パジャマと灯油

 俺は健康のためにランニングをしている。寒くなって来ると、不精になりがちなので、その日は15時半くらいから走り始めた。

 ランニングを終えて、家へ戻ってくると、玄関の前に空のポリタンクが置いてあった。灯油を買うためだろう。以前は、父がガソリンスタンドまで買いに行っていたのだが、最近では、灯油巡回販売サービスを利用しているようだ。

 冬場であるにも汗をかくほど走ったので、俺は早めにお風呂に入った。


 風呂を出てから、しばらくすると、母にこんなことを頼まれた。

「ちょっと悪いんだけど、灯油運んでくれない?」

「俺、もうパジャマなんですけど」

「重たくって、もう運べねえ」

 どうやら、俺が風呂に入っている間に、灯油屋さんが来ていたらしい。なんと間の悪いこと。

 嫌々ながらも、俺は玄関の外へと出た。

 しかし、そこにポリタンクはなかった。家の脇も覗いてみたが、やはりない。

「どこ?」

 母に尋ねると、途中まで運んであるということだった。

 俺はもう一度外に出て、ポリタンクを探す。空はもう、うっすらと暗くなり始めていた。

 灯油の保管場所は、家の裏の物置の中だ。物置までの距離は十メートル。冬場にパジャマ一丁で歩いて行くには、ちょっと長い。

 結局、ポリタンクは物置の手前一メートルの地点に、ぽつんと置いてあった。


「いや、もう、ここまで運べたんだから、最後まで運べねえ?」

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