将棋電王戦
プロ棋士とコンピューターソフトが対戦する模様を映像メディアが配信する将棋電王戦は記憶に新しいが、この電王戦が様々なドラマを生んできたのは言うまでもないだろう。
既にトーナメントやファイナル戦まで行われ、形勢はコンピューターの優勢に見えるのも否めないところである。
あの竜王Hはインタビューで
「電王戦でプロ棋士が負け越したことについてよく聞かれますが、勝敗そのものにはあまり意味はないと思っています。そもそも人間同士の対局が、コンピュータ将棋のような指し回しにならないのは、多分に心理的な要素が働いているからです」
と述べた。
この棋戦ドラマの発端はS女流棋士がコンピューターに負けた所から始まるのだが、この度、謎のマスクマンがコンピューターソフト電王戦の神機「ponanza」に連勝するという快挙を成し遂げていた事が明らかにされた。
このマスクマンは自らを謎の覆面棋士と名乗り、神出鬼没な振る舞いで世を騒がせていたという。勿論マスクマンの行った棋戦は非公開で、報道筋によるとそのマスクマンの素性が長らく不明だったが、この度この人物が自ら氏素顔を明らかにしたとのニュースがセンセーショナルな話題を呼んだ。
記者会見の席でマスクを脱いだTという人物はコンピューター技師であり、連勝の秘密はAIからのリモート指示で勝ったと証言した。これが事実とすれば今回の棋戦はコンピューター同士の戦いだったという事になり、もはや人間の出る幕がないかのような論調になったが、公の席でT氏は熱くこう語った。
「そもそもコンピューターを作ったのは人間なのです。つまり人間がいなければ電王戦そのものが成り立たない。そう言う意味でコンピューターは未だに人間には勝てないのです。そこがとても大事なのです。まあ今後は電王戦に於いてより強いコンピューターの攻防になると思います」
T氏のインタビューには賛否両論が渦巻いたが、コンピュータに打ち勝つ人間棋士の出現を心密かに期待せずにはいられない思いだ。
了
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