第17話 旅立ち
フェステル子爵一行が街に戻ってきてから3日が過ぎた。
おっさんらは朝8時過ぎにフェステル家の館にいた。
これから南門に向かうのである。
フェステル家一同が皆で旅立ちのために、みんな館からでて見送ってくれているのだ。
「ではいってきます」
「うむ、吉報を待つが無理するでないぞ」
「はい、大変お世話になりました」
「何を言っている。今生の別れではないぞ。また1年後だな。1年後王都に直接いくのか、フェステルの街にいったん戻るのかは手紙で早めに教えてくれたまへ」
「はい」
おっさんら一行は馬車に乗り込んでいく。
クルーガー男爵家仕えの従者3名と侍女2名もこの旅に参加するのである。
一行には貴族がおり、旅中の対応や、王都やフェステルの街への連絡が必要な場合の人員もいるであろうという配慮からであった。
フェステル子爵家の家紋のある中型の馬車を2台貸してくれたのである。
見送られながら、馬車は南門へ目指していく。
「待ってますかね?」
「コルネさんのことですか?いるでしょう。強い決意の目でしたよ」
そういう会話をしながら、南門が見えてくる。
南門には少女が弓を持ち、馬車で待っているようだ。
「コルネさんお待たせしました」
「いいえ!」
「では、前の馬車に乗ってください」
おっさんもさすがにこれ以上の押し問答はしないようだ。
おっさん、イリーナ、ロキのいる前の馬車をコルネに進める。
コルネが乗り込んだ後、馬車は門を抜けウガルダンジョン都市に向かって進んで行く。
「コルネさん」
おっさんはコルネにおもむろに話しかける。
「はい」
「実はコルネさんに話しておかなくてはいけないことがございます」
「え?なんでしょう」
「この話はできれば他の人に話していただきたくないのですが、大丈夫でしょうか?」
「え?はい。誰にもお話しません!」
おっさんはコルネにイリーナやロキに話した程度の話をしていく。
『仲間』の設定をする前に、状況の説明がしたかったのだ。
説明責任を果たしたかったようだ。
「すごいです!やはり魔導士様はすごい方だったのですね!」
キラキラした目で見られるおっさんである。
過去にないほどの好意の視線で見られ、軽く引いている。
「そ、そういうわけで仲間にこれから設定するのですが、解除する方法がかなり厳しい条件なんです。よろしいですね?」
「はい!お願いします!」
タブレットの『仲間』機能のアイコンをタップする。
仲間にする画面に操作を進めていく。
『近くにいる人を仲間にする』をタップすると、3日前と同じ名前が表示される。
『近くに仲間にできる人がいます。誰を仲間にしますか?』
『コルネ』
『コルネ』をタップする。
『コルネを仲間にしました』とタブレットに表示される。
「これでなか」
「本当です!銀の板が見えます!」
くい気味で反応するコルネである。
「皆さん基本的にステータス、えっと強さの公開は仲間を組むうえで基本と考えています。4人の中で強さは共有します」
「うむ、そうだな」
「了解です」
「分かりました」
NAME:イリーナ=クルーガー
Lv:12
AGE:20
HP:260/260
MP:0/0
STR:166
VIT:98
DEX:74
INT:0
LUC:98
アクティブ:剣術【2】
パッシブ:礼儀【2】
EXP:3200
NAME:ロキ=グライゼル
Lv:15
AGE:30
HP:292/292
MP:0/0
STR:184
VIT:92
DEX:117
INT:0
LUC:92
アクティブ:剣術【2】、槍術【2】
パッシブ:礼儀【1】
EXP:12800
NAME:コルネ
Lv:15
AGE:16
HP:292/292
MP:0/0
STR:138
VIT:102
DEX:138
INT:0
LUC:86
アクティブ:弓術【2】
パッシブ:鷹の目【1】
EXP:31850
「私が一番レベル低いな…」
ステータスを見てイリーナが呟く。
戦闘に直接参加しない指揮官役であったイリーナは一番低いのだ。
1カ月弱大森林の要塞で作業狩りしていたコルネが、一番レベルが高いのである。
「レベルについてはあまり気にしないでください。基本的に高レベルになると並ぶものなので3万の差は誤差にもならないと思います。私のレベル差も誤差の範囲内です。きっと皆さん追いつきます」
「そ、そういうものなのか?」
「はい、もちろんです。レベルを上げつつ下層を目指していきましょう」
「えっと、ケイタ様のステータスがレベル以外にもすごいことになっていますね。スキルっていうものですか?」
「そうですね。これは私の日々の神への信奉の対価なのです。ちょっとスキルは与えられませんが、戦闘中のサポートするスキルを取得して皆さんもスキルを持った状態に近くできるかもしれません」
(ふむ、みんなはどうやってスキルを獲得するのかな。見た感じだと日々の長い修練でスキルが生えてくる感じなのかな。そしてスキルは少しずつ、使っていると成長していくと。あと最近のゲームだと魔力値が騎士とかでも少しはあったりするんだけど、この辺は厳格に0だな)
「なるほど、ステータスを強化して戦闘が楽になるってことですね」
「そうです」
理解が早いロキである。
「1つ気になったことがあるのですが、イリーナやロキさんは騎士の家系なんですよね?」
「うむ、そうだな」
「ステータスも騎士っぽいですよね。騎士の家系だからなのかなってことかな。騎士の家系に魔法使いが生れることってあるんですか?」
「あるぞ、魔法使いの家系の方が、魔法使いが生まれやすいとも言われているけどな。まあ、これは、貴族の家系の中に魔法使いも多いからともいわれているぞ」
「そうなんですね。コルネさんも猟師の家系だから猟師っぽいステータスなのかなって思いました。騎士の家系で騎士っぽくないステータスだと大変ですね」
「うむ、まあそうだな、厳格な家系だと、あまり騎士として不向きだと後継者になれないって話はよく聞くな」
「なるほど、貴族の家系も大変ですね」
【ブログネタメモ帳】
・貴族とステータスの関係
(お、久々に新しいブログネタがあったぞ。もう少し内容を深堀したいな)
「うん?なんだ?私たちの子供の心配をしているのか?私は騎士でも魔法使いでもどっちの子供が生まれてもいいぞ?」
「ちょ?!そういうわけじゃないですよ。なんとなく気になっただけです!」
(く、なんか変な話になってしまったぞ…。もう少し話聞きたかったのに…)
動揺するおっさんである。
婚約の件をまだ聞いていないコルネが2人の会話を聞いて顔を赤くする。
「あの、私も1つ気になっていることがあるのですが…」
「ロキさん何でしょう?」
「その、私はイリーナ様に仕えているのですが、将来的にケイタ様にも仕える予定です。敬語で話されるのはちょっと…」
ロキはずっと思っていたことを口にする。
「私もコルネでいいと思います」
コルネもかぶせるようにおっさんにため口で話してほしいという。
「うむ、そうだな、この仲間のリーダーはケイタなのだ。その方がよかろう」
「え?そうですね…。では、そのうち変えていきます」
おっさんも仲間の意見に、現実世界ではタメ語で、職場で話すことがないので若干苦手であるが、渋々同意するのであった。
「そうだな、リーダーで思い出しのだが、私も冒険者ギルドに入ろうと思っているぞ。私だけ冒険者ではないからな。ダンジョン都市についたら申請だな」
「いいですね、じゃあクランもせっかくなので作っちゃいましょうか。クラン名決めないといけないですね」
「そうだな。せっかくなのでケイタが決めるといいぞ。このクランのリーダーなのだからな」
「じゃあ、道中考えておきますね」
【ブログネタメモ帳】
・クラン結成してみた ~~〇〇団~~←考えておくこと
(お、ブログのネタが増えたぞ。道中がんがんブログネタ貯めていくぜ!)
そんな話をしながら馬車は進んでいくのである。
そして10日が過ぎたのである。
そこには険しい顔をしてタブレットを見るおっさんがいた。
「おい、あまり気負うことはないんだぞ」
たまらずイリーナがおっさんに声をかける。
「いえ大丈夫です」
「あまり大丈夫そうではないぞ…」
(まさか10日間、ブログネタがまさかの0だとは思わなかったぞ…。これは予定がだいぶ狂ったな。取らないといけないスキル多いのに…。旅は王都に向かうときにやってるしな。飛竜的なイベント起きなかったな…)
「ケイタ様、何かあればご用命くださいね」
ロキも心配して声をかける。
(む、ロキが何かしてくれるって言ってくれてるぞ。今度はロキが検問で引っかかってくれないかな…。俺はもう引っかかったしな。今思うとフェステルの街の検問って結構おいしかったのか)
テレビでひどい目にあっておいしいと思う芸人のような考えに至るおっさんであった。
(これは何か自分らで企画をやらないといけないな。別に受動的に発生したイベントばかりがブログネタじゃないんだしな。例えば、ウガルダンジョン都市で、全力で鬼ごっこしてみた。逃げるロキを鬼のみんなが探すと。1日やって逃げきったらロキに白金貨1枚。捕まえた人がいたらその人に白金貨1枚とか盛り上がるかな?)
【企画ネタメモ帳】
・ウガルダンジョンで全力鬼ごっごしてみた ~ロキは何処~
皆の心配をよそにブログのネタを必死に考えるおっさんである。
「お、城壁が見えてきたぞ」
「ほ、本当です」
イリーナとコルネがウガルダンジョン都市の城壁に気付く。
「さすがに結構大きいですね。王都の半分くらいですか?」
「ふむ、私も詳しいことは知らないのだが、伯爵領都だからな。子爵領都の倍以上の規模なのは間違いないな」
(ダンジョンによって潤ってる都市か。ダンジョンは街中にあるのかな)
そんなことを考えながら、入口の列に並ぶ。
貴族なので順番が回ってくるのも早いのである。
検問の兵に対して検問に引っかかることを期待して全力で凝視するおっさん。
「フェステル子爵領都からよくぞお越しくださいました」
フェステル家の家紋に気付きおっさんに挨拶をする兵である。
そして、証も見せることなく、中に入ることが許されるのだ。
(え?何のイベントも起きなかった…)
子爵家の紋章があるため、すんなり入るおっさんら一行である。
おっさんらによるダンジョン攻略が始まろうとしてるのであった。
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