気持ち

 心乃は残っていたジュースを飲んでコップをテーブルに置いた後、僕の手を握りしめた。

「心乃ちゃん、次は僕の親だね」

 僕は握られた手に強く力を入れた。力を入れると、心乃は僕の瞳を見てコクリと頷いた。

「うん、そうだね。でも……ホントにいいのかな?」

「どうして? 確かに反対する人は多いと思うよ。でもさ、それらを乗り越えていかないといけないんだよ。それに、僕は未来まで見てないよ。だって、先のことなんて誰にも分からないじゃない。だから、今は目の前の壁を一つずつ二人で乗り越えていこうよ。心乃ちゃんとなら、どんなことでも乗り越えていけるよ」

「そうだね、春人くん……。二人でならどんなことでも乗り越えていけるよね」

「うん。そうだよ、心乃ちゃん」

 話しが終わるのを待っていたのか、席を外していた歩乃華が応接室へと戻ってきた。歩乃華は僕たちの目の前に次の目的地への切符を置いた。

「二人の決意は固まったみたいね。春人くん、心乃のことよろしくね」

 僕は横に座る心乃を見た。それに気づいた心乃はコクリと頷いた。

「はい。心乃ちゃんは僕が幸せにします。そして、どんなことでも乗り越えていきます」

 僕たちは目の前に置かれた切符を手に取り立ち上がった。

 玄関で靴を履いて、心乃の家を後にしようとした。その時、歩乃華から声を掛けられた。呼び止められて振り返ると、歩乃華と瞳があった。

「春人くん、君の瞳は決意の強さを訴えるんだね。その瞳ならみんなに認めてもらえると思う。だから、頑張ってね二人とも。あ、春人くん、裕美お姉ちゃんから電話があってね。二人に話したいことがあるみたいだよ」

「ありがとうございます。はい、分かりました。歩乃華さん、また来ますね。それに……切符ありがとうございます」

「うん、また来てね。あ、切符のお礼は夢乃に言ってあげて。さっき切符を持って帰ってきたから。でも、また今度来た時でいいよ。いってらっしゃい」

「いってきます」

 揃った声で再び歩乃華に決意を伝えるように言った。

 そして、僕と心乃は駅へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る