第2章 3 仲睦まじい2人

 ヒルダとルドルフはようやく劇場の中へ入ることが出来た。ヒルダ達の席は丁度劇場の中央部分に当たる。


「ヒルダ様・・・中へ入るのに随分時間がかかってしまいましたが・・足の具合は大丈夫ですか?」


ルドルフは心配そうに声を掛けてきた。


「ええ・・・大丈夫よ。ルドルフ。ありがとう・・気にかけてくれて。嬉しいわ・・。」


ヒルダは頬を染めながら言う。ルドルフのちょっとした気遣いがヒルダは嬉しくてたまらなかった。そんなヒルダを愛おし気に見つめるルドルフ。こんなに近くにヒルダの傍にいられるのなら、転校した初日からヒルダに告白をしていれば良かったとルドルフはいまさらながら後悔していた。


始めて中に入る劇場にヒルダはすっかり夢中になり、キョロキョロと辺りを見渡していた。やがて・・・


ブーッ・・・・


劇場内にブザーが鳴り響き・・・スルスルと舞台の幕が上がり・・・演劇が始まった。

劇の内容はミュージカル形式で幼馴染の2人が成長し、紆余曲折の後に結ばれてやがて結婚すると言う恋愛劇だった。ヒルダは真剣に舞台劇を見つめ・・終了時には盛大な拍手をしていた。


(知らなかった・・・ヒルダ様にこんな一面があったなんて・・。)


その時、ヒルダはルドルフの視線を感じて目が合ってしまった。


「あ・・あの。あまりにも感動してしまったから・・つい夢中になって・・・。」


真っ赤になるヒルダにルドルフは笑顔で言った。


「いえ、そんなに喜んで貰えて光栄です。本当に良かったです・・思い切ってヒルダ様を誘って・・。」


「ル、ルドルフ・・・。」


ヒルダはますます頬を赤く染めるのだった―。




 2人で手を繋いで劇場を出るとルドルフが言った。


「ヒルダ様、何処かでお昼を食べませんか?」


「ええ、あのね・・ルドルフ。私・・貴方と食べてみたいものがあったの。」


「ヒルダ様から希望を伝えて貰えるなんて嬉しいです。何が食べたいのですか?」


「ルドルフは知っているかしら?ハンバーガーって言う食べ物なんだけど・・。」


「ハンバーガー・・・。ああ、聞いたことがあります。丸いパンを半分にスライスして、間にハンバーグにレタスやトマトが挟んである食べ物ですよね?」


「ええ、そうなの。実は去年・・お兄様と夏季休暇の時に蒸気船に乗って島へ行ったときにそこでクラスメイト達とも会って、みんなで一緒にハンバーガーというものを食べたのだけど、すごく美味しかったの。だからルドルフと一緒に食べてみたくて・・。」


恥ずかしそうに言うヒルダがルドルフは愛しくてたまらなかった。


「いいですね。僕はまだ一度もハンバーガーというのを食べたことがないので、今から楽しみです。確かこの通りの先にハンバーガーショップがあったはずなので行きましょう。」


「ええ。」


そして2人は手をつないでハンバーガーショップへと向かった―。




「ここもなかなか盛況ですね。」


ついた先のハンバーガーショップはヒルダたちのような少年少女でごった返していた。


「やっぱり日曜日なので混んでいるのね。」


ヒルダたちの前にはまだ10人ほどが列をなして店内に入るのを待っていた。


「ごめんなさい・・・ルドルフ。」


ヒルダはシュンとした様子で謝ってきた。


「え?何を謝るのですか?」


「だって・・・・こんなに混んでるとは思わなくて・・ルドルフ、おなかすいていない?貴方を待たせてしまうことになってしまったわ。」


「そんなこと気にしなくてよいですよ?僕はヒルダ様とこうして待っている間も楽しいですから。それよりヒルダ様こそ足は大丈夫ですか?」


「え、ええ・・大丈夫よ。今日はそれほど寒くはないし・・・。」


「そうですね。『ロータス』は海辺の町なので『カウベリー』に比べるとそれほど寒く無くていいですね。僕がこの間降り立った時は小雪が舞っていましたから・・。」


「ええ。私がカウベリーに行った時も雪が降っていたわ・・・。」


並んで待っている間も、2人の会話は尽きることはなかった―。





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