08 ENDmarker 2.
その日。
仕事の合間に、歩いていた街角で。
それを。
見つけた。
ベンチに座った、血だらけの男性。
彼だった。
見つけたくなかったという思いと、やっと見つけたという思いが、交錯する。
涙をこらえて。
彼の隣に座った。
彼。動かない。
「よく、がんばったね」
声をかける。それしか、できなかった。いずれ見つかって、救急車で運ばれるのだろうか。
「えらいね。よくがんばりました」
そう言うことしか、できない。
「ありがとう。わたしを生かしてくれて」
涙。抑えられなくなった。
「なんでわたしを遺して死んだのよ。こんな。こんな気持ちに。なるのなら」
死んだほうがましだった。その言葉だけは、唇を噛んで言わずに耐えた。
彼は。望み通り、死んだ。
だから、わたしは。
彼の望む通りに、生きよう。
動かない彼に。お別れのキスをした。
「ありがとう。ごちそうさま」
美味しかったよ。
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