空中の会話(ゼロside)

巨大なマント、 と言うよりは膜状の何かをたなびかせてオブラートが空を飛んでいた。


「おい!! 貴様!! 何者だか知らないがこんな事をしてタダで済むと思っているのか!?」


膜状の物が伸びてぶら下がっているのはラビーの父親でもあるゼロ・ストロング。

何故彼が捕まっているのか?

昨夜ゼロがベランダで酒を飲んでいたらオブラートに拉致されたからである。


「皇帝にさえなれば何も問題無い」

「何言ってんだ!! ふざけるな!!」


もごもごともがくゼロ。


「落ちたら死ぬぞ」

「っ・・・・・!! 良く考えろ、 公爵に対してこんな事をすれば

皇帝でも問題になるぞ」

「なら戦争でも何でもやってやるよ」

「何を言っている・・・そんな滅茶苦茶な皇帝には誰も付いて行かないぞ・・・」

「俺は無茶苦茶な皇帝になる!!」

「何を言っているんだ・・・」

「まぁとりあえず聞け、 アンタには分からないだろうが聞け

俺は意外に真面目な奴なんだよ」

「知るか!! そもそもお前は誰だ!!」

「ビア帝国第14皇子、 オブラート・ボウル・ビアだ」

「・・・・・皇子だからと言って外国の公爵を拉致して良いと思っているのですか!!」


強く出るが敬語は着けるゼロ。


「まぁ聞け、 俺はな意外と真面目で良い子なんだよ」

「知りませんよ!!」

「聞かないと叩き落とすぞ」

「・・・・・分かりました、 聞きましょう」


命の危険が有るのならば話を聞くゼロ。


「俺は父陛下の言う事を何でも聞いてやって来た、 小遣い貰えたし」

「それで?」

「俺は思ったわけだ、 このままの人生で良いんだろうか、 と!!」

「何の不満が有るのですか?」

「いや、 漠然と色々やって来たけどもこのまま大人になって親が倒れたら

皇帝位に着いた兄弟に粛清されるかもしれない」

「粛清って・・・何をしていたんですか?」

「濡れ仕事かなぁ・・・」

「!!」


濡れ仕事とは要人暗殺の隠語である。


「名を聞かない訳だ、 目立てば死の危険が上がる・・・」

「いや、 まぁあんまり人と離さない性質だからな

それはまぁ良いんだよ、 俺はこうした裏仕事以外では殆ど自分から何もしなくてさ・・・

こうやって退路を断つ事でモチベーションを上げている訳だ」

「モチベーションの為に私を誘拐したと言うのか!?」

「それだけじゃない、 ちゃんと有効活用する」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る