愛する2次元の彼女《ヒロイン》のために処女厨は頑張る-現実の彼女《ヒロイン》は信用できません-

ナッパー

第1話プロローグ

 中学二年の夏休みの中盤、怒声が家の中に響き渡る。


「お前等の顔なんて見たくもない!!さっさと俺の家から出て行けっ!!」


 父親が激怒している。


「はいはい、ごめんなさい。私が悪かったわね。離婚するんだから出て行くに決まってるじゃない。荷物は業者に頼むから、後は弁護士に連絡してね。ほら、幸人ゆきと行くわよ」


 母親は淡々としている。


 夏休みに入る前、母親の浮気がバレて父親が家から出ていった。

 母親には「離婚すると思うから荷物をまとめておきなさい」と言われていたが、現実感が無いままぼんやりと日々を過ごしていた。


 そして今日、父親が家に戻って来て俺も離婚話に同席。

 離婚は確定、しかも俺は父親の血を引いてなかった。

 父親は俺がいらないそうなので、同じ市内にある母親の実家へ預けられるらしい。


 母親はお金持ちの浮気相手と再婚するそうだ。

 母親の慰謝料や弁護士費用も、お金持ちの浮気相手が払うみたい。


 ちなみに俺の本当の父親は、お金持ちの浮気相手じゃないらしい。

 わからないんだってさ。


「二度と俺の前に姿を見せるなよ!!」


 父親の怒声と共に、家の扉が大きな音を立てて閉められる。

 好きだった父親と、ずっと住んでいた家が失われた。


「はーあ、疲れた。やっと、このしょぼい家ともお別れね。幸人もお母さんも心機一転、頑張っていこー!幸人、カッコいいから転校先でもモテモテになるんじゃないの~?あ、お母さんは新しいお父さんに会いに行くから、お爺ちゃんの家に先に行っててね。はい、タクシー代とお小遣い。じゃあね、お爺ちゃんに怒られないようにねー」


 去っていく母親を見送り、隣の幼馴染の家に引っ越しする事を伝えに行く。


「あ、幸人お兄ちゃん!どうしたの?お姉ちゃんは今日陸上部だよ?」


 幼馴染の妹に引っ越しする事を伝えると泣かれた。

 泣き止んだ幼馴染の妹と別れ、学校へ向かう。


 暑い日差しの中、陸上部にいるであろう幼馴染を探すが見当たらない。

 部活ももう終わったのか、人もまばらだ。

 校庭にいた見知ったクラスメイトに尋ねたら、さっき校舎裏に向かうのを見たらしい。


 校舎裏に行くと日陰になっていて涼しい。

 少し歩いて行くと、壁で人から見えづらい場所に幼馴染を見つけた。


 声を掛けようとするが思い止まる。

 1人じゃない、陸上部のエースと言われているイケメンの先輩と一緒だ。

 どうしようか迷っていると、先輩が幼馴染を抱きしめた。

 そのまま二人の顔が近づいていき、唇を重ねる。


 ずっと好きだった幼馴染。

 子供の頃から毎年一緒に行く約束をしていた夏祭りで、今年は幼馴染に想いを伝えようと思っていた。


 気づかれないように、その場を立ち去る。

 途中でクラスメイトに声を掛けられたが、無視して学校を出た。


 タクシーを拾い行き先を告げた後、携帯を開く。

 必要な番号以外は全消去、それ以外は全て着信拒否になるように設定、アドレスも変え、SNSは退会した。



 なんでこうなったんだろう?

 なんで俺がこんな気持ちにならなきゃならないんだ?

 母親が浮気したせい?

 俺が父親の血を引いてないから?

 浮気相手が父親よりお金持ちだったから?

 母親に騙されてた父親が馬鹿だった?

 幼馴染と両思いだと思ってた俺も馬鹿?

 先輩より運動できないから?

 先輩より背が低いから?

 幼馴染といい雰囲気になったと思ってた、あれもこれも勘違い?

 父親が母親を信用してたから?

 俺が幼馴染を信用してたから?

 母親がヤって、幼馴染がシて、母親が…俺が…幼馴染が…………。





 色々と考えた結果、ある結論に辿り着く。





「うん!そうだ!女は信用しねー!ビッチは死ねー!心機一転だな!!もう、女の為に頑張ってたまるか!!これからは我慢してた分、遊びまくるぞー!!手始めにアバズレに貰った金で、ゲームでも買いに行くか!イイヤァッホッーーイ!!」


「ひっ!君!?大丈夫かい!?」


 運ちゃんに心配された。











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