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 その日。


 仕事の合間に、歩いていた街角で。

 それを。

 見つけた。


 ベンチに座った、血だらけの男性。


 彼だった。


 見つけたくなかったという思いと、やっと見つけたという思いが、交錯する。

 涙をこらえて。

 彼の隣に座った。


 彼。動かない。


「よく、がんばったね」


 声をかける。それしか、できなかった。いずれ見つかって、救急車で運ばれるのだろうか。


「えらいね。よくがんばりました」


 そう言うことしか、できない。


「ありがとう。わたしを生かしてくれて」


 涙。抑えられなくなった。


「なんでわたしを遺して死んだのよ。こんな。こんな気持ちに。なるのなら」


 死んだほうがましだった。その言葉だけは、唇を噛んで言わずに耐えた。


 彼は。望み通り、死んだ。

 だから、わたしは。


 彼の望む通りに、生きよう。


 動かない彼に。お別れのキスをした。


「ありがとう。ごちそうさま」


 美味しかったよ。


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