二十冊目
「まずは地形を変える。
「これでダウンなんてすんなよ」
その言葉に嫌な予感が頭を過り、僕は勢いよく跳ぶ。
すると、今までいた場所に突如爆発が起こる。
空中で破片を弾きながら降下。
この爆風の中では風で身を守る事は出来ないだろう。
出来て精々、着地時に衝撃を殺す程度だ。
着地後、体制を崩さずに羽団扇を構える。
「いい勘してるじゃねえか坊主。
「だが後ろに下がってれば爆発が目隠しになる。
「初めて一ヶ月の坊主にそこまで求めるのは酷だろうが覚えとけ、損はしねえ」
言うと荒木寺さんは再び僕に手を向ける。
二度目の爆発に警戒すると、荒木寺さんは僕に向かい、足元に転がる床の破片を蹴り飛ばす。
爆発に警戒し過ぎたせいで少し反応が遅れたが、余裕を持って避ける。
しかし突然、背中に焼ける様な痛みと衝撃が駆け巡る。
爆発に意識を向けさせてからの、突然の目潰しを狙った攻撃。
その攻撃のほんの僅かに遅れた回避行動を事前に察知して本命の爆発を的中させる。
物の準備で見た目と性格のギャップには気づいたが、それと全く同じギャップを戦闘面でも味わうとは。
九尾苑さんとは違う戦闘スタイル。
学ぶ事は多そうだ。
そんな事を考えていられるのも束の間、小爆発を避けながら荒木寺さんに向かい駆ける。
駆けて、駆けて、駆けて、駆けて、突如目の前に壁が現れる。
いきなり止まる事は出来ない。
左右どちらかに回避、壁を破壊、壁を飛び越える。
三つの選択肢から、まず左右どちらかに回避を抹消する。
突然生えた壁だ。
瞬時に横に広がりゆく手を拒まれる可能性が決して目を逸らせない確率で存在する
飛び越えるのも同じ理由で却下だ。
ならば答えは決まりだ。
壁を破壊して進もう。
この思考を一秒以下で済まし、壁を壊す為に羽団扇に風を纏わせる。
しかしこれは無駄な思考だったのかもしれない。
何故なら次の瞬間、壁を壊したのは僕の攻撃ではなく、荒木寺さんの拳だったのだから。
壁を貫通して尚止まらない拳が僕の顔面にクリーンヒットする。
「答えは四つ目、一度下がるだ。
「お前の考え程度お見通しだ馬鹿野郎」
拳についた石の破片を吹いて飛ばしながら荒木寺さんは言った。
「まあ、咄嗟に後ろに飛びダメージを減らした事は褒めてやろう。
「飛ばされて、壁に激突と同時に自分と壁との間に風を発生させ、俺にバレない様更にダメージを偽装した事もな」
「それはバレなかった時に初めて言ってくださいよ」
「バレなかったら言えねえだろ」
その通りだ。
だからこそ褒めてもらおう。
この気づかれずに行った背後からの風による投石を。
瞬間、荒木寺さんの首元で小さな爆発が起こる。
「馬鹿か、視界外からの攻撃なんていつでも警戒してるに決まってるだろ」
投石が荒木寺さんに当たる事は無く、爆発により砕け落ちる。
正直、一ヶ月の訓練程度で今まで何年も戦い続けてきた猛者に勝てるつもりは無かったが一撃も入れられないのは正直予想外だ。
「そんなんじゃ晴海には勝てねえぞ、頭使って戦え」
聞いたことのない名が聞こえた気がするが今はそちらに意識を向けている暇は無い。
爆発三つからの投石、それらを避ければその先には石の壁が現れる。
石の壁を切り、その先から飛び出る拳を回避。
「終わりだ、坊主」
瞬間、僕が切って一秒未満、未だ宙からの落下中である石壁の破片に変化が現れる。
「縛方、
突如破片から杭の様な物が伸び柵のの様に床に突き刺さる。
「抜け出せるもんなら出てみろ、まあ無理だろうけどよ」
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