第15話
まだ小さい私に母親が悲しそうな笑みを浮かべながら話している。
「ママ、泣いちゃダメだよ?私が居るから。
」
「ありがとう。杏子は良い子ね。
杏子は、好きな人を悲しませる事しちゃダメよ。」
「・・・・もう遅いよ。」
ボソッと呟いたのは、夢の中の私?
それとも・・・・
目が覚めると、まだ空は明るくなり始めていた所だった。
「また夢か・・・。」
もう数年経ったというのに数ヶ月に1度同じような夢を最近見ている。
きっとそれは私がずっと背負わなければいけない罰。消えない罪。
「もう、なにもないのにね。」
そう呟いても、誰も答えてくれるはずはないのに。
退院後、私は豪君と別れを切り出した。
「・・・・そうか。そりゃそうだよな。こやっぱり、そう簡単にはやり直せないよな。」
豪君は自分を納得させるように頷いた。
私は床に膝を付き、頭を擦り付けた。
「本当に、本当にごめんなさい・・・。」
「杏子・・・・。」
「ママ?」
後ろから声がし、振り向くと沙莉が心配そうに見つめていた。
「沙莉・・・。」
「ママ、なんで泣いてるの?」
「・・・・ごめんね、沙莉。ママ、沙莉ともう一緒に暮らせないの。」
「なんで?やだ、やだよ!沙莉ママとパパと一緒がいい!」
「沙莉の大好きなママでいられなくてごめんね。本当に、ごめんね・・・。」
泣きじゃくる沙莉を私は抱きしめる事しか出来なかった。
「沙莉はママみたいになっちゃダメよ。パパみたいに優しくて、素敵な人になるの。」
「ママ・・・・」
涙をポロポロと流す沙莉を豪君が抱き上げた。
「ごめんな、沙莉。」
「パパ・・・・」
2人が昔の私と母親に重なる。
父親はこの姿を見てどう思ったのだろう。
私と同じように、犯してしまった誤ちを今更後悔していたのだろうか。
あれから全く連絡を取らず、ただ僅かな金銭を豪君の口座に振り込んでどのくらいだっただろう。
豪君はお金なんて要らないと最後まで渋っていたけれど、それを受け入れたら私は本当に生きている価値も何も無くなってしまうような気がした。
好考はどうしただろう。
病院で会ったきり連絡もとっていない。
今更この先の関係を続ける精神も無かった。
「私は所詮誰の自信にもなる資格はなかった。」
ぼそっと呟くと、急にインターホンが鳴った。
こんな平日の朝早くに誰だろうか。
「どちら様ですか・・・」
特に確認することも無くドアを開けると制服を着た女の子が立っていた。
「・・・・ママ。」
「沙莉・・・なの?」
そこには間違いのない、制服を着た沙莉が私を見つめていた。
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