第184話 捕らわれのお市
勝頼の乗る新型戦艦
勝頼は冷静を装い、
「聞こえるか?武田勝頼だ。島左近殿と申したか?」
「縄はほどいてくれないのね。そこの青いのを押して。そうすれば相手の声を聞きながら話せるから」
左近は味方のくノ一を見た。彩だ。大丈夫と頷いていたので言われた通り青いボタンを押した。これで普通に会話できるのか?
「島左近でござる。本当に大御所でございますか?」
「勝頼だ。ああ、余の声は知らないか。そこに武田の者がいれば聞いてみるといい。ところで市は無事か?」
お市は左近を見て話していいか目線で訴えた。左近は小声で余計な事は言わないように釘をさした。
「大御所。市でございます。ちょっと痛い目にあいましたが無事です。ただ船を乗っ取られてしまいました」
左近はもういいだろうと彩に再度猿ぐつわを指示して、
「大御所。お話ができて恐悦至極にございます」
「よくそこまでたどり着いたな、褒めてつかわす。で、何が目的だ?」
「正直に申しますと船が邪魔なのです。我が殿、石田三成様の策で陸に目を向けさせている間に船を沈めるのが目的でした。船員は皆殺しの予定でしたがお市様のお顔を存じ上げている者がおりまして」
うん?お市の顔を知ってるって、まさか!
「彩。そこにいるのか?」
彩は島左近に断ってから話し始めた。
「勝頼様。大変ご無沙汰しております」
「生きていたのだな。ならば…」
「彩、てめーなんて事しやがる。今すぐお市様を解放しろ。#¥@--、%〜………」
桃が会話に割り込んだが戦国飛行隊の他の3人に抑えられた。勝頼はしょうがねーなーこいつらと思いながら、
「島殿。で、これからどうするつもりだ」
「それをお伺い致したく恥を忍んでご連絡させていただきました。お市様がいらっしゃる事は想定外。それがしもどうすべきか悩んでおります」
なんじゃそりゃ?俺に聞くなよ、と思いつつ前世の記憶を思い出していた。
島左近。石田三成の家臣で確か関ヶ原で死んだんだよな?首が見つかってなくて生存説もあったような?石田三成を立てて忠臣で、そんでもって戦ったら猛将で。石田三成は秀吉べったりだから裏切る事はないだろうし。
お市も戦に出た以上は覚悟の上だろうしな。しかし
「そなたは余の家臣ではない。好きにしたらよかろう。聞きたい事がある。どうやってその船に侵入したのだ?」
石田三成が
島左近は三成と別れた後、甲賀、風魔の中から集めた泳ぎが達者な者達50名と海に潜った。潜水と泳ぎを繰り返し船団の背後に回った。船員は陸の戦いに見入っている。その隙に船を駆動しているスクリューに鉄の鎖を巻きつけた。そう、既に全船駆動を止められていたのだ。風魔は以前巡洋艦楓を盗んだ事があり、スクリューの利点、そして弱点を知っていた。スクリューを回さなければ何もできないという弱点を。
本当は船底に穴を開けて沈めるつもりだったのだが、鉄板が貼ってありビクともしない。仕方なく内部からの破壊工作に切り替えた。
そして、島左近の指揮のもと、1号艦の船壁をよじ登り侵入した。
甲賀、風魔の活躍で目に映った船員は殺されていった。艦橋に進む間に武田海軍兵に見つかり、騒ぎとなったが犠牲を出しつつ進みついにブリッジじゃない艦橋こと、操舵室に侵入しようとした。
そこでいきなり発砲され、3人の忍が倒れた。艦橋にいたお市が雪風改をためらわずに撃ったのだ。銃声に気づき船員が集まってきたが忍びの放つ矢や苦無に倒された。お市は侵入しようようとする者に発砲を続けたが弾切れになり、弾倉を交換している隙に操舵室への侵入を許してしまった。
「島様、あれはお市様です。捕らえられては?」
沙沙貴彩、黒田官兵衛の忍びでここでは島左近の監視役でもある彼女は、以前武田忍びと行動を共にしていた事があり、お市の顔を知っていた。
島左近はお市の事は話では聞いていた。織田信長の妹で浅井長政の妻で、今は武田勝頼の側室だ。戦国の世を強く生き抜いている女性と聞いていて、機会があればお目にかかりたいと思っていたが目に前にいるとは!
「その女は殺さずに捕らえろ!」
左近の指示が飛んだ。お市は鉄砲を苦無で弾き飛ばされ、抑えつけようとする忍びをヨーヨーとスニーカーに仕込んだ隠し刃で二人を殺したが捕まってしまった。
「石田三成の家臣、島左近でござる。名高いお市様にお目にかかれるとは。ゆっくりお話したいところではございますが、我が殿があそこで戦っておられますゆえ、手短に。この船の武器を教えていただきたい」
「島殿と申されたか。この船は輸送船です。武器などはありませんよ。私を捕らえてどうするつもりですか?」
「お市様を捕らえる事は計画外です。まずは我が殿をお救いしなければなりません」
ここまで言って左近は忍びに船に残ってる武田兵の抹殺と船の探索を命じた。その上で、
「武田軍には変わった連絡手段があると聞いております。この船にもあるのではないですか?」
「ああ、
「持って帰ります。お市様と共に」
そうして、お市を縛った上で猿ぐつわをした。この船の倉庫に大砲が積まれていたので甲板に配置させた。船の甲板には大阪城を砲撃したと思われる巨大な大砲もあった。その巨大な大砲を前面の巨大なロボに、普通の大砲を横の船に向けさせた。
通信機をいじくっているうちにスイッチが入ったようだ。ウィーーんという音がして、お市がもごもご何か言い始めた。もしかして繋がった?
「あー、これでいいのか?石田三成が家臣、島左近である。お市様はそれがしがお預かり申した」
左近はとりあえず喋ってみた。
というのが経緯だが、何も正直に教える必要もない。左近は勝頼に向かって話し始めた。
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