番外編 カウベリーの事件簿 ②
翌朝―
その日は朝から小雪が舞う寒い朝だった。
マルコが出勤し、ルドルフは母と2人でリビングで紅茶を飲んでいた時の事だった。
コンコン
ドアノッカーの音が屋敷に響き渡った。
「あら・・誰かしらね?こんな朝早くから。」
ルドルフの母は立ち上がり、暖炉の上に置かれた置時計を見ると時刻はまだ9時にもなっていない。
「母さん、僕が出ようか?」
ルドルフが声を掛けると母は言った。
「いいえ、大丈夫よ。ちょっと行って来るわね。」
そして席を立つと母はエントランスへ向かった。
「どちらさまですか?」
扉越しに声を掛けた。すると・・・。
「朝早くからすみません。警察です。」
「え?!警察?!」
ルドルフの母は驚いて扉を開けると、そこには2人の大柄の男性がコートを羽織って立っていた。
「あ、あの・・・。」
戸惑っていると背の高い男性が声を掛けてきた。
「すみません。こんな朝早くから伺ってしまって。あの・・ルドルフ君は御在宅ですか?」
「え、ええ・・ルドルフは家におりますが・・・。」
すると警察官は言った。
「実は私は昨日、自殺したイワン君のお葬式で彼と会っているんですよ。」
「え?イワンのお葬式で・・・?」
すると声を聞きつけてルドルフがリビングからやって来た。
「あ、貴方は・・・。」
ルドルフは一目見て、すぐに昨日イワンのお葬式で会った警察官だと思い出した。
「やあ、ルドルフ君。又会えたね。」
警察官の男性は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「どうぞ・・・。」
客間に通し、ソファに座った2人の警察官にルドルフの母はカウベリーの紅茶を差し出した。
「おお・・これは良い香りですな~・・。」
ルドルフに親し気に話しかけていた警察官がカップに鼻を近づけ、匂いを嗅いだ。
「ええ。本当に良い香りですね。甘みも感じられます。」
まだ20代と思しき若手の警察官もティーカップを手に取ると言った。
「この紅茶は・・この土地の名産品の『カウベリーティー』です。」
ルドルフの母が説明した。
「おお、地名と同じ名前なんですね。なるほど・・・。」
大柄の警察官は感心したように言い、次に向かい側に座るルドルフを見た。
「ルドルフ君。君には・・色々尋ねたい事があるんだ。話を聞かせて貰えるね?」
「はい、僕でお手伝いできるなら喜んで協力させて頂きます。」
すると警察官はルドルフの母を見ると言った。
「我々だけでルドルフ君と話がしたいので・・すみませんがマダムは席を外して頂けますか?」
「あ・・は、はい。分りました。」
ルドルフの母は頷き、チラリとルドルフを見ると部屋を出て行った。
パタン・・・
やがてドアが静かに閉じられると警察官は言った。
「ルドルフ君、君が最後にイワン君に会った時の事を教えてくれるかい?」
警察官とルドルフの会話が始まった―。
「そうか・・・。結局イワン君は話の途中で逃げ出してしまって最後まで話が聞けなかったんだね?」
「はい・・。僕がグレースや・・他の同級生の話をした途端に顔色を変えて・・。」
ルドルフは俯いた。
「やはり、イワン君の自殺は・・・グレースと関わりがあるのだろうな・・・。何せイワン君の母親も、グレースを殺害した父や、それを傍で見ていた母親は・・まともに会話もできない状態だから何も話を聞くことが出来ないのだよ。実はね、イワン君の母親は今市街の病院に入院中なんだよ。」
「え?!そうなんですかっ?!」
すると若手の警察官が言った。
「ああ、それでね・・イワン君の自殺の原因を見つける為に彼の家の中をこの後捜索に行く事になっているんだけど・・・ルドルフ君。君はイワン君の自殺の原因に何か心当たりは無いかい?」
ルドルフはその言葉に一瞬どうしようか迷ったが・・・。
(一刻も早くヒルダ様の無実を明かすんだ・・その為にはどんな些細な事でも話さなければ・・!)
ルドルフは顔を上げて、2人の警察官を見ると口を開いた―。
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