紙に元から近いが、こんなのが一面なのだから相当暇なのだろう。平和とも言えるが、そもそも学園限定でのものだから通常のものとは規模から質から違う。
「…………うーん」
「どうした? サラ」
「リップ、もっと色濃い方が良いかなぁ……」
「あー。いや、良いんじゃね? つーか、ミウこれ見てねーだろーな」
「多分」
そして見たら絶叫するだろう。
「シェルディナード先輩ぃぃぃぃぃー!」
こんな風に。
「よ。ミウ。どうした?」
「どうした? じゃないですよっ!!」
シェルディナードとサラがダベる講堂に駆け込んできたミウはそう叫んだ。
◆ ◆ ◆ ◇ ◆ ◆ ◆
「説明して下さい。誤解といて下さい!」
「連れてきたのか……」
講堂からシェルディナードを引っ張って温室までやって来たミウは、テーブルに着きつつお茶を飲んでいたケル達の前にシェルディナードを押し出した。
「ちょっ、だから急に出て来ないでって……」
約一名、押し出されたシェルディナード達を見て気持ち悪そうに
「あー、わり。サラ、とりあえずコレ被っとけ」
「うん……」
「…………おい」
片目の辺りだけ覆う仮面を着けたケルの口許がヒクッと引きつる。
「あら。どこかの銀行を襲いそうですね」
のほほんとエイミーが笑う。
シェルディナードとサラは黒い目出し帽を被り、ミウはそれどころではない様子でシェルディナードの袖を引っ張る。
「早く! 早く誤解といて下さいぃぃぃぃぃ!」
「いや、そう言ってもなー」
ニヤニヤとミウを見ながら腕を組み、首を傾げるシェルディナード(黒目出し帽)。
「ちょ、ヤバ……別の意味でヤバ」
先ほどは気持ち悪さから口許を押さえていたアルデラが、今度は笑い出すのを堪えて肩をぷるぷると震わせる。
「ここにいる奴ら、別に本当のミウ知ってるじゃん」
「そ、そうですけど……うぅ、どうしてあんな噂」
「これじゃね?」
ぴらっと先ほどまで講堂で見ていた学園報をシェルディナードが見せる。
「
ミウの絶叫が止まらない。
マンドラゴラも真っ青だ。
「ハハ。ミウって肺活量すげーよな」
「逃げ足、も、速いし」
頷き合うシェルディナード達を
「これ、どう見ても昨日のじゃないですか!」
「な。良く撮れてる。絶妙に顔映らねーようにしてるし、腕良いぜ。撮った奴」
スカウトしようか。なんて楽しそうなシェルディナードの胸元を、ミウが無言と涙目でポカポカ叩く。
そんな二人とついでにサラをケル達は見て、誰ともなしに顔を見合わせる。
「……シェルディナードを引っ張って来られるのは、彼女くらいではないか?」
「うふふ。
「ミウって時々すごい肝すわってるよね。叩いてるよ?」
知らぬは本人ばかりなり。
「ところでシェルディナード。元々こちらに来る予定だったから私をここに呼び出したのだろう? 用件は何だ」
ケルが気を取り直してそう問うと、シェルディナードが頷く。
「そうそう。ケル、今度の中間レクリエーション誰にした?」
「それなら、ここにいるエイミーだ」
「中間レクリエーション?」
――――なんだっけ?
キョトンとするミウを見て、アルデラが呆れたようにため息をつく。
「ミウ、すっかり忘れてるでしょ」
「あ、う」
「前期の中間レクリエーションは、学年無差別ハントよ」
「ちょっと待って。何、その明らかに
それ本当に学校行事!? そんなミウの悲鳴など気にすることもなく、シェルディナードが更なる爆弾を投下する。
「期末夜会の欠席条件、ミウがハンター全回避な。あ、ついでに言うと、俺とサラもミウをターゲットに申請しといたから」
「無茶振りしないでくれませんか!?」
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