第52話 安定のニコラ様ですね
国王への謁見は明日の朝からという事でレイナは暇を持て余す。
病後という事もありイーサンからは今日は休んでいればいいと言われているが、アルティアーク家でもゆっくりしていたレイナは体を動かしたいと思いニコラの元に向かう。
「やっぱり私、恵まれているよね」
魔法の師匠とはいえ、ニコラはこの国の第五王子だ。
そんな人物にふらっと行って会えるなど通常はあり得ない。
ちょっと話をしに行こうぐらいの感覚でレイナは考えているが、専属のメイドとして仕えているのだから彼のお世話をしなければならない。
レイナはその事をすっかり忘れている。
それを指摘されない時点で恵まれている環境にいるのは間違いない。
以前の国では目立つ容姿の為迫害されていたので、この国に連れてきて貰って良かったとレイナはイーサンに感謝する。
ニコラの事は王子ではあるが師匠としてか見ておらず自分の方が年上であるがレイナは敬語を使う事に全くと言っていいほど違和感を感じていない。
ニコラとしてはイーサンと話す様にフランクに話して貰いたいと思っている部分はあるが、師匠という立場なので仕方がないと少なからずそんな気持ちを持っている。
勿論、レイナはニコラのそんな想いに全く気づいてはいない。
そしてニコラの性格からすると心の内をレイナには絶対に言わないだろう。
「ニコラ様、ただいま戻りました」
「おう、随分と活躍だったみたいだな」
「……はい。何とかシールズ様の治療をする事が出来ました」
はいと答えるのも自分のおかげだと誇る様で恥ずかしいが、他に言葉が思い浮かばずレイナはそう答えた。
「シールズ様の予後も問題ない様なので戻って来ました」
「そうか。それは良かった。しかし何だか周りが騒がしいみたいじゃないか?」
ニコラもレイナの境遇は知っている。
「そ、そうなんですよ! 明日なんて国王様に呼ばれているんですから」
「まあ、仕方がないだろう。お前は目立ち過ぎたからな」
「ええ~、そうですかね?」
レイナとしてはただシールズを助けたいだけだったので目立つつもりなど無かった。
実際には国王から招集されるのだから、レイナは国として興味深いと判断されたのは間違いない。
「ところで国王様ってどんな方なのですか?」
国王はニコラの父親でもあるので丁度いいと、レイナはニコラに質問する。
「あー、まあ有能であり厳格な人だな。国のトップだからな。子供の躾にも厳しい」
「そうなんですね……」
子供の躾と言われレイナはニコラの自分への今までの態度を思い出してみるも、とても女性にやらない様な事ばかりやられてるなと思い返す。
しかしレイナは、紳士として問題があるのではないですかとは口が裂けてもニコラには言わない。
「ん? 何だ、その微妙そうな顔は?」
「いえ、何でもありませんよ!」
そんな気持ちを察したのかニコラは疑いの目を向けるが、レイナは力強く返答して何もない事をアピールする。
しかしクリスティーナに関してはニコラは紳士的だったので弟子である自分には心を開いてくれているのだとレイナはいい方向に解釈する事にした。
ニコラはやれば出来る人なのだろうと。
「でもそれほど厳しい方なら私の事もシビアに考えられるでしょうね……」
利用価値の高いレイナを国の為に使わない理由はない。
有能な人間ならば尚更そうであろう。
「まあな、これまでの様な自由は制限される可能性は高いな」
「ですよね……」
レイナは明日の謁見に不安を覚える。
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