(6)魔石<極寒>

本日(2021/1/2)投稿1話目(1/2)


§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§




 アイやシルクから話を聞いて、極寒の因子を宿した魔石――魔石<極寒>は、戦力強化をするためにも重要なアイテムだということはわかった。

 二人の驚きようからもしかしてと思いすぐにハウスに戻ってその魔石の価値を確認してみたのだが、魔石<極寒>という名前と共に属性が何もついていない普通の魔石と比べて二倍以上の価値があった。

 今すぐに欲しいアイテムがあるわけではないので売ったわけではないのだが、今後の金策としても使えることが分かったのは大きいだろう。

 もしかすると他のプレイヤーも欲しがるかもしれないと思ったのだが、まだ売買機能を使えるプレイヤーはいないので考えても仕方ない。

 それよりは、眷属たちの進化に使えると分かっているので、そちらに回した方がいいだろう。

 そうした意味でも、掲示板で属性がある魔石の存在を公表するのはもう少し先にするつもりだ。

 別に今すぐに公表しても構わないのだが、相手に渡す手段がない以上は公表しても意味はない。

 他に売買機能が解放されたプレイヤーが出た場合には、改めて発表するのがいいだろうと考えている。

 

 プレイヤー間の情報のやり取りは保留にするのはいいとして、問題なのは作った魔石<極寒>をどういう順番で渡していくのがいいかということだ。

 今のところ品質の高い魔石を作れる時間が大体一日に一個で、魔石<極寒>もそれと同じペースで作れるようだった。

 これは、次の日に同じように作ってみて分かったことだ。

 このことからどうやら魔石に因子の属性を混ぜ込むこと自体には時間的な制約はないようで、単純に魔石を作るペースで作れることが分かった。

 

 一日一個という作成ペースが早いか遅いかはともかく、作成に時間的な制約があるとなるとそれぞれに配る順番も配慮しないといけない。

 とはいっても既に眷属たちに属性がある魔石が作れることは知られてしまっているので、素直に相談してみることにした。

 すると返ってきた答えは皆同じで、全員に配れるまで貯めてから一斉に配ってはどうかというものだった。

 領域の管理のことを考えれば一斉に配っても全員で揃って進化ができるわけではないのだが、俺から配られるのが一斉であることが重要らしい。

 

 魔石<極寒>が眷属の進化に有用だと分かったのでまずは眷属たちに配ることにしたのはいいのだが、その分シルクとクインに渡すはずだった魔石は作るのが遅くなってしまう。

 それに関して謝っておいたのだが、二人からは謝る必要などないと言われてしまった。

 こちらとしては、約束したことを破ってしまうことになるので謝ったのだが。

 その気持ちも通じているのか、二人からはやんわりと言われるだけで済んでいた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 魔石<極寒>が作れることが分かってからちょうど一週間後。

 ようやく眷属全員分の魔石を用意することができたので、全員に渡すことができた。

 その後眷属たちは、すぐにその魔石を使って進化を行っていた。

 進化に時間がかかることが周知の事実なので、いきなり全員で一斉に行うのではなくそれぞれが重ならないように順番に進化をしていった。

 その結果として、アイは賢樹氷人形、ラックは冷氷白銀梟、シルクは白銀女王蜘蛛、ルフとミアは白銀大狼、ファイは暴風氷火熊、クインは凍寒魔蜂女王という種族に進化した。

 それぞれが以前の種族に氷に関する属性がついたような種になっているので、きちんと極寒の因子の影響を得ることができたと考えていいだろう。

 できることなら横の進化だけではなく、縦の進化も起こってほしかったのだがそうそううまくはいかなかった。

 

 それに、起こったのが横の進化だったからといって、縦の進化と比べて弱い進化というわけではない。

 それぞれに氷関係の属性がついたことで、戦闘面においてもより強くなっていることは間違いない。

 もともと火の属性を持っているファイがどうなるのかだけは心配していたのだが、当人はいたって平気な様子で魔石<極寒>を使っていた。

 結果としてしっかりと混ざった進化をしたようなのだが、相反するような属性をどうやって同居させているのかは今のところよくわかっていない。

 

 半月ほどかけた眷属たちの進化も無事に終わったので、次は以前から予定していたシルクとクインによる偵察部隊用の子眷属作成となった。

 魔石自体は事前に用意しておいたので、進化を終えたシルクとクインがそれぞれ子眷属を作りだしていく。

 そんなこんながあって、新しい子眷属が誕生するまでにさらに半月ほど待つことになった。

 子眷属の作成にこれほどの時間がかかったのは、非常に珍しい。

 やはり新しく魔物を生み出せる魔物を作るとなると相応の時間と手間がかかるということだろう。

 

 それはともかく、シルクとクインによる新たな女王の誕生は無事に終わった。

 残念ながら子眷属はステータスで確認はできないので詳細はわからないが、それぞれ体に白い部分を持っていたのできちんと<極寒>の属性は持っていることはわかる。

 これから先、彼女たちに偵察部隊用の孫眷属を生み出してもらうことになる。

 そのための魔石は俺からではなく、シルクとクインを経由して渡すことにした。

 俺から直接渡してしまうと他の子眷属たちに良くない影響を与えてしまうことになる――こうシルクとクインから言われて、敢えてそうすることにした。

 さらに、いくら子眷属であっても嫉妬のような感情はあるので、俺が直接物を下賜するようなことがあるときには一言くださいとまで付け加えられてしまった。

 言われてみればその通りなので、二人からの忠言は素直に聞いておくことにした。

 

 ちなみに新しく生まれた女王の二体は、初期のシルクやクインと同じように最初から言葉を理解していた。

 基本的には彼女たちの指示はシルクやクインを通すことになるのだが、緊急性があるときには会話ができるというのは大きい。

 本当であれば意思疎通のスキルで子眷属や他の魔物を相手に会話ができるようになればいいのだが、今のところはうまくいっていない。

 あるいは限定的に使えるようになるのかもしれないが、その条件はわかっていない。

 もっとも眷属たちは俺が子眷属や準眷属を除いた魔物と会話することをあまり良しとしていないので、条件が分かったとして役立てる範囲は限定的になってしまうのだが。

 

 さらに、魔石<極寒>を作れるようになったことによる影響はこれ以外にもう一つあった。

 それが何かといえば、以前からアイが試していた新しい仲間を作るという目的がついに達成されたのだ。

 簡単に言ってしまえば、アイと同じような存在を生み出すことに成功したというわけだが、詳しく話を聞いた限りではシルクやクインが作れる子眷属とはまた違った存在らしい。

 といっても立場的には子眷属といっても差し支えないので、そこは敢えて子眷属とひとくくりにして呼ぶことにした。

 

 アイの作る子眷属はシルクやクインと違って魔力的に生み出すのではなく、きちんと材料を用意して彼女が一から手製で体なんかを用意しないといけない。

 最後のカギとして魔石を使うことになるのだが、今まで上手くいかなかったのは恐らく魔石の持つ魔力が足りなかったのだろうとのことだ。

 あとはアイ自身の作成能力も足りていなかったとか。

 アイが手ずから作らなければならないので、シルクやクインと違ってお手軽にできるというわけではないが、それでも新しい戦力になることは間違いない。

 ただ戦力といっても戦闘面で役に立てるかは微妙なところらしく、今のところは生産の面で活躍することが期待できる。

 それでもアイに変わって罠なんかを作ることができる存在がいるのは大きく、十分すぎるほどの存在になっていくのだろう。




§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る