第63話 報告
ダンジョン攻略し、ダンジョンコアをダンジョンから持って帰った翌日の朝である。
昨日は、壇上でおっさんが一言いった後、ダンジョンコアは壇上に置いてきたのだ。
その後、ダンジョンの番人について、ある程度の説明を代官リトメルにし、騎士達の遺品を台車ごと渡してきたのだ。
どのように扱うか、ウガル家に任せるのだ。
セリムが短剣も渡そうとしたので、止めたおっさんである。
誰に渡すか分かるだろとそういうことである。
不祥不詳ながら了承したセリムであった。
昨日は夜遅かったので拠点で軽く食事をして、これからのことは明日ということにしたのだ。
14人が全員朝食を取るのだ。
ダンジョンコアを取りに行く道すがら、もしくはダンジョンコアをワープゲートまで持っていく道中に言う話ではないと思っていた話を皆にするおっさんである。
「まずは、改めて言います。ダンジョンの番人との闘いでは、私が気を失ったせいで、危うく皆がダンジョンから帰ってこれない恐れがありました。申し訳ありませんでした」
まだ、しっかり謝罪できていないのだ。
朝食の手を動かすのをやめる皆である。
「ふむ」
「やめましょう。無事で安全な戦いと誰も思っていませんでした。覚悟の上のことです。もちろんケイタ様の力があってこそ、ダンジョン攻略できたと皆思っています」
昨晩のベッドの中で、イリーナから、おっさんが気を失っている間のことを聞いたおっさんである。
当然、一人残ろうとしたロキを責めたりはしない。
「ありがとうございます」
「そうである。ケイタ殿の功績を疑うものはここに一人もいない。この話は今後一切不要であるな」
二度と気にしないようにというソドンである。
皆頷くようだ。
「それでこれからどうするんだ、ケイタ」
「そうですね。冒険者ギルドと王家への報告でしょうか。今日はまず冒険者ギルドに行きます。ダンジョンコアの扱いとセリムの召喚術についても話をしようと思います」
「とうとう話すんだな。そうか、分かった」
召喚術についても、王都の冒険者ギルド本部に話す方が良いに決まっている。
しかし、1年近くお世話になり、活動に協力的であったウガルダンジョン都市の支部の冒険者ギルドに話をするのが筋だと思うおっさんである。
セリムが作成している物語については、まもなく完成するので、できたら見せるとのことである。
「そして、クランメンバー、そして拠点で私たちの活動を支えてくださった皆様に対する報酬を、王家と冒険者ギルドへの話が終わった後必ずお渡ししますので、少々お待ちください」
皆分かったと頷くのである。
「え?わ、わたしもですか」
メイが返事をする。
「当然です。拠点で支えてくださったおかげで、無事ダンジョンコアを手に入れることが出来ました。この14人に達成したダンジョン攻略です。ヘマさんあなたもですよ」
「あ、ありがとうございます」
「ヘマさんの父のモリソンさんとも、パンについてお話がありますので、少し時間を取っていただけたらと思います」
「パンですか?分かりました」
ダンジョンを攻略したら、売ってほしいパンがあるのだ。
冒険者ギルドの話が終わったら、パン屋に伺うとヘマに伝えるのであった。
ヘマからなぜパンなのかという顔をされる。
「あともう1つお願いというか、許可といいますか、お話があります」
「うん、なんだ?」
イリーナがおっさんのお願いに反応をする。
「今回、王家には大変お世話になりました。ウガル家の件についても、格別のご配慮をいただいたつもりです。王家にはお礼は必要と考えております」
「何を言っている。ケイタは貴族なのだ。これからの王家との付き合いも考えれば、当然のことではないのか」
当然のことだというイリーナである。
ロキもできれば、これを機にもっと王家とのつながりを持ってほしいと思うのである。
「王家については知らないが、私はナックルがあれば、報酬は適当にしてくれて構わないぞ」
パメラはオリハルコン製のナックルが気に入っているようだ。
「もちろんです。今皆さんが装備している、オリハルコンの装備は皆さんのものです」
「そ、それでは某が申し訳ないな」
2つのオリハルコンの盾と、1つのオリハルコンのハルバートを持っているソドンである。
白金貨1000枚はくだらない装備である。
オリハルコンの武器は、1つ白金貨300枚はするのだ。
「それは気にする必要ないですよ」
おっさんの一言に皆うなずくのだ。
両の大盾で必死に仲間を守ってきたソドンであるのだ。
冒険者ギルドに向かうおっさんらである。
拠点から外に出ると、兵たちと目があう。
街の英雄である、おっさんの拠点の警備中である。
10人以上でおっさん宅を囲んでいるのだ。
軽く会釈をして、馬車に乗るおっさん。
大通りを出ると、酔いつぶれた街の住人であふれているのだ。
昨晩深夜遅くに持って帰ったダンジョンコアである。
1時間もしないうちに、繁華街も商業街も住宅街も貴族街も駆け抜けたのだ。
締めかけていた店は閉店をやめ、住宅街に帰りかけていた人はダンジョンコアを見に行ったのだ。
そして、その足で繁華街に繰り出したのである。
そして、飲みあけて、飲みつぶれた街の人達である。
必死に介抱をする兵たちである。
範囲回復魔法と範囲治癒魔法を何度も展開するおっさんであったのだ。
冒険者ギルドに入るおっさんである。
静まり返る。
ダンジョンコアを持って帰った翌日である。
大体の冒険者は何をしに来たか分かるのだ。
ウサギ耳の受付嬢がすぐに寄ってくる。
「ただいま、支部長をお、お呼びします!」
慌てて支部長を呼んでしまおうとする受付嬢である。
「いえ、一冒険者です。伺いますので予定を確認してください」
「は、はい」
上の階に上がっていくウサギ耳の受付嬢である。
ほどなくして副支部長とウサギ耳の受付嬢が戻ってくる。
副支部長はおっさんが案内するようだ。
また、クランメンバーのおっさんら一行は会議室に案内する。
クランリーダーにのみ、まず話があるようである。
(ふむ、たしか疾風の銀狼もカイトさんだけが支部長と話していたな)
そういうものかと一行らを会議室に待たせて支部長室に案内されるおっさんである。
おっさん、支部長、副支部長との話し合いが行われるのだ。
「おう、よく来てくれたな」
「いえ、ダンジョン攻略の報告に伺いました」
「ありがとうよ。本当に10人で達成するなんてな。しかも1年もかけずにやってのけるなんてな」
「いえ、優秀な仲間に助けられました」
「そんな謙遜を言われると、逆に怖いぜ」
「謙遜ではないですよ。仲間の皆がいたからこそのダンジョン攻略です」
「そうか、ふむ、これからの話をしていいか?」
「お願いします」
「2つある。1つはダンジョンコアについてだ。実はダンジョンコアは、魔道具から切り離して、外に出していると、モンスターが出現しなくなるんだ」
詳しく話を聞くと、魔道具に設置してあったときに発生した、白いひらがなの泡ぶくには、ダンジョンを管理する意味があるとのことだ。
また、これは内密にという前置きがあり、王家にそれに近い魔道具の設備があり、そこにダンジョンコアを設置して管理するとのことだ。
それまでは、倒せば倒すほど、ダンジョンからモンスターがいなくなっていくということである。
「え?」
「そういうわけで、この慰霊祭が終わったらすまねえが、早めに王家にもっていってくれねえか?王家にある魔道具に設置しないとダンジョンコアは機能しねえんだ」
「そうなんですね。分かりました、慰霊祭後でいいのですか?」
「もちろんだ。慰霊祭にダンジョンコアを飾ってくれるなんて、これ以上の遺族の救済はねえよ。街を預かるギルドの1つとして改めてお礼がいいたい。本当にありがとうな」
改めて頭を下げてお礼を言う支部長である。
「いえいえ、そうとも知らずに。早めに王家に持っていきます」
「もう1つは、冒険者ギルドからの報酬についてだ」
「はい」
「今回の報酬について、当然精査はこれからだ。昨日の今日の話だからな。しかし、60階到達以降、クランアフェリエイターとケイタの精査は当然してきた。正直な話、70階到達と、そこまでの講習会の功績で、クランとケイタのAランクの推薦は完結し、王家には送ってんだ」
冒険者からも、街の人達からもなぜBランククランなのかBランク冒険者なのかという、強い申告を受け続けた冒険者ギルドであった。
申告に耐えかねて、最初は冒険者ランクも掲示していたが、クラン名と名前のみに変更をした冒険者ギルドである。
申告に対して、おっさんら一行がダンジョンの攻略の途中であるからと回答をしていたのであった。
「そうだったんですね」
「これもここだけの話にしてほしいんだが、王家から既に了承済みよ。国王との約束の1年経ったら、王家は呼び出して、Aランクにする予定だったわけよ」
(支部長は全体的に口が軽いのかな。おれポーカーフェイス苦手だから、話す内容選んでほしいぞ。顔に出ちゃうぜ。始末書書かせちゃうぞ)
「そうだったんですね」
「そのうえでな、99階層までの話は講習会で話が聞けているからな。70階層以降の報酬の精査にも必要だからよ、100階層のダンジョンコアの番人の話を聞かせてくれねえか」
「分かりました」
ダンジョンコアの番人の話をするおっさんである。
アレクがダンジョンコアに取り込まれていた話。
2000人の騎士もアレクと共にいた話。
アレクとともに冒険者をしていたという話の50人の冒険者もいた話をするおっさんである。
その時あった遺品等はウガル家に渡したところまで話をするのであった。
遺品の中にはダンジョン攻略の記録もあるかもしれないという話もするのだ
支部長は途中から目をつぶって話を聞くのだ。
副支部長は必死にメモを取っている。
おっさんが行ってきた講習会では、冒険者ギルド職員は数名体制で講習会の記録を取っていたのだ。
特に後半以降、おっさん側の説明者も増えて、1人につき職員も1人の記録体勢であったのだ。
今はここに3人しかないので副支部長が記録を取っているのだ。
「そうか、いやダンジョンに有能な冒険者が取り込まれたという話は、なくはないんだな。アレクが取り込まれてしまっていたか。それにしても2000人を超える状況で、10人で戦って倒したってことだろ。これはAランクでいいのかという話になってきてしまうな」
1国で上げられる最高ランクはAランクである。
Sランクを取るためには3か国の推薦が必要であるのだ。
支部長へのダンジョンコアの話が一段落ついたので、おっさんが話を切り出すのだ。
「実は、私からもまだ報告をしていない話があるのです」
「うん?」
「セリムについてです」
召喚士と召喚獣について話をするおっさんである。
52階層で魔法書を発見し新たな才能に目覚めたという話だ。
「そ、それは本当か」
副支部長もメモを取るのか迷っているようだ。
おっさんを凝視するのである。
「もちろん、本当です。召喚士であるセリムの力なくしてこの攻略はありませんでした。ダンジョン攻略のための出口の発見もしていただきました。最後にアレクさんを倒して、ダンジョンの呪縛から解放したのもセリムです」
断言するおっさんである。
「そこまでの力なのか?」
「はい、もちろんです。この部屋の広さならCランクのモンスターの召喚も可能かと思いますので、一度ご自身で見てみてはいかがでしょうか?」
「そうだな。見てみねえとな。何とも言えねえな」
支部長、副支部長、そしておっさんら一行も参加し、召喚士セリムの力を見せることにする。
場所は会議室に移し、広さ的にDランクやCランクのモンスターを召喚し、指示するのであった。
その後、セリムの活躍や召喚士については、物語にした本を王家と冒険者ギルドに提供する用意がある旨話をしたのだ。
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