第27話 オムライス

「「「・・・・・すげーな。」」」


ホントだよ。なに、あの締め技、聖女の設定どこ行った?  てか、俺って役立たず? いらなくね?


ジャイアント・ロックバードがゆっくりと光となって消えていき、ドロップ品が現れた。ジャイアント・ロックバードの爪、肉、そして”梅酒”とダンジョンカード。


「あー、卵出なかった、ごめんね、ダイチ。さっき、ずっと卵見てたから欲しいんだろうなと思って倒したんだけど、残念。」


えっ、俺のためなの?  ・・・・なんか、ありがとう。


「師匠、言ってくれれば卵なんか譲りますよ。なあ? 皆。」

イルガーさんが、いい笑顔で言ってきた。

「うん、はい、どうぞ。」

「・・・ゆずる。」

「俺もかまわねーよ」


事情が良く分からない、ギルマス、バルサさん、炎の盾の面々が何か言いたそうにアナさんから卵を受け取った俺を見ている。


止めて下さいね、凄いの俺じゃないから、俺は何もしてないから、・・・・そりゃあ、くれるなら卵はもらうけどね。


「ナナミってスゲーな。」

「師匠って、なに?」

「あのナナミが気を使う、ダイチって何者?」

炎の盾のメンバーが口々にタイガーヴァイスに詰め寄る。


「俺達は、この一か月位ナナミに体術を習ってたんだよ、すげーよ、ナナミの体術は。」

「そうなの、イルガーはもちろん、体力的にちょっと劣ってた私でも使えるし、なんていうか無駄がないんだよね。」

イルガーとナナミがドヤ顔で答えて、イリアンもうんうんと頷いている。

「力任せ、ダメ、体、上手に使う、強くなる。」

ドローウィッシュまで、べた褒めだ。


体を鍛えるのは、力任せ、スキル頼みのこの世界に、合理的な力の使い方が上乗せされたらそりゃあ凄いよな。ガヤガヤとざわつき始めた俺達に、頭をガシガシとかきながらギルマスが割って入ってきた。


「あー、なんだ、お前たちは後でいろいろ話せばいいだろう、俺はギルドに戻りてーんだよ、このダンジョンカードも確認してーしな。」


それもそうだと地上に戻り、先程進めなかった洞窟にカードを持ってると進めることが改めて確認出来たので、炎の盾のメンバーにダンジョンの監視を頼み、ギルドに急ぎ戻ってきた。


ギルマスの姿を見つけたアリサが駆け寄ってくる。

「アリサ、会議だ、エルも呼んでくれ、部屋には誰も近づけるなよ。」

「分かりました。」


「お前らは、今日のところは休んで、明日の昼にここに来てくれ、分かってると思うが、今回の事は他言無用だ。あと、イリアンとダイチはわりーいが明日の朝早く来てくれるか?」


「大丈夫ですよ。」

「かまわねーよ。じゃあ、明日な。」


そう言ってタイガーヴァイスのメンバー達とも別れて、久しぶりにナナミとサイゾーくんと家に戻ってきた。俺は何もしてないけど、疲れたよ。


さて、こんな疲れた時はおいしいものを食べよう。   タマゴ♪ タマゴ♪ 


この世界にも卵はある、あるけど、家畜のコケッコーの玉子は新鮮さと味がいまいち、ロックバードの玉子はおいしいが新鮮なものはメチャクチャ高い。コケッコーの玉子は1個が銅貨1枚(約10円)でロックバードの玉子は純銀貨1枚(1,000円)、新鮮なものはこの数倍は軽くいく。


そんなお宝の玉子で作るとなれば、やっぱ、オムレツかな、いや、お腹も空いてるからオムライスで決まりだな。ご飯は少し多めに炊いてアイテムボックスに保存してあるし。



ロックバードの玉子を割ってみると、黄身が大きく盛り上がり、かなり色も濃い。これは、濃厚なオムが期待できる。軽くフォークで黄身を崩し、少しだけ牛乳を加える。フライパンにバターをなじませて玉子を広げていきながら、少しだけ塩を振る。固まらないように玉子を崩して、半熟になったらフライパンの柄を軽く叩きながら、片側に寄せて、丸める。これを玉ねぎとロックバードのバターライスに乗せれば完成!   


玉子をたっぷり使ったふわトロオムライスは美味かった。ケチャップが無いのが残念に思ってたけど、タマゴの味がしっかりしてるから、逆に塩、コショウのシンプルな味付けがさっぱりとしたトマトソースとマッチして、オーガニックなんちゃらみたいな素材の味を活かした上品な味わいになった。


ちなみにトマトソースは空間ごと圧縮して作ったんだ。手持ちの香辛料にケチャップはなかったが、塩、コショウだけでは物足りない感じがして、でも、1からトマトソースを作るには時間がかかるしお腹が空いてる、その時ふと思ったのが、煮詰めなくても圧縮すれば出来んじゃね?


手のひらに魔力を集めて、握りつぶすように凝縮する【重力操作グラビティオペレーション】。

ほら、出来た。塩とハーブを混ぜて作った特製フレッシュトマトソース。絶品。


ナナミとサイゾーくんの視線がビミョーなものになっていたが、気にしない。気にしたら負けだ。

出来上がったオムライスを食べた幸せそうな二人の顔が嬉しい。それでいいのだ。


美味しい料理をつくって、それを食べる幸せな顔、食後には疲れた体に染み渡るさわやかな梅酒のロック。ちびちびと飲みながら考えた。ひょっとして、俺って圧力鍋もいけるか? 料理の幅が広がるぜ。今日はぐっすり眠れそうだ。






「ねえ、サイゾーくん、ダイチの魔法の使い方さ、おかしくない?」

「おかしいですにゃ、ダイチ様が使用したのはSランクの時空魔法ですにゃ。」

「Sランク・・・・それを料理に・・・使う?」

「・・・はい・・ですにゃ。」



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