第68話 完結

謁見が終わり、応接室に案内されたおっさんら一行である。


「無事終わりましたね」


「前も言ったかもしれないが、無事ではなかったがな」


フェステル伯爵がつっこみを入れる。

応接室で待っていると、あまり遅くなったので、パメラの件も含めて後日にしてほしい旨、王家の使いから言われたのだ。

国王も年なのである。

その時、おっさん、イリーナ、パメラ、ソドン、セリム、ロキの6人は王家の食事に呼ばれたのである。

その時ゆっくり、今後について話をしようというわけである。

おっさんは謁見を思い出して口にするのだ。


「ロキも無事男爵になれてよかったですね」


「はい、あのような場を設けていただきありがとうございます」


おっさんの配慮に礼をする忠臣ロキである。


「いえいえ、負けてしまうような結果になったら申し訳なかったです」


そんなことはございませんと返事をするロキであるのだ。


「ふむ、どうも召喚士の件もウガル伯爵の件も王家は知っていたが、ガニメアスの古だぬきの独壇場であったな」


「ぶっ」


パメラの発言にフェステル伯爵が思いっきり噴き出すのである。


「パメラ様、さすがに王城ではお控えください」


「まあ、そうだな。ただのパメラと名乗ったばかりであるからな。だが気を付けた方が良いぞ」


「え?何がですか?」


「結局はセリムが今後どうするかは伯爵になる選択肢しかなかったし、ロキは頼んでないのに男爵だったからな」


全力で王国に取り込もうとした国王であるというパメラである。


(そうそう、セリムの名前変わってるかな?おお!セリム=フォン=ウガルになってる。ロキもロキ=フォン=グライゼルになってるな。たしかフォンが付くのは男爵以上からだっけ。あれ?でもパメラとソドンはヴァンが付いたままだな。獣王国は何か違うのか?)


タブレットを使い、セリムが無事に家を継いだことを確認するおっさんである。

そして、奴隷商で発見したころからパメラとソドンが、名もヴァンもついていたことを思い出すのだ。


「まあ、そうですが、いいじゃないですか」


おっさんは国王の考えもある程度分かっていたようだ。

無理な束縛は嫌いであるが、協力的な国王である。

権力や褒美をくれるというなら貰えばいいくらいの考えであるのだ。

また、謁見の時の話をするおっさんである。


「それにしても、パメラはジークフリート殿下とはお知り合いだったのですね」


「まあ、昔の少し会ったことがあるのだ」


「そうなんですね、仲良さそうでしたけど」


「まあ、昔のことよ」


そういって、仮面越しに悲しそうに微笑んだパメラであったのだ。

これ以上何も言いそうにないので深く聞かないおっさんであったのだ。



ここはゼルメア侯爵から館の中の借りた広間の1室である。

ゼルメア侯爵も見たいということなので見学するとのことである。

また、ウガル元伯爵も見学を希望されたのでゼルメア侯爵と共に見学をする。


15人全員が集められた中でおっさんが開始を言葉を述べるのだ。


「では、これよりダンジョン攻略の報酬を皆様にお渡ししたいと思います」


「「「はい」」」


「予めいっておきますが、私の独断と偏見で決めましたので、若干の不公平感もあるかもしれません。ここは広い心で呑み込んでください」


「「「はい」」」


「では、仲間になった順番に呼んでいきます。イリーナ=クルーガー」


「うむ」


「イリーナは本人の希望もあり、オリハルコンの剣と父上に渡すオリハルコンの槍、そして白金貨100枚です」


仰々しくいただくイリーナである。

普段使っていたオリハルコンの武器も褒美として渡してほしいとのことなので、もう一度、改めて渡すおっさんである。

父上に家宝として槍を送りたいと言っていたのでダンジョンからでた5本の槍のうち残っていた1本を実家に上げたいという希望があったのだ。


「次に、ロキ=フォン=グライゼル」


「はい!」


「男爵おめでとうございます。ロキはオリハルコンの槍と白金貨1000枚です。これは男爵への新任祝いも含まれています。また、ロキのおかげで封土をいただけそうです。騎士団結成時には騎士団長も任せますのでそのつもりでいてください」


「畏まりました。ヤマダ家を盛り立ててまいります」


かなり仰々しく受け取るロキである。


「コルネ」


「はい!」


「コルネ、あなたを準男爵にします。またヤマダ家の騎士とします。そして、魔導弓と白金貨300枚です」


「ありがとうございます!」


満面の笑みのコルネである。

コルネからはヤマダ家と共に今後も歩みたいという強い希望もあり、ヤマダ家の騎士にすることにしたのだ。


「セリム=フォン=ウガル、伯爵おめでとうございます。セリムはオリハルコンのレイピアと白金貨1000枚です。これは伯爵への新任祝いも含まれます」


「いいのか?ありがと」


思いのほか多い白金貨に驚くセリムである。


また、同じく拠点の仲間になったセリム母には白金貨300枚が渡されたのだ。

ウガル元伯爵に確認したところ、セリム母もウガル家に戻ることになったのだ。

当然といえば当然であるのだ。

これから、ダンジョン部門で働いていたウガル元伯爵はそちらも引退し、セリム母はウガルダンジョン都市に戻ることになる。

ウガル元伯爵とセリム母はおっさんの結婚式が終わるまで王都に滞在するとのことである。


「パメラはオリハルコンのナックルと白金貨500枚です」


「うむ、ありがたく頂戴する」


「ソドンはオリハルコンの盾2つ、オリハルコンのハルバート、そして白金貨100枚です」


「う、うむ。ありがたく頂戴する」


普通に受け取るパメラと遠慮気味に受け取るソドンである。

パメラは今後の活動資金としてお金が要るかもしれないので少し色を付けた形だ。


「次に私の従者のアヒム=ペリオ」


「はい!」


「アヒム、あなたを準男爵に…」


「きゃああああああ!!!」


アヒムの彼女が喜びのあまり絶叫する。

皆がアヒムの彼女に視線が集まる。

すいませんと謝るアヒム彼女とアヒムである。


「うほん、アヒムは準男爵にします。またヤマダ家の騎士とします。そして、オリハルコンの槍と白金貨300枚です。結婚式にも呼んでください」


「今後も仕えてまいります」


仰々しくアヒムに受け取られる。

なお、最終日に拠点メンバーに加入したアヒム彼女は白金貨100枚である。

結婚祝いとして渡したのである。


「次にイグニル=ファスター、イグニルも準男爵にします。またヤマダ家の騎士とします。そして、オリハルコンの槍と白金貨300枚です。イグニルも結婚式にも呼んでください」


「必ずお呼びします」


仰々しく受け取るイグニルである。

なお、イグニルの彼女のパン屋の娘ヘマは白金貨300枚である。


「チェプト=グラマンシュ、チェプトは今後、見習いを外し、ヤマダ子爵家の家宰とします。また準男爵とし白金貨は300枚です。今後もヤマダ家をお願いします」


「あ、ありがとうございます」


家宰になる夢が叶い、涙ぐみながらお礼を言われるチェプトである。


「アリッサ=ロンド、アリッサは準男爵にします。またヤマダ家の騎士とします。そして、オリハルコンの槍と白金貨300枚です」


「はい!」


満面の笑顔で答えるアリッサである。

希望により侍女から騎士になったのだ。


「メイ=ブランカ、メイは準男爵にします。また、メイド長にします。そして、白金貨300枚です。チェプトとともにヤマダ家を支えてください」


「わ、わかりました」


イリーナ:オリハルコンの剣、オリハルコンの槍、白金貨100枚

ロキ:男爵、騎士団長、オリハルコンの槍、白金貨1000枚

コルネ:準男爵、騎士、魔導弓、白金貨300枚

セリム:伯爵、オリハルコンのレイピア、白金貨1000枚

セリム母:白金貨300枚

パメラ:オリハルコンのナックル、白金貨500枚

ソドン:オリハルコンの盾2つ、オリハルコンのハルバート、白金貨100枚

アヒム:準男爵、騎士、オリハルコンの槍、白金貨300枚

アヒム彼女:白金貨100枚

イグニル:準男爵、騎士、オリハルコンの槍、白金貨300枚

ヘマ:白金貨300枚

チェプト:準男爵、家宰、白金貨300枚

アリッサ:準男爵、騎士、オリハルコンの槍、白金貨300枚

メイ:準男爵、メイド長、白金貨300枚


ロキが男爵にならなければ、ロキを準男爵にして、従者達は差を設けて士爵にしようと思っていたおっさんである。

なお、コルネについては、どっちにしても準男爵にしようと思っていた。


褒美に白金貨は計5200枚つかった。

なお、王家には白金貨5000枚、オリハルコンの剣と盾を各1個納める予定である。

これは、ダンジョン攻略の協力してくれたこと。

おっさんとイリーナの結婚式を主催してくれること。

また、ロキが王国最強の騎士である旨の王国全土への周知。

そしてセリムの物語の拡散協力も含まれているのだ。

その結果、チェプトが管理するヤマダ子爵家の資産は白金貨16800枚ほどである。


従者や侍女は家を継げない嫡男ではない士爵の子供が多い。

おっさんの従者や侍女もそうである。

今回、従者や侍女を準男爵にしたので、新しい名前になると思っていたが、ここまで成功すると基本的に、成功した人が本家として名を継ぐ。

士爵家は成功した本家にぶら下がるので、よっぽど御家と仲が悪いとかそういうことでなければ、名前は変更しないということをおっさんは後から知るのである。


コルネは新たに名前(家名)をつけることができるが、すぐには思いつかないので考えるとのことである。


昼過ぎに行われた、報酬も無事終わったのだ。

今日はこれから王家に呼ばれて食事を取るのだ。


「イリーナ、ドレス着るのですね」


「うむ、ゼルメア侯爵の好意で借りたのだ」


ドレス姿のイリーナに見惚れるおっさん。

それに気づいて、ふりふりポーズをとるイリーナである。

1年間ずっと寝食を共にしたおっさんとイリーナである。

随分仲が良くなったようだ。

なお、パメラもドレスである。

なんか仮面舞踏会みたいだなと思ったおっさんであった。


パメラのことをフェステル伯爵やゼルメア侯爵から聞かれたが、答えられない旨伝えたおっさんである。


時間になったので馬車に乗るおっさんらである。


「物語完成したぞ!」


馬車の中でセリムの物語を読むおっさん。


「とうとう物語も完成しましたね。国王との食事会ですので、せっかくなので渡してしまいましょう」


「うん」


セリムの思い出の詰まった物語である。

おっさんもダンジョン攻略中の休憩中に何度も読んだセリムの物語である。


「表題はやはり『召喚士セリムの物語』ですね」


「なんか恥ずかしいな」


「これからたくさんの召喚士の卵が読む、始まりの召喚士であるセリムの物語ですからね」


おっさんは王家に渡す最後にもう一度最初から読み直すようだ。

10歳の子供が読む本である。

そんなに厚い本ではないのですぐ読み終えるのだ。

最後の文章を読む。


「どうだ?」


「素晴らしいです。最後は追い出された家を許す終わり方にしたのですね」


物語の最後に、謁見の広場で謝る貴族の当主を許すセリムの様子が描かれていたのだ。


「何が素晴らしいだよ!じゃあ許したほうがいいって言ってくれよ!」


セリム的に答えをどうするかかなり迷ったようだ。


「いえいえ、そこはご自身で決めてほしかったので、あえて何も言いませんでした。ってん?」


セリムの成長を期待したおっさんであったのだ。

本の終わりに気になる文言を発見するおっさんである。


「ん?どうしたんだ?」


「これは、この本で終わらないのですか?」


「当り前だろ、これから獣王国に行くんだろ?俺を置いていくのか?」


「いえいえ、もちろん一緒に行きましょう」


本の終わりにはこう書かれていたのだ。


『召喚士セリムの物語 ウガルダンジョン攻略編 完結』


おっさんのウガルダンジョンの攻略編も終わったのであった。

これから結婚式に獣王国へと新たな物語が始まろうとしているのだ。

そして、王国を超えたブログネタ収集も始まろうとしているのであった。


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