戦慄のファーストインプレッション(巾木side)

巾木は森羅共和国の共和国議員である。

文官だが嗜みとして戦闘も熟せる、 少なくともラビーと背中合わせで深海戦争を戦った

戦場に出る程の胆力がある男である。


そして密、 園田、 金鬼は森羅共和国でも五指に入る実力者。

尋常では無い戦闘能力を持っており修羅場も多々経験した歴戦の猛者。


密があっさりと殴り落されたのはあまりにも異常。

斥候とは言え老女の拳で倒れるのはあり得ない。


「マヤ、 か・・・」


巾木は唾を飲む。

ビア帝国第十三騎士団【純白の真珠】。

現ビア帝国皇帝フライが帝位を獲得する為に自らが率いていた

ビア帝国第十三憲兵団【漆黒の尖晶】と協力体制を組み

最終的に袂を別ち、 殺し合った騎士団である。

彼等は正義を信奉し貴族も平民も平等な国を作ろうとしていた

純白の真珠団長フライ・ニンフの理念に共感し理想の為に戦い敗北した者である。

青臭い理想論者の集まりだが当時のビア帝国の戦力は十三騎士団憲兵団制の時代

戦力ならばサークルランド一を誇ったが仲違いし過ぎて纏まりに欠けていた時代。

文字通り混沌の極みと言っても過言では無い時代を生き残った猛者である。


「・・・密、 大丈夫か?」

「直ぐに目覚める様に殴ってはいない」


金鬼の言葉にマヤが返す。

園田と金鬼は彼女とは子供と大人以上に差が付いていると理解した。

腕力は流石に勝てるだろうが技量、 魔力の量、 魔法の質

全てが自分達と隔絶していると判断出来た。

文字通り怪物である。


「人の身で有りながらここまでとは・・・」


巾木はレイシストでは無い。

しかしながら人間を認めると言う事は稀である。

今までに彼が認めた人間は両手でも余る。

マヤと言う人間を巾木を認めた。


「巾木さん、 御話を始めたいのですが」

「・・・・・」


巾木は大した『戦人』だとマヤを認めた。

武術と魔術を丹念に鍛え上げたその様は凄まじい。

だがしかし


「攻撃しておいて話を聞けと言うのは聊か虫が良いのではないか?」


如何に相手が強かろうが唯々諾々と賛成するつもりは毛頭ない。

巾木は死の覚悟を決めた。

園田と金鬼も腹を括る。


「あの程度、 攻撃にもならないでしょうが失礼なのは謝りましょう」

「・・・・・」


顔には出さないが凄まじい緊張感だった。

深海戦争がまるでピクニックの様に思える程だった。


「改めて話をしましょう」

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