第206話 女神、短編直したー

 どですかでん?


「いいよ。プロットみたいな簡単な問題じゃないけど、人間のしでかした過去をえぐってて」


 えーきちさんに見てもらって、お直ししたんです。


「いや、全部なおして」


 ええ!?!? もうコバルト短編新人賞に出しちゃったんですよう。


「ちゃんとわたしたちのオミソをつかってよ」


 オミソ? って?


「むぅ。そこかあ」


 いや、ほんとうに。


「とにかく、もう出したの?」


 はい。


「だめだったら?」


 書き直す。


「だったら、今から書き直せばいい」


 そんなにだめだった?


「うん。人々が弱い生き物で、みうきえりさが強いみたい」


 えっと?


「みうきえりさ。あぁ~、おまえのことか」


 はあ。。


「なんでもない」


 はい。。


「なに言ってんの、こいつって感じだよ。どっかいけよ」


 そんなに……?


「はい」


 主題は戦争反対なんですけれど。


「もっともだけど、もう一回書き直せばいつかわかる」


 いつかは今ではないんですか?


「ない」


 えぇ~?


「ものすごい、不満。不満足」


 どこがだめ?


「トリックは聞いた通りだけど、どんどん話がわかんなくなっちゃうからね」


 しゅん;;


「とにかく、キレイに書きすぎ!」


 え? なにがキレイ?


「形になってない。自分だけがまともな話ができている。戦争ってそんなんじゃない」


 うーむ。


「早く書き直せばいいのにな~」


 ぜんぶ?


「ぜんぶ」


 プロットから?


「残念ながら。プロットの必要がない」


 モチベーションが消えちゃうよー。


「モチベーションかあ。モチベーションねえ。あれ? モチベーションがないと書けないの?」


 学校終わって疲れてるのに、モチベもなかったらなにを書けと……。


「ずっるーい。学校のせいにするの?」


 終わったから、疲れてるのです!


「だめねえ。いっそ変化あれば……だめだ、ストレスになっちゃうもんねえ?」


 建設的な意見を聴きたいですよ。


「だめ。自分で考えなさい」


 じゃあ、このままで。


「つかめたろ?」


 ?


「それがプライドなんだよ」


 プライド……ポテト?


「なんでボケるの!?」


 あなたの意見ではわたくしの心は動かなかった、ということなんです。


「うんうん。じゃあ、動いたら?」


 書き直してた。


「だったら、こう言おう。初恋は書いた?」


 ヒロインは5歳ですが?


「年齢についてはおいておき。今の自分に書けるのは? 幼稚園の頃のオマエ」


 保育園でした。


「保育園か。間違えちった。ごめん。保育園の頃のおまえは、恋をしなかった?」


 しましたね。


「コロコロ変えるなあ」


 好きな子、いましたもん。


「じゃあそれを書けよ」


 え? 問題なのそこ?


「そう。そっちだよ」


 ええ? 戦争反対と関係ある?


「あるある」


 なんで?


「戦争があったら、恋できないじゃない。そういうの書くの」


 ああ、そうかあ。

 でもなあ。


「性体験は書けない?」


 園児の性ってどうよ。


「どうって?」


 気持ち悪くないかな。


「はいはい。マセガキだったのね」


 はあ。


「はずれないように書いたら? 二度と書けねえぞ」


 マセガキの需要はありますかね。


「ない」


 だったら、今のままで。


「うん、そういう発想かな」


 しかたないですよ、実体験を描くわけにいかないんですから。


「性体験?」


 はい。


「しらばっくれんな、ばーか」


 はい?


「これから調べようかな」


 なにを?


「おまえの過去」


 そそれは困る……とでも言えと?


「言え」


 はあ。


「言えよ、ほんとに調べるぞ」


 女の子とキスした。


「なーんだ。幼稚園児。保育園児か」


 先生に引き離された。


「先生に感謝かな」


 みゅんみゅん;;


「なんで泣くの?」


 わかんない。


「わかんないから、わかんないって言ってるの?」


 はい。


「それは、そっか。ガキの頃だもんね。性別は関係ないか」


 はい。


「それがね、思春期の真っ最中だったら問題発言ね」


 みゅんみゅん;;


「でも、おそらく発達段階じゃありがちなことよ」


 そうですか?


「うん、自己判断できないじゃんか。それか自己暗示でもあったのか?」


 なんの自己暗示?


「プレッシャーか、お父様かお母様に意見されたとか」


 え? 事後?


「事後」


 ないない。


「そのあとは? ひきずったの?」


 うーん、ないねえ。


「だったらいいじゃない。ひとときの思い出よ」


 そっか。


「やれやれ」


 でも、そういうのを、この短編には書けないでしょうって話です。


「やめたら?」


 なにを?


「つくづくヤナ話」


 女神からするとイヤなんですか?


「どちかっていうと、(*ノωノ)。でも、しかたないよね。レズビアンかどうか確かめようがないし。その年齢だと」


 あ、いやー……性自認が女かどうかもあやしくて。


「了解!」


 というわけで、書けないです、ごめんなさい。

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