面倒事(辺境伯side)

魚が食いたいと喚いているラビーだったが

一方その頃、 辺境伯は屋敷にて目を覚ましていた。


「ご主人様、 御客様がいらしています」

「客? 誰?」


ベッドから起き上がりながら尋ねる。


「御父上の御兄弟の友人らしいです」

「・・・・・カジノ王の部下か・・・身支度を整えてから行く」


辺境伯は憂鬱な気分になりながら身支度を整えて客人を待たせている応接間に向かった。

そこに居たのは頭が鉄球になっているスーツを着た男だった。


「おぉ、 久しぶりだなぁ」


鉄球頭が気さくに辺境伯に話しかける。


「失礼ですがお会いした事が有りましたか?」

「あぁ、 まだおチビちゃんだったからな、 仕方ないね

改めて自己紹介、 俺はカジノ王の配下のディーラーの一人だ」

「身分を証明出来る物は?」

「あぁ、 カジノ王からの命令書も有るぜ」

「命令書? このタイミングで?」


憂鬱な気分になる辺境伯、 カジノ王の遠縁だからとカジノ王から偶に連絡が来ると

何時も無茶振りをされる、 運を操作して運を上げて居る筈なのだが

運が良くなってもカジノ王からの仕事からは逃れられない様だ。

とは言え現在の運気はかなり高い筈なのでそう面倒な事は頼まれない筈

なのだが、 カジノ王の部下直々に来ると言う事は相当な面倒事である。


「大瀑布から救援要請が有った、 外から外来種が滝登りしていて

民草に被害が出ている、 至急援護に向かって欲しい」

「冗談でしょう? この森は如何するんですか?」

「お前が直接出れば問題無いだろう」

「・・・・・」


頭を抱える辺境伯、 兵を使わず自分で行けと言うのか?

余りにも無茶な要求である。


「辺境の守備が疎かになる場合、 八王の命令と言えども拒否権が辺境伯には有る筈です」

「その辺境の守備の為に兵力を出せと言っている、 赤い森も辺境だが

大瀑布も辺境だ、 問題は無い」

「・・・この様な場合は内地から兵を出すのが普通だと思いますが?」

「他の八王ならそうするかもしれないが、 今カジノ王は手一杯でな」

「・・・・・」


苦々しく思う辺境伯。

拒否権は法令としては認められている、 だがしかし

カジノ王直属の部下が来たとなると拒否した場合・・・


「分かりました・・・」

「おぉ、 引き受けてくれるか、 助かるぞ」

「・・・・・」


話は終わったとディーラーは立ち去った。


「・・・・・」


応接間に置いてあるソファーを思い切り殴る辺境伯だった。

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