第18話 初依頼、初報酬

「じゃあ、話を戻すとしようか。陛下からお願いされたのは3つ。1つ目は依頼を優先的にまわすこと。2つ目はもし邪魔をするようなやからが現れたら容赦なくペナルティを課すこと。3つ目は1番の目的でもある闇ギルドの殲滅依頼の時にリーダーとして指名すること。この3つだね」


「ペナルティとは、例えばどんなことをするのでしょうか」


「ギルドから追放させるよ。あとランクも剥奪させて、ギルドのブラックリストに追加させてもらう」


「…えげつないですね」


「このぐらいは当然の処置だよ」


「まあ、はい。だいたい分かりました。じゃあ登録の続きに関してなんですけど...」


「それならもう済ませてあるよ。君は特別にDランクから始めてもらうよ」


「周りが納得しないと思います」


「大丈夫。もう言ってあるし、ちゃんと警告もしたから」


「なんでもありですね」


「ここは僕の庭だからね。はい、これが君のギルドカードだよ」


そう言うと、石製のカードを貰った。前にランクがあると言ったがそのランクによってギルドカードの素材が変わってくる。GとFは木製、EとDは石製、Cが鉄製、Bが銅製、Aが銀製、Sが金製だ。S3からS1まで全部金で作られるが更にその上のS0はなんとミスリルを使うそうだ。


「さて、今日かられっきとした冒険者だ。どうする?すぐに終わる依頼もあるけど今日はやめとくかい?」


「……まだ時間はありそうですし、受けます。でも家に帰る時間には間に合うものを選んで欲しいです」


「セリア、いいのはあるかい?」


「ならば薬草採取はいかがでしょうか。これは何本採ってきて頂いても依頼成功になりますし、時間調整もしやすいと思いますが」


「だそうだが?」


「それは、近場で採れるものですかね」


「ええ、基本は。特殊な薬草でしたり、とても貴重なものは深い所まで行かなきゃダメかも知れませんが」


「……なるほど、分かりました。それを受けます」


「分かりました。ではギルドカードを」


「何をするんですか?」


「依頼の受注や完了の手続きもギルドカードで行います。ギルドカードはとても重要なものになりますから、無くさないようご注意して下さい」


「へぇ〜、魔法が組み込まれてるのか。面白いな」


ギルドカードを出すと、なにやらセリアさんもカードを取り出してきた。そして、重ねる。


「それは?」


「ギルドカードの職員版だと思っていただけたら。ただし、違うのは職員のカードは全て共通していて、誰がいても依頼完了手続きができます」


「これを、発明した人はかなりの天才なんだろうね」


「ええ、王国史上一の技術者の発明ですから」


「セリアさん、いろいろ教えてくれてありがとうございました。それと、エフォートさんも協力ありがとうございます。これからよろしくお願いします」


「そんなにかしこまらなくてもいいよ。冒険者はみんなタメ口だし、君もそうすればいい」


「そうですか、なら遠慮なく。これからよろしく、エフォート、セリアさん」


「うん、いいね。そっちの方がいいよ」


「ありがとう。じゃあ早速行ってくるよ」


◇ ◇ ◇


僕は今、王都から少し離れた所にあるグランデ大森林というとこに来ている。本来だったらここに着く頃には帰る時間になっているがそこはチートな俺だ、数分でついた。


「薬草だったら何でもいいと言われたから毒に効く薬草とかでも何でもありだよね。大賢者、周りにある薬草、どんな薬草でもいい。探して頭に流してくれ」


──もう済んでありますよ。結構いろんなとこに生えてますけど、群生地に行った方が効率的かつ大量に採れると思いますけど──


「そこで頼む」


──了解しました!──


それからいろんな薬草の群生地を見つけ次第とんでいき、集めに集めまくった。結果...


「いや、どーやったらこんな短時間でこんな量のしかもいろんな種類のものを集められるんですか!?」


「群生地を見つけたから3割程残して集めてたらいつのまにかこうなってた」


「群生地見つけるだけでこんな量集めれたら苦労しませんよ。1つ見つけるだけでも運がいいのに、何個も見つけるなんて...、これでCランク昇格試験を受けるための貢献度は十分ですし、アリエルさんなら大丈夫でしょうね」


「エルでいいよ。いろいろお世話になりそうだし。それより、Cランク昇格試験ってどんなことをするの?」


「それは私が説明しましょう」


「副ギルドマスター!」


「セリアさん」


「Cランク昇格試験では盗賊などの討伐です。この試験では、人に対して躊躇せずに刃を向けられるかを見定めるものでもあり、かつ実力が足りているのかを判定するものです」


「……それだけですか?」


「はい、それだけです」


「それなら明日にも受けられますかね?」


「はい。ちょうど人数も揃っていますし、行えると思います」


「人数?もしかして、ソロじゃなくて臨時パーティを組むことになるんですか?」


「そうですね。毎回、Cランク昇格試験では複数人と臨時パーティとして組み、盗賊討伐をしてもらいます」


「なるほど、分かりました。ありがとうございます。では、明日また来ますね」


「え、エルさん。報酬がまだ...」


「あ、忘れてた」


「これが今日、エル様が持ってこられた薬草ですか。こんな短時間で...、ただ強いだけではないということですか」


「何か言いました?」


「いえ、何でもありません。ほら、ミラは急いで持ってきなさい」


「ミラって言うんですね」


「あっ、じ、自己紹介が遅れました!冒険者ギルド王都支部の受付嬢をしております、ミラと申します!今後ともよろしくお願いします!」


「よろしく、ミラさん」


するとダッシュでその場を去り、1分も経たずに帰ってきた。


「こちらが今回の報酬になります!えー、合計が金貨1枚と銀貨8枚、銅貨が5枚になります!」


「えっ!?こんなに貰っていいの!?」


「はい!今回持って来てくださった薬草は全て質がよく、それでいてこの量ですからこのくらいが妥当です!」


「あ、ありがとう...」


こうしてまた、後に語られる伝説の1つを創ったエルであった。

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