第28話「作戦会議~心をひとつに~」
※ ※ ※
「……というわけで。みなに集まってもらったところで緊急会議を行うぞ」
集まった場所はルートリア城ではなく、ヌーラント城だ。
最初はルートリア城に集まったのだが、リオナさんの献策でより魔怪獣から離れているヌーラント城に変更になった。
はたして魔怪獣はルートリア城でなくヌーラント城へ進撃方向を変えた。
本能的に俺の位置がわかるらしい。
合併をしていなかったら、こうして城を移動することもできなかったので、それだけでも合併の効果はあったというものだ。
応用しようと思えば、俺があっちいったりこっちにいったりして攪乱すればいくらでも時間を稼げるのかもしれないが、村がいくつもあるのでいつか必ず被害を受けるエリアが出てくるだろう。
やはり早く倒すことが、国のため民のためだ。
現状、畑や牧草地なども容赦なく踏み荒らされてるし。
まずは、リオナさんが口を開いた。
「歴史書を調べてわかりましたが、あれは伝説の魔怪獣です。太古の昔に勇者によって封印されたようですが、どうやらミチトさまの魔力に惹かれて目覚めたようです。あれほど強力な魔怪獣となると、総力を結集して戦うしかないと思います」
俺の魅力は太古の封印すら解いてしまったのか……。どれだけ子孫を残したいんだ。いや、だから人間と魔怪獣で交尾は不可能だと思うんだが……。
続いて、ルリアが話を継ぐ。
「王国随一の剣の腕を持つわたしをもってしても、遺憾ながらあの魔怪獣にほとんどダメージを与えることはできなかった……。しかも、相手の攻撃は思いのほか速い。一般兵を投入しても無駄死にするだけだろう」
実際に魔怪獣と交戦したものの意見は重かった。
「う、うんっ、わたしの魔法でもそんなにダメージ与えられてなかったし普通の魔法使いだと危険かもっ……」
香苗からも同調する意見が出る。
やはりここは、ルリア、香苗、ミーヤ――そして、俺でなんとかするしかないだろう。そう思う俺だが、そこでルルが意見を出した。
「でも、あたしの創設した騎馬部隊なら役に立つと思うわ! あたしがバシバシ鍛えたから馬に乗りながら矢を撃てるのよ! 小回りが効くから回避もできるし! それにルートリアの魔法鍛冶技術で作った魔法矢を使わせてもらえば飛距離と攻撃力も大幅にアップするわ!」
その意見に、リリもうなずく。
「……うむ、つい先日開発可能になった魔法矢はなかなかの威力なのじゃ。騎射と組み合わせれば効果的なヒットアンドアウェイもできるかもしれないのじゃ」
両国が合併したことで、軍事面でも相乗効果が出ていた。
魔工業という下地があればこそ、最先端の魔法軍事兵器も開発できるのだ。
「それなら騎馬隊を使うのもありか。メインは俺と香苗とルリアとミーヤで、それを援護するような感じで」
ずっと四人だけで戦うよりはいいだろう。
「むうっ、ミチトも戦うのかっ! それはダメなのじゃ!」
「そうよ、お兄ちゃんは城で映像を見ているべきだわ!」
「ミチトさま、ご自重ください。なにかあったらどうするのです」
「み、ミチトくん、危険だよっ」
「そうですよ~、ここはわたしたちに任せてください~」
「そうだ、ここはわたしの剣の腕を信じろ!」
俺が最前線に出ることに、みんなは一斉に猛反対する。
だが、俺は他人に任せて椅子にふんぞり返ってるようなマネはできない。
なぜなら――俺は常にバリバリ働いてきた元社畜だからだ。
「いや、絶対に俺は最前線に行く。これまで魔法の鍛錬もしっかりやってきたんだ。俺が原因で魔怪獣が領内を荒らしているのに俺だけ安全なところにいられるか。今は少しでも戦力がほしい場面だ。俺が戦場に出なかったせいで誰かが戦死するようなことは防ぎたい。だから、行かせてくれ! 俺は、絶対にみなを死なせない!」
国王としては失格かもしれないが、それでも俺は偽りない気持ちを口にした。
戦闘経験は少ないが、今の俺の魔力はかなり上がっている。
「軍師としてはお諫(いさ)めしたいところなのですが……そこまで意思が固いのなら、わたしもとめません」
「……さすがはミチトなのじゃ。わらわは感動したぞ!」
「それでこそ、あたしのお兄ちゃんだわ!」
「み、ミチトくん……うん、わかったっ、一緒に戦おうっ!」
「ミチトさん、格好いいです~♪」
「そこまで言うのなら、わたしも口を挟まん。共に魔怪獣を屠るぞ!」
俺の言葉は受け入れて、最前線で戦うことが決まった。
「わたしも知恵をさらに振り絞らさせていただきます。ミチトさま、一般兵と魔法使いをお貸しください。できる限りの罠を張り巡らせます。戦場では無力でもそれ以前の準備で彼女たちにも役に立ってもらいます」
「ああ、頼む。みんなで力をあわせて、必ずこの難局を乗りきろう!」
俺の言葉に、みんなが大きくうなずいた。
「ミチト、わらわもがんばるのじゃ!」
「お兄ちゃん、あたしもできることはすべてやるわ!」
「ミチトくん、がんばろう!」
「がんばりましょう~♪」
「腕が鳴るな!」
「ふふっ……これは歴史に残る戦いになりそうな予感がしますね」
こうして、作戦会議は終了、みなの心がひとつになった。これから王国が滅ぶか存続するかの戦いが待っているというのに、なんだか胸が熱くなる。
みんなと会えて本当によかった思えるし、これからも一緒に日常を送り続けたい。
そのためには――どんな困難でも乗り越えられる気がした。
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