ウィノ、アラモードに説かれる

「アンタと二人かー、 まぁ悪く無いわね」


ズズーとお茶を飲みながら雷と盾の騎士と交代して見張りとするウィノとアラモード。


「ふぁ・・・途中で起こされたのに元気ですね・・・」

「この程度、 如何って事は無いわね」


眠そうにするウィノを煽るアラモード。


「皇帝陛下のご教育の賜物、 と言う事ですか?」

「今の世の中、 完全に平和じゃないでしょ

また魚野郎が襲って来るとも限らないし、 帝国には敵も多い

だからこそ自衛手段として野営とか戦闘とかは出来て当然でしょ

アンタこそ騎士なのに何でそんななの?」

「・・・・・訓練サボってました」

「・・・何で? 騎士目指してるんじゃないの?」

「いや・・・その・・・アスパルと・・・」

「え、 何? アンタ女にかまけてサボってたの?」

「・・・・・」


俯くウィノ。


「騎士どころか人として駄目でしょ」

「そこまで言います?」

「じゃあ聞くけど将来設計は如何するつもりだったの?」

「しょ、 将来設計? それは勿論アスパルと結婚・・・」

「結婚してから如何するの? 収入は? 生活は?」

「・・・無論騎士になるつもりだが・・・」

「だけど訓練をサボっていたんでしょ?」

「う・・・だ、 だが私は騎士団長の息子」

「でも駄目でしょ、 『騎士団長の息子』という肩書でこれからの長い生涯を

奥さんを養えるの? 子供は作れる?」

「じゃ、 じゃあ俺は如何すれば良かった!!」


立ち上がるウィノ。


「そうね、 私ならばまずは一人前になるのを勧めるわ」

「一人前? 一人前の騎士になれと?」

「一人前の人間よ、 自分の意志で行動する人間」

「いや、 それは当たり前じゃないか・・・」

「意外と難しい、 困難な出来事に対して人間は自分の意志を容易く曲げる

口触りが良い言葉で言い訳をする、 自己正当の為ならば如何なる残虐も人は実行する

それが駄目だとは言わないけれど私としてはグッと来ないなぁ

男としての魅力が無いよ」

「魅力・・・?」


怪訝そうな顔をするウィノ。


「言葉よりも行動ね、 一人前の人間になり、 そこから一人前の男になり

そこから就職して一人前の社会人になるのが良いんじゃない?」

「社会人って・・・そんな平民みたいな」

「一人前の騎士でも良いわ

兎も角ちゃんと一人の人間として確立せねばならないでしょ」

「・・・・・」


俯くウィノであった。

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