第3章 5 一夜明けた朝
翌朝7時―
コンコン
ヒルダの泊まっている部屋のドアがノックされた。
「ルドルフが来たんだわ。」
丁度朝の仕度を終えたヒルダは立ち上がるとドアに向かった。
カチャリ・・・
ドアを開けるとそこにはやはりルドルフが立っていた。
「おはようございます。ヒルダ様。」
ルドルフは笑顔でヒルダを見つめる。
「おはよう、ルドルフ。」
そしてニコリと笑みを浮かべる。
今日のヒルダは上品な濃紺のベルベットのワンピースを着ていた。
「ヒルダ様・・今日もとてもお綺麗ですね。」
ルドルフは素直に自分の感想を述べた。
「!」
ヒルダは一瞬顔を真っ赤にさせると言った。
「あ、貴方も・・とても素敵よ。ルドルフ・・。」
「ヒルダ様・・。」
ルドルフはヒルダを抱き寄せ、髪を撫でると言った。
「今日は・・ノラが入院できそうな病院を探したいと思っているんです。ヒルダ様はホテルで待っていますか?」
するとヒルダはルドルフの胸に顔をうずめながら首を振った。
「いいえ、一緒に行くわ。ルドルフ・・・貴方の傍に・・いたいから・・。」
「ヒルダ様・・」
ルドルフはヒルダの言葉が嬉しくなり、ますます強く抱きしめるのだった―。
ルドルフとヒルダは、ホテルのレストランで朝食を食べていた。
「ヒルダ様、昨夜は良く眠れましたか?」
ルドルフはスープを飲んでいるヒルダに声を掛けた。
「ええ、お陰様で良く眠れたわ。やっぱり温かい部屋で眠れるって素敵ね。」
「ヒルダ様の住むアパートメントは・・・ボイラーがついていないのですよね?」
「ええ。そうなの。でもリビングには薪ストーブがあるから冬の間は学校から帰ればずっとリビングで過ごすし、夜寝る時は湯たんぽを使っているから平気よ?」
「そうですか・・。」
ルドルフは考えた。ヒルダへのクリスマスプレゼントは部屋の中でも使える防寒用の品物がいいのではないかと。
「ルドルフ、食事が終わったらすぐに出かけるのよね?」
「ええ。そうです。チェックアウトをしてから出ようと思うので食事が終わったら荷物を持って出るつもりですが・・よろしいですか?」
「ええ、大丈夫よ。それなら早く食べてしまわないとね。」
「そうですね。」
そして2人は食事に集中した―。
ヒルダとルドルフは荷造りを終えて、1階にやって来た。
「ヒルダ様、ソファに座って待っていて下さい。チェックアウトをしてきます。ついでに病院の場所も聞いてきますね。」
「ええ、分ったわ。」
ルドルフはヒルダをソファに残し、フロントへ向かうとカウンターに鍵を置き、フロントマンに声を掛けた。
「すみません、チェックアウトをお願いします。」
「はい、かしこまりました。301号室と302号室のお客様ですね。宿泊費と食事代・・・合せて銀貨8枚になります。」
ルドルフはお金を支払うと尋ねた。
「すみません。このホテルの近くに結核患者を入院させてくれる病院はありますか?」
「ええ。赤十字病院があります。ここから馬車で5分程南にあるのですが・・もし宜しければこちらで馬車を手配致しましょうか?」
「はい。よろしくお願いします。」
ルドルフは頭を下げるとヒルダの元へ向かった。
「ヒルダ様。」
「あ、終わったの?ルドルフ。」
「ええ。今ホテルの人が馬車を手配してくれているので待っていましょう。」
そしてルドルフは手帳を取り出すと万年筆でメモを書きだした。ヒルダはその万年筆を見ると尋ねた。
「ルドルフ・・・その万年筆は・・?」
「ええ。ヒルダ様がプレゼントして下さった万年筆です。すごく書きやすいですね。一生大切にします。」
笑顔で答える。
「そ、そんな・・一生なんて大袈裟だわ・・・。で、でも使ってくれて・・すごく嬉しい。」
「ヒルダ様・・。」
その時、フロントマンがルドルフの元へやって来た。
「お客様。馬車がホテルに着いたそうです。もう外で待っています。」
「ありがとうございます。」
「ご利用ありがとうございました。」
フロントマンは頭を下げると去って行った。
「ヒルダ様・・・では行きましょう。」
ルドルフは立ち上がるとヒルダに手を差し伸べた。
「ええ。」
ヒルダはルドルフの手に自分の手を重ねると立ち上がった―。
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