第19話 宅飲み
店内に騒めきが戻った頃、店の奥から、エプロンをつけた男が近づいてきた。
この店の店主だろうと思い、先に頭を下げる。
「騒ぎをおこしてすみませんでした。」
「ははっ、気にすんなって、どうせ向こうのほうから絡んできたんだろう、なあ、 ミリア?」
「そうだよ、お父さん、あいつら顔悪い癖に女好きなんだもん、朝までとか言っちゃって、気持ち悪い。……よっぽど、遅いのかな?可哀そうだね。」
見た目通りの元気いっぱいの女の子。お口も元気いっぱいだった。
「ま、まあ、それは、どうでもいいから…、そんな事よりな、もうすぐ警備隊がくるからちょっと待っててくれ。」
「って、どこでそんなセリフ覚えてきたんだよ、お前は、」
「んっ? うちに良く来る”天使の夜”のお姉さん達! しつこそうな男に絡まれたら、嫌がるより、遅い、小さい、可哀そうって言ったほうがいいんだって、あ、あとね、上から目線?で腕組みするんだって。ちゃんと出来てたかな?」
こてんと小首を傾げるものの、得意げに胸を張り、誉めて欲しそうにキラキラした目をしているミリアと頭を抱える父、店主。
それを見て笑いながら、「ミリアに乾杯!」と酒を飲む客。そんなこんなの中、警備隊が到着した。
簡単に事情と名前を聞かれ、カードを確認され、三人組は連れていかれた。罰金で純銀貨1枚程度になるらしい。…やっぱりカード作っておいて正解。
「俺達のせいで、騒ぎになってすみませんでした。」
と警備隊が帰ってから、5人組に謝罪した。
「いいって、気にすんなよ、あれくらいでさ。それより、さっきあんたが使った体術、凄かったな、ほとんど力使ってねえだろう。」
「あっ、分かりましたか? あまりこのせか…この辺りでは使われてないんですかね?」
「見たこたぁねえな。あと、威圧もかなりの魔力だよな。」
「あれは…」
「そんなもん、どうでもええわい! それよりさっきの酒じゃ、、まだ、持ってるんか? ん?どうなんじゃ!」
ネコにまたたび、ナナミにもふもふ、ドワーフに酒。 1つ、増えました。
鼻息荒く、会話をぶった切るドワーフのバルサ。鼻息で口髭が揺れている。
「ありますが、出来れば話を聞いて欲しいです…。」
「聞く。聞くからさっきの酒を。」
「実は話をきいて、良ければ一緒に行っていただきたいところがありまして、行っていただけるようでしたら、残りは全部差し上げ…、」
「行く。どこじゃ。行くから早く酒を出せ。」
フンガーと、更に鼻息が荒い。あまりの食いつきぶりにさすがに引き気味だ。
「ちいと、落ち着けよ、バルサ。なあ。」
「そうよ、どこに行くのかも分からないのに、勝手に返事をされても困るわ。」
「構わん!わし一人でも問題ない。」
「無い訳ない!」四人の声が揃った。
「良かったら、明日にでも俺のうちに来ませんか?出来たらゆっくり話たいんで、他の酒もありますし。」
「よし! 今から行くぞ。」
バルサの勢いに抗えず、結局7人でダイチの家に行き、取り急ぎ簡単なつまみとコップを用意する。
「今更だが、俺がタイガーヴァイスのリーダー イリアン・グリーグ魔剣士だ。」
「妹でサブリーダー、魔術師のアナ・グリーグよ」
「虎人族、双拳士のイルガー・ディファイン。」
「巨人族、ドローウィッシュ・へイン。」
「ドワーフのバルサじゃ。」
「俺はダイチでこっちはナナミ。俺達はここから大分北にある山間部イリーアル村の出身で、俺は商家の5男坊で家を継げるはずもなく独り立ちのためで、ナナミはそこの道場主の娘で修行中?になるのかな。で今はここで一緒に住んでる。」
「イリーアル、聞いたことねえなあ。」 …ええ、そうでしょうとも…自分も初めてききましたからね。
「商家の息子か、そっちのほうがあってそうだけどな、」
「まあ、冒険者は向いてないかとも思いますが、今はまだ、店舗もないので、自分も修行中みたいなものです。」
「そんな事は飲みながらでいいじゃろう、それより酒だ!」
小刻みに、プルプルと震えてる。 …アルチュ…アルコール依存症か?
とりあえず、コップになみなみとつぎ、他のメンバーには、梅酒ロックを勧める。
バルサは一口、グイッと飲み干し、「旨い!」 ぷはぁ 最早、一連の流れのように同じ動作を繰り返す。
他のメンバーも梅酒を口に含み、驚きの表情をしている。ダイチとナナミは梅酒の水割りだ。
「これも飲んだことが無いお酒だな。」イリアンがコップの中身を透かしたり、匂いをかいでいる。
「私はこっちのほうが飲みやすいわ、甘いけど、甘すぎない。それに氷。贅沢だけどおいしい。」と、アナが言うと、
すかさず、「そっちも飲むから、ワシにも寄越せ!」と横目で見ていたバルサが喚く。
虎人族のイルガーと巨人族のドローウィッシュは、甘い梅酒よりも、さっきのほうがいいと言うので、氷を入れて水割りにしてみた。
「こりゃあ、旨い、酒って冷やすと旨いんだなあ」
カランとコップの中で氷が音を立てる。聞き耳を立てていたバルサは何も言わずに、氷を入れ、くるくるとコップを回し氷を溶かす。もういいだろうと一口飲み、やはり目を丸くした。すかさず飲んだ分を補充し、又、一連の流れに戻る。飲む、注ぐ、ぷはぁ のローテーションが成立した。
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