マヤside

殴り飛ばされ建物に激突し壁を崩落させる金鬼。


「うわっ!? な、 何だ!?」


住民の亜人も慄く。

顔が枕になっている。

マヤはつかつかと歩き金鬼に向かって指を指そうとする。

が巾木に両腕を捕まれる。


「放」


せ、 と言い切る前に両腕を放される。


「?」


両腕には手錠が繋がれていた。

両手を拘束している訳では無く両腕にそれぞれ手錠を片方のみ付けられた。


「HeavyCage!!」


手錠が重くなる、 まるで鉄球を付けられたかのようにがくんと両腕が下がる。

巾木の固有魔法【HeavyCage】任意の物体を重くする事が出来る魔法である。


「これで動けまい!!」

「フラッシュ」

「ブラインド!!」


フラッシュは閃光の魔法、 ブラインドは闇で周囲を暗くする魔法である。

マヤがフラッシュで目潰しを試みたが

巾木がブラインドでフラッシュの閃光を無効にしようと試みる。


「ぐわああああああああああああああ!!!」


巻き込まれた住民亜人が叫ぶ。

閃光がまるで無効化されていない。

ブラインドの闇は精々フラッシュの明るさを軽減するだけだった。


「くっ・・・」


軽減された光でも眼が潰れんばかりの光量。

もしも軽減しなかったら脳が潰れるただろう。


「眼がぁ!! 眼がぁ!!」


叫ぶ亜人。

ちっち、 と舌を鳴らす巾木。

舌を鳴らす音の反響で周囲を把握するエコロケーション。

エルフの嗜みである。


「!!」


巾木は直ぐに交代した、 マヤが近づいてきている。

【HeavyCage】で重くなっている手錠が手首にあるのに

手錠の重さは100Kgを超えて居る筈。

それなのに動けるとは完全に想定外。

金鬼が攻撃をしてから巾木が動きを止めて園田がトドメという流れだったが完全に崩壊した。

いやどの道フラッシュで眼を潰されているから無理なのだろうか。


「ふげっ!?」


亜人が悲鳴をあげる。


「ああああああああああああああ!!!」

「!?」


巾木に投げ飛ばされる亜人。

巾木は伏せて亜人を躱す。


「レーザー」

「暗挺!!」


亜人を交わした今、 回避は出来ないと判断した巾木は目の前に闇の障壁を構築する。

暗挺は防御の闇属性魔法、 耐え切るつもりだったが一瞬でひび割れ砕ける。


「馬鹿な・・・」


力量には差が有るとは分かっているが余りにも圧倒的過ぎる。

一方的にここまで押し通されるとは思っていなかった。


「・・・サテライト」


サンピラーを止めたマヤの周囲に光球が浮かび飛んで行く。


「がっ!!」


園田に光球が激突し弾ける、 園田は吹き飛ばされる。

光球で手錠も破壊される。


「聊か聊か私も大人げなかった」


マヤがぽつりと呟いた。


「力量差は歴然まともにやり合うだけ虚しい互いの利益になる事をしましょうラビーを連れて来なさい」


マヤが巾木に命令する。


「・・・・・断る」

「何故?」

「単純な話だ・・・貴女が・・・信用出来ない」

「この私が!? 正義の騎士団純白の真珠の私が!? 何故!?」

「本当に・・・・・分からないと・・・・・言うのか?」

「回りくどい言い方は止めろ!! どういう事だ!!」

「・・・・・貴女・・・殺そうとして来たじゃないか」

「貴方が私の言う事を聞かないからでしょうが!!」

「・・・・・じゃあラビーが貴女の言う事を聞かなかった時も殺しますよね?

そんな人間を彼女に会わせられない」

「会わせられないじゃない私と彼女は会って共にあの髑髏頭を倒さなければならないのです」

「そうか」


眩んでいた眼が回復した巾木。

例え殺されて一矢報いてやる。

しかしその瞬間轟音が響く・・・

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