第85話:とらぶるの館。
「痛くはないだろうか?」
「えぇ、とっても気持ちいいわ」
「こうしてイルヴァリース様のお背中を流せるなんて身に余る光栄です」
「そんなかしこまらなくてもいいわよ。ほら、次は私の番。洗ってあげるわ」
「そ、そんな……私なんかを……」
「ダメよ女の子が自分を私なんか、なんて言っちゃ。そんなに可愛いんだから……ね?」
「私がかかかかかかわいい!?」
「えぇ、ミナト君だって本当は分ってるのよ。ちゃんとあいつもアリアの事可愛いって思ってるんだから」
お、おい! 話の流れを妙な方に持っていくな!
「ミナト殿が……? しかし彼はあまり私に興味がないように思うのだが……」
『ミナト君は黙ってなさい。私に主導権を渡したのが悪い。それに……いい思いはさせてあげるからしっかり見ておきなさい♪』
もうしっかり見てるよ馬鹿野郎!
ママドラはアリアの背中を素手て丁寧に洗い、そのまま手を背中から前の方に回していく。
「そんな事ないわよ。ミナト君は奥手なだけ……心の中ではスケベな事考えてるむっつり男だから」
やめてーっ!
「そ、そうなのか……? うひゃっ、イルヴァリース様……前は自分で洗えますっ!」
「いいじゃない。私がしっかり洗ってあげるから……こっち向きなさい」
「はぅ……分かりました……」
アリアはママドラの言う事には絶対服従の姿勢を崩さない。
今までは背中を向けていたが、くるりと対面に向き直る。
で、ママドラはそんなアリアの全身をくまなく洗うのだった。
「本当に、ミナト殿は……私の事をゴリラ女だと思っていないのだろうか」
「思ってる訳ないじゃない。ミナト君は本当にアリアの事可愛いって思ってるし、今だって血走った目で凝視してるわよ♪」
ばっ、おまっ!!
「……へっ?」
アリアが固まる。
その間もママドラはアリアの胸を洗ったり腰の方へ手を滑らせたりしている。
「あ、あの……確認したいのだが」
「あら、何かしら?」
「今ミナト殿は、どういう……?」
「身体の主導権が私になってるってだけよ。私が見てる物はしっかり見えてるから安心してね♪」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
すっこーん!
という擬音がしっくりくるくらい盛大にアリアがすっこけた。
目の前でひっくり返るもんだからいろいろアレがアレでアレである。
なんか、なんかすまんっ! 一応謝っておくからっ! でも身体は俺の制御下にないんだ! つまり俺のせいじゃないんだ分ってくれ!
「ひっ、ひゃぁぁっ、ミナト殿のえっちーっ!!」
アリアが慌ててイルヴァリースから逃げ、浴槽の中に飛び込んだ。
その様子を見てたネコとイリスが心配そうにアリアの方へ駆け寄る。
「どうしたんですぅ?」
「み、みな、ミナト殿がっ、私のっ、私の裸をっ!」
「あぁ、ごしゅじんもちゃんと見てたって事ですかぁ? やっぱりごしゅじんもえっちですねぇ♪ 我慢できなくなったらちゃんと私に言って下さいよぉ♪」
ネコがこっちを見てニヤニヤしている。
こんな時主導権がママドラなのはありがたい。
あいつもママドラ相手に変な事をしてくることはないだろう。
『あっちからしなくても私からは出来るわよ?』
……おい、冗談だろ?
『冗談と本気、どっちがいいかしら? 好きな方を選ばせてあげるわ』
……ぐぬぬ。
『真剣に悩んでやんのばっかーっ! 本当に君は面白いわねぇ♪』
純情な男心を弄びやがって……!
『いや、この場合弄ばれたのはアリアだからね? 反省なさい』
どう考えても弄んだのはお前だけどな!
『こうなる事を望んでいたんじゃないの? 良い思い出来たでしょう?』
そ、それは否定できないが、だとしてもお前は俺に都合の悪い事を話し過ぎなんだよ!
『あらあら、君だけが一方的に良い思いするのは不公平じゃない。だからアリアにも脈はあるって教えてあげてるのよ♪』
お前……本当に俺の事玩具か何かだと……。
『違うわ。君は私のとっても大切な半身よ♪ これからも楽しませてちょうだいね♪』
くそが……。
『そこはとりあえず良い物見れてありがとうございました、じゃないの?』
有難うございましたっ!
『あはっ、君のそういう素直な所好きよ。むっつりだけど私に隠し事はできないものね?』
そう、俺がいくら取り繕っても健全な男子であるのは否定できない訳で、こいつにはそんな部分も全部丸見えなのだ。隠しようが無い。
『だからといって風呂に入るのに私と交代ってのは考えたわね……自然に相手を油断させる事ができるもの』
人聞きの悪い事を言わないでくれ。本当にその辺は気付かなかったんだってば。
『へぇ、ふぅん。そういう事にしておいてあげるわ』
「まま~♪ 私も洗って~っ♪」
「ん~、どうしようかしら」
ママドラはイリスのお願いに迷うような仕草を見せた。
「ダメなの?」
「ダメじゃないんだけれど……」
『イリスの身体をくまなくミナト君に見られるのがちょっとねぇ』
お、おい。俺は父親だぞ? さすがに娘には欲情したりしねぇって。
『絶対? 誓える?』
……た、ぶん。
『今から君の心の眼に蓋をしまーす♪』
えっ、何それそんな事できんの?
『私は六竜イルヴァリースよ? 出来ない事などあんまりないのだっ♪』
その言葉と同時に視界に靄がかかったように見えなくなった。
「あははっ、くすぐったいよう♪」
「イリスは昔っからここが弱かったものね」
「えへ~♪ ぱぱには内緒ね?」
「ええ、ミナト君には内緒よ♪」
「私も混ぜてくださいよぅ♪」
「あらあらネコちゃんもいい物持ってるわねぇちょっと触っていい?」
「いいですよ♪ あ、でも私も触っていいですかぁ? ごしゅじんの身体なんてなかなか触れないのでっ!」
「どうぞどうぞ♪」
……声だけの方が頭に光景が駆け巡っていろいろヤバい。
『あんたほんとに筋金入りのむっつりね。やーいこのドスケベ』
……残念ながら否定は出来そうになかった。
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