第5章

(1)領土化の影響(前)

本日(2020/12/20)投稿2話目(2/2)


§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§




 道北地域を領土化してから数日の間は、ハウスでのんびりと過ごした。

 ゆっくりとしたかったということもあるのだが、折角一段落したのでこれまでプレイヤー間でやり取りされていた情報を纏めようと考えたのだ。

 それと売買ショップ機能が追加されたので、時間をかけて確認しておきたかったということもある。

 今回のハウス滞在は長くなる可能性があったので、眷属たちには事前に長い期間戻らない可能性があることを伝えておいた。

 長い期間というと大げさに聞こえるかもしれないが、まだまだハウスとホームの時間経過はわかっていないことが多すぎるので念のための処置だ。

 

 ――と、意気込んで準備を進めてハウスに戻ったわけだが、最初からつまずくことになる。

 折角解放されたショップ機能が、俺しか使えないという事態が判明したのだ。

 一人しか使えないショップが解放されても、ほとんど意味はない。

 運営とやり取りするのであれば元からある機能を使えばいいだけなので、他のプレイヤーがショップ機能を解放してくれないことには身動きが取れないのだ。

 

 ある意味で一番期待していたショップが利用できないことにガッカリして、あとはハウス内で数日をかけて情報収集と整理を進めた。

 これまで脳内で乱雑に覚えていた内容が、きちんとメモ帳にまとめられたことによってだいぶん見やすくなったと自負している。

 特に今のところ俺からしか情報が出ていない領土と爵位に関しては、他に情報がないこともあって一人で作業を進めるしかない。

 他の世界(プレイヤー)と齟齬があるかどうかも確認できないので、今わかっている情報を書き込むだけで終わってしまった。

 

 手に入れた因子については、使用方法なども全く分かっていないので手に入れたことだけを報告しておいた。

 そんなこんなで掲示板の過去ログやら書く情報がまとめられているメモ帳を眺めることに一日、メモ帳へのまとめ記載で半日、だらだら過ごすのに一日半という時間を使うことになった。

 だらだらするのはもっと伸ばしてもいいかと一瞬考えたのだが、頭の中に眷属たちの姿がちらついてまともに休むことができなかった。

 結果として、計三日でホームに戻ることになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ハウスからホームに戻ると、探索や拡張に出かけていない眷属に出迎えられた。

 どうやらハウスとホームにいた時間はほぼ同じ流れだったようで、三日しか経っていなかった。

 もっと長くかかると予想していた眷属たちに、戻ってきたときに驚かれるほどだった。

 

 そして、俺自身もそうだが眷属たちから驚かれる要因になったことがもう一つ。

 それは分体生成で作られた体(?)が、明らかに大きくなっていたのだ。

 以前は手のひら大だった背丈が、五十センチくらいの大きさになっている。

 これは恐らく、種族が世界樹(若木)になったことによる影響だろうと思われる。

 その予想を眷属たちに話すと、彼らも納得した様子になっていた。

 進化をした後で世界樹から感じられる魔力がはるかに大きくなっているそうで、もしかすると分体にも影響するかもしれないという話をしていたらしい。

 

 これは分体生成が終わってから感じたことなのだが、どうやら体が大きくなったことで分体の状態でできるようになったことが増えた……ように感じた。

 以前の姿で色々と試していたことが、何となくできるようになったのではないかという感覚を得ていたのだ。

 とはいえまずはそのことは置いておくことにして、眷属たちからの報告を聞くことにした。

 俺が本体から姿を見せてから眷属たちが落ち着きなく、報告することがあるとそれぞれが事あるごとに言ってきていた。

 さすがにこれは無視するわけにはいかないと判断して、まずは眷属からの報告を聞くことにしたのである。

 

 ――というわけで、いつの間にか報告会をする場所と決まっていた建物に眷属たちと移動をする。

 各々が決められた場所に腰を落ち着けてからが、報告会の開始となった。

「それじゃあ、まずは領域関係から話を聞こうか」

「ピッピ(はい)」

 現状では空を自在に飛べるラックが一番領域を把握しているので、まずは彼の報告から聞くことにした。

 

 そのラックからの報告によると、今回の戦闘で領土化した範囲はステータス画面で示されていた通りに道北地域で間違いないとのことだった。

 その上で領域化していなかった部分がどうなったのかといえば、領土化された範囲内は自動的に領域化されていたとのこと。

 世界樹の魔力を感じられるラックからの報告なのでほぼ間違いないだろうが、一応後から俺自身も行って確認することにした。

 領域化されているのであれば問題なく移動できるはずなので、きちんと自身の目で確認をしておきたい。

 以前予想したとおりに進化した関係で領域外にも出られるようになっている気もするが、その確認は後回しにしておくことにする。

 

「ピッピ(ご自身で確認されるのですか?)」

「うん。やってみたいこともあるからね。それに、折角だから北の端っこも見てみたい」

 ステータス画面に表示される地図が正しいのであれば、宗谷岬やノシャップ岬が見ることができるはずだ。

 これまでも以前に見たことがある光景を見てきたが、この機会に記憶にある光景をこの目で確認しておきたくなったのだ。

 ただの自己満足でしかないのだが、眷属たちは特に疑問に思うことなくごく普通に頷いていた。

 

 このラックの報告に加えて、ファイがさらに別の報告を加えてきた。

「ガガガウ(ちょっとばかり南側に向かって領域化してみたが、特にこれまでと違ったところはなかったぜ)」

「ピッピ(領域化は間違いなくされているでしょうが、領土化されているかは主の確認が必要だと思います)」

「ああ、そうか。そういえば、その確認がまだだった」

 そう言いながらステータス画面にある地図を開いてみた。

 

 ちなみに俺にとってわかりやすいように『道北地域』と呼んでいるが、その範囲は以前の世界のものとは微妙に違っている。

 流石に細かいところまでは覚えていないので何とも言えないのだが、少なくともここまで直線的な分け方ではなかった。

 微妙に似ているところが何ともむず痒くなったりするので、運営さんが敢えてそうしているのかと疑いたくなってくる。

 ただ大体似たところで区分けされているので、敢えて呼び方を変えるよう必要はないと考えている。

 

 そして地図を確認した結果だが、領域と領土ははっきりと区別されていることがわかった。

 その理由は単純で、領土化された範囲(道北地域)と領域化された場所では、きっちりと色分けがされていたからだ。

 この辺はゲームっぽいんだなとどうでもいい感想を抱きつつ、そのことを眷属たちにも報告をした。

 両者の違いが今後どういう結果を生むかはわからないが、きちんと認識を合わせておかないととんでもないことになりそうだった。

 

 俺自身が爵位を持ったことでエリアボスに変化があるかと身構えていたのだが、少なくとも戦いで体感できるほどの変化はなかったらしい。

 これで領域化のスピードが落ちてしまうとまた計画を変更せざるを得なくなるところだったが、どうやらその心配は杞憂だったようだ。

 勿論これから先も何があるかはわからないという意味では同じなので、油断するつもりはないのだが。

 いずれにしても領土化、領域化、エリアボスについてはそんな感じで報告は終わったので、続いては眷属関係の話になる。




§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る