走る巾木達(巾木side)

巾木達は馬車を走らせていた。

まさに狂った犬の如く。

馬車の窓から顔を出す巾木。


「ちぃ!! どんどん離されている!!」

「巾木さん、 危ないですって!!」


巾木達が何故こんなに焦っているのかと言うと

話は単純、 巾木が拉致られているゼロを見つけたので

こうしてオブラートを全力で追いかけている。


「巾木さんの固有魔法で何とか叩き落とせませんか!?」


巾木の固有魔法【HeavyCage】は任意の物体を重くする事が出来る。


「射程距離外だ!!」

「それでは駄目か・・・」

「こんな事ならば弓を真面目に練習して置けば良かった!!」


巾木はエルフ氏族出身者でエルフの中では若手のホープである。

共和国議員になる為に法律等を学んでいるが代償として他の事が疎かになっている。


「エルフは長寿なんだから弓を学ぶ時間は有ったでしょう!?」

「明日やろうって思っている内に早500年だよ!!」


親近感が沸く。


「兎も角、 何時までも空を飛び続けている訳はない!!

何処かで着陸する筈だ!! それまで追い続ければ良い!!」

「だが・・・この方角は・・・」


オブラートが向かっているのは赤い森である。

当然ながら赤い森上空に突入するオブラート。


「くっ・・・如何する!?」

「・・・・・」


赤い森周辺の騎士達は空を飛んでいるオブラートには気が付いていない様だ。


「こうなったら我々だけで行こう」


馬車から降りる巾木。


「そうなるか・・・」


雷達も馬車から降りる。


「密、 お前は待って居ろ」

「だがしかし!!」

「怪我で完全じゃないんだ、 ここで待機だ」

「っ!!」


密も歴戦の傭兵、 自分が役立たずになる可能性は充分に分かる。

動く右腕は強く握りしめて血が滲んでいる。


「雷、 必ずやラビー様を!!」

「分かっている」


画して巾木と密を除く【雷馬】一行も赤い森に入るのだった。


「ぐお・・・!!」

「ど、 如何した雷!?」 

「は、 鼻が辛い・・・この森の物は刺激が強くて匂いが強い・・・鼻が利かない・・・」


犬に唐辛子を与えるとえらい事になるらしい。

雷は人狼なので致命的な事にはならないだろうが

賢明な読者諸賢は絶対に犬に唐辛子を近づけないで下さい。


「くっ・・・辛いが・・・行くしかねぇ・・・」

「あぁ、 さっさと行って公爵殿とラビー殿を救出しよう!!」

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