午前四時の夢と幻想

春嵐

伸ばした手

 手を伸ばした。


 届かないと、思った。


 普通に埋もれていく生活。どこまで行っても、普通が転がっている。普通の生活。普通の人生。普通の生き方。


 そのなかで、夢を見た。


 深い海のような、雲のない空のような、青色ではない青のなかで。落ちているのか浮いているのか分からない場所で。


 あなたを、見つけた。


 あなたへ。届かないとわかっていても、手を伸ばす。


 目が覚めると、いつも。泣いている。


 知っていた。あなたのことは。ずっと前から。あなたに逢いたくて、ここにいる。思い出せないだけ。起き上がれば、もう、あなたのことを忘れてしまう。


 つらかったり、くるしかったりして泣いているわけではない。ノスタルジックな気分でもない。ただ、目が覚めただけ。寝て起きて、目を開けたから、泣いている。それだけ。そうやって、自分に嘘をついて。だまして。


 今日を生きる。


 夢と幻想を。あなたのことを。心の底に押し込めて。

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