第70話 寝かせて、起こして

 えーきちさんの「カクヨムゆえに我あり」(エッセイ)じゃないけれど、創作のまじめな話を細々としたいんです。


「いいわよ」


 もうね、残念すぎるんです。


「ん?」


 わたくし、昨日、寝かせておいたメジロの話をしこしこ起こしてたんですよ。


「はいはい?」


 気持ちは一人前の作家です! これぞ創作の道! と思って満足してたんです。


「だから?」


 ところがですね、今日とんでもないミスに気がついたんです。


「なになに?」


 出てくる登場人物に蜘蛛がいるんですが、既存の生物じゃないんです。


「あらぁ。めちゃくちゃ書いたの?」


 そうなりますね。


「うーん。だったら、一所懸命直せば?」


 今日直したんですよ。


「ほう」


 ネットで調べて、こんな蜘蛛いるかなってググって。


「そしたら?」


 ええ、わたくしの記憶に間違いはなかった。


「ほう」


 ただし、いるのはイスラム系の世界の砂漠のみだった。


「あらあwww」


 一体どこから着想を得たのか、いまいち自信がなくなりました。


「まあ、いいじゃんって書けば?」


 いや、しょうがないから、蜘蛛の研究施設から逃げてきた蜘蛛ってことにしました。


「あははwww」


 ちなみに遺伝子をいじってあるという設定で。


「ふむ」


 卵のうというタマゴのかたまりを抱えているのだけれど、孵化した子蜘蛛に母蜘蛛が食べられる。


「いやーん」


 え、女神、共食いはだめ?


「だめー;;」


 じゃあどうしよっかな。


「そんな、ねえ……命の話するのに、共食いって」


 記憶ではそういう蜘蛛は「母の愛」というテーマにぴったりだったんですよね。


「えー」


 後生大事に育ててきた子供に喰らわれる、この皮肉じみたテイストもわたくし大好きで。


「それを読む人の気持ち!」


 いや、そのぅ。


「後味悪いの?」


 いや、その様子を見ていた妖精パックが、翼を折ってしまったメジロに自分の羽をあげることになるという、非常にセンセーショナルなシーンでして。


「あー、まともなのね」


 共食いのシーンだけをもって「悪」とされるのは心外です;;


「でもさ、どうして母の愛が蜘蛛の共食い?」


 もとから、蜘蛛って共食いする生き物ですよ?


「ええ、知ってますけど」


 自分が生きのびるために自分の脚を食べてしまうこともあるくらい、メジャーな情報です。


「だから?」


 でもね、子をもった母蜘蛛は自分のためじゃない、子孫のために身を投げ出すんですよ。


「つまり?」


 自己犠牲のうつくしさです。


「感動します」


 ほんとですかっ!


「いいでしょう。プロットにして見せてごらんなさい」


 ありがとうございます!!!

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