エキセントリック編み物先生

「おほほほほ、 ここが貴女おススメの店ね」

「そうですね」


万年筆の令嬢が編み棒の御婦人と店にやって来た。


「初めましてこんにちは、 私は編み物の先生をやっている者です」

「ご丁寧にどうも・・・」


御辞儀をする編み物先生に御辞儀をするラビー。


「今日は・・・どうしましょうかねぇ・・・」

「紅茶が美味しいですよ、 我が家の家令にも負けない紅茶です」

「ほう・・・メニューは有りますか?」

「そちらに」


一応この店にもメニューはあるのだ。


「どれどれ・・・色々有りますね・・・む!!」

「如何しました先生?」

「炒飯が有りますね・・・」

「炒飯? ってあの炒飯ですか?」

「面白いですわ、 炒飯を御一つ下さいな、 報酬はこの絹糸で如何でしょう」


糸玉を見せる編み物先生。


「えぇ良いですよー」


快諾したラビーはとっとと炒飯を作り始める。

旨い炒飯には火力が肝心要である。

手早く炒飯の材料を鍋に入れて炎を噴出させ一気に仕上げる。

ラビーの固有魔法を使えば問題無く手早く大火力で炒飯を炒める事は容易!!


「火事!? 火事なの!?」

「落ち着きなさい、 炒飯にはあれ位の・・・

いやあれはやり過ぎかもしれないけど、 火力が居る料理なのよ」

「へぇー、 先生は博識ですね」

「ドヤァ・・・」

「お待たせしましたー炒飯です」


令嬢と先生に炒飯を出すラビー。


「え、 二人分? 良いの?」

「良いですよ、 絹糸なんて高価な物を貰えるんですから」

「おほん、 まずは食べてからよ」


先生が炒飯を食べる。


「うん!! 美味しい!! 炒飯がキチンとパラパラになっている!!

素晴らしいじゃない!!」

「えぇ、 食べたくなって練習したんですよ」

「凄いじゃない、 ほら貴女も食べて」

「い、 頂きます・・・あ、 美味しい」

「でしょう!! いやぁ、 貴女が料理じゃな勝てないから編み物で対抗するって言い始めた時は

一体何かと思ったらこれは美味しい、 私の編み物を頼るしか無いわね」

「そ、 そうですね・・・」


少し引く令嬢。


「それに・・・少し辛みが有るわね

噂に聞いてた辛さを出す料理って所かしら」

「えぇ、 私辛いの好きですし」

「気に入った!! 自分の道を出すのは良い事よ!!」


一気に炒飯を食べた後にぴょんと飛んでスキップで帰る先生。


「・・・・・個性的な人ですね」

「えぇ、 結構エキセントリックな編み物をしてますよ」


ぽつりと呟く令嬢とラビーであった。

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