泣き虫魔法少年アーサーと白猫ノーラの奇妙で憂鬱な冒険

ヨシオカセイジュ

主な登場人物

●吉岡・アーサー=太郎

 この物語の主人公。イギリスの名門貴族ウォルズリー家のひとり娘アン・ウォルズリーを母に、日本人建築家・吉岡聖隆を父に持つ10歳の少年。泣き虫だが正義感は強い。その潜在する魔法力は、英国至上最も偉大な魔法使いの一人と言われた初代ウォルズリー家当主に匹敵するとも言われているが、未だその魔力は覚醒していない。いつも飼い猫のノーラにビンタされている。

 日本では太郎、イギリスではアーサーと呼ばれている。


●白猫ノーラ

 吉岡家で買われている白猫。その正体はおよそ七百年前に東欧に存在した“はじまりの魔女”のひとり、ノルディア・ブラウン。初代ウォルズリー家の当主に命を助けられ、当主との契約により何度も生まれ変わってはウォルズリー家の一族の守護を務めている。攻撃魔法から回復魔法まで、様々な魔法を使いこなす高い魔力を持ち、人間はもちろんあらゆる生物に姿を変える変身能力を持つ。

 魔女であった当時は美しい金髪の美女。服装はいつも生成りのドレス。アーサーの教育係&ボディガード。


●ニナ・ヒルデガルト

 通称“黒い森の魔女”と呼ばれ約三百年前にドイツに存在した当時のヨーロッパ最強の魔法使い。人間との共存を望む温厚な性格でドイツ南部の黒い森ーシュヴァルツヴァルトと呼ばれる地域で平和に暮らしていたが、自分の村と近隣の人間たちを守るために自ら魔女裁判を受け、処刑される。しかし処刑寸前に助けたはずの人間の裏切りにより家族と村の仲間を虐殺された事を知り、人間への復讐を誓う。死後、呪いを避けるためその遺灰は厳重に封印されてきたがヒトラーにより復活、人類への復讐を始める。ナチ党を操りドイツの支配を目論み、続いてイギリス侵攻を狙う。現在はルーパスの愛人に扮して彼の屋敷で暮らしている。ナチュラルなカールの長く美しい黒髪、いつも胸元の大きくあいた黒いドレス姿。大鴉(からす)を使い魔としている。


●ハワード・ウォルズリー

 ウォルズリー家の現当主。六十歳。長身。髪はもともとは美しいブロンドであったが、加齢のためほぼシルバーとなっておりオールバックに撫で付けている。歴代当主の中でも指折りの魔力と明晰な頭脳、鋼の意思を持つ。娘であるアンと孫にあたるアーサーに深い愛情を持つ。弟のルーパスの反逆により妻メアリーと二人の弟を失う。過去の出来事から未来までを見透す能力を持ち、迫りくる第二次世界大戦とナチス・ドイツによる世界の破滅を防ぐために、潜在的に強大な魔力を持つアーサーを次期当主に指名する。


●ルーパス・ウォルズリー

 ハワードの弟。五十三歳。一族の中では最も長身。ウォルズリー家の先代当主が愛人に産ませた子供でウォルズリー家の家系で唯一の黒髪。他の兄弟と違い、元々は魔力を持たない繊細で優しい性格だったが、家族や親族から疎まれて育った事で心に暗闇を抱えている。成人してからも一族から遠ざけられ、次期当主候補からも外されている。中年を過ぎても放蕩息子のような堕落した生活を送っていたが、ある事件がきっかけで魔女ニナと出会う事により、強い魔力を得て、攻撃的な性格となる。長年に渡り自分を虐げてきた兄弟や一族への復讐と次期当主の座を狙っている。


●ジャック・レスター

「執事の中の執事」「ザ・パーフェクト」と呼ばれるほど優秀なウォルズリー家の執事。五十五歳。いつも真面目で沈着冷静。執事としての仕事の傍ら、独学で経済学を学び投資や経営のセンスにも長けている。単なる執事というよりはハワードの右腕的存在。若い頃は売り出し中のギャング組織の若きボスとして名を馳せていたが、仲間の裏切りによる抗争で命を狙われていたところをハワードに助けられ、彼の屋敷で執事として真っ当な第二の人生をスタートさせる。ギャング時代の渾名は、二丁拳銃の名手であることから「トゥーハンド・ジャック」。投げナイフの名手でもある。


●ヘンリー・マクレガー(ヘンリー・レスター)

 ウォルズリー家にアーサーの家庭教師としてやってきた青年。二十五歳。長身に金髪の優男で、どんな時もユーモアを忘れない好青年だが、その正体はイギリス政府の諜報部MI6の腕利きスパイ。スラムの孤児院育ちでストリートギャング上がり。射撃と車の運転はプロ級。実は執事であるレスターの養子。


●メリッサ・ウィルソン

 ウォルズリー家に長年に渡って勤めている老メイド。六十三歳。見習いの頃からルーパスの世話役として仕え、彼の愛人であった時期もある。現在ではルーパスの屋敷のメイド頭として働いている。現在でもルーパスの事を密かに愛しており、ニナに対して強い不信感を抱いているが、そこをつけ込まれニナの眷属(けんぞく)となる。


●吉岡アン

 太郎の母。三十歳。名門貴族ウォルズリー家の一人娘であり、日本人の吉岡との結婚を反対された事から駆け落ち同然にイギリスを脱出して日本に移住。現在は広島の瀬戸内海に面した尾道で暮らしている。太郎と華子の一男一女に恵まれる。ウォルズリー家の家系の特徴である高い魔力をもち、様々な魔法が使える。


● 吉岡聖隆

 太郎の父。三十四歳。宮大工の家系に生まれ、建築の勉強のため英国留学中にアンと出会い交際を始めるが、アンの親族の猛烈な反対にあい、駆け落ちして日本へ帰国。生まれ故郷で建築事務所を営んでいる。現在長期療養中。


●吉岡・ジョディ=華子

 太郎の七つ違いの妹。現在三歳。

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