第9話 恐縮しますね
「本国と言うと、どこの国になるのでしょうか?」
そう言えば何処に行くのか、レイナはまだ聞いていなかった。
あまりアンブロウ王国から近い所だと嫌なので確認しておきたいと思いレイナは質問する。
「ああ、まだ言ってなかったね。イブライン王国ってところだよ」
イブライン王国? レイナはリーネの記憶を探る。
(んん、おー結構大きな国ね)
レイナが住んでいたアンブロウ王国より国土は大きい。
しかも距離が離れているので、これなら安心だろうとレイナは考える。
「結構大きな国ですよね。確か魔導具の生産が盛んなところだとか?」
(魔導具といってもよく分からないけど、便利グッズみたいな物と考えていれば間違いないのかな?)
兄であるレオンから貰った認識阻害の魔導具も凄いし、結構ハイテクな世界なのかもとレイナは思う。
リーネの知識は本やレオンから聞いた話だけだ。
箱入り娘? の知識では詳しい事までは分からない。
「ああ、そうだ。うちの国では魔導具作製に力を入れているよ」
「そうなんですね!」
(ん? うちの国。イブライン王国? 最近何処かで聞いたような……)
レイナは疑問を感じ頭を捻る。
「イーサンも確かイブラインって言ってなかったっけ?」
「ん? ああそうだな」
「レイナ嬢。イーサン様はイブライン王国の第一王子であらせられます」
「えっ!?」
護衛のラウルがレイナに言う。
ゲームの世界かよ! とレイナが言いたくなるのも無理はない。
(盗賊から助けてくれた人物が王子とかありえなくない?)
レイナが困惑するのも当然だ。
そして問題はまだある。
(だ、第一王子! そんな人に私はなんて言葉遣いをしてしまっているのか!)
名前も呼び捨てにしており不敬罪で処罰されてもおかしくない。
でもイーサンがそうしてくれって言ってたとレイナは記憶を辿る。
だがこの事態に対処する方法にレイナは辿り着く。
「し、失礼いたしました。イーサン・イブライン王子殿下! 数々の無礼お許しください!」
「ははは、やめてくれよレイナ。今まで通りで全然構わないよ」
「でも、でも」
「俺がそうして欲しいんだ、頼むよ」
「そ、そこまで言うなら……今まで通りにさせて貰います」
(まあ、私も今更って感じだしイーサンもいいって言っているからいいよね)
レイナは自分を納得させる。
「でも人前ではダメですよね?」
「もちろんです! 我々だけでしたら構いませんが、お控えください」
代わりに護衛のラウルが答えた。
(ですよねー)
一国の王子と追放された娘が砕けた話し方をしていたら外聞も悪いだろうし不敬罪で罰せられてもおかしくはない。
「分かりました。以後気を付けます」
数日後、肩の痛みも癒えてきたレイナ達は馬車でイブライン王国に向かう事になった。
「凄いですねこの馬車。全然揺れませんね」
イーサンとラウルが隣同士で、レイナは二人に向かい合う形で座っている。
荷馬車の時は結構揺れていたので大変だったが、この馬車は違う。
レイナはその事を口にする。
「ああ、足回りに魔導具を使用して揺れを抑えているんだよ」
「そうなんですね!」
振動が殆どないので快適だ。
荷馬車と違い尻が痛くならない。
現代の自動車並みかもしれないとレイナは思う。
「これもイーサンの国の技術なのですか?」
「ああ。生活に必要な技術は日々向上しているから色々な物が作られている」
イーサンは誇らしげに胸を張る。
「凄い国なんですね」
レイナは素直に感嘆する。
「ああ。……しかし兵器の魔導具も作製している。自国の為とは言え戦争の道具を作るのは余り褒められたものじゃない。国の王子としては複雑な想いがあるよ」
イーサンは色々な葛藤がある様で顔に影を落とす。
「そうですか……でも、そういう考え方を出来る王子様がいる国なら、きっと良い国なのでしょうね」
イーサンとラウルさんは驚いたような複雑そうな表情でレイナを見つめる。
(えっ、何? 私何か変な事言った?)
不安になりレイナは聞いてしまう。
「ち、違うのですか?」
「……いや、そうだな良い国だと思うよ」
「はい。とても良い国です」
二人は自分達に言い聞かせる様に答える。
(何だろう、何だか気まずい雰囲気)
触れてはいけない部分なのかもしれないと察したレイナは話題を変える事にした。
「こ、今度ご迷惑でなければ魔導具の工房を見学させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ、それは構わないけど興味があるのか?」
「はい。このネックレスも不思議ですし、どの様に作っているのか興味があります。将来商人になる時にも活かせそうなので」
もしかしたら魔導具も扱うかもしれないから準備はしておきたいとレイナは考える。
「分かった。手配しておこう。ラウル頼む」
「はい。手配いたします」
「ありがとうございます。ラウルさんよろしくお願いします」
つい、笑顔になってしまうレイナ。
盗賊に襲われた時はどうなる事かと思ったが、二人と知り合えたのはレイナとしては運が良かった。
今考えると一人旅の準備が足りな過ぎて、自分の無謀さにレイナは驚いてしまう。
あの時は何とか出来ると信じていたし選択肢も無かった。
仕方がなかったが、考え無しだったのは否めないとレイナは反省する。
今この恵まれた環境を活かして出来る事はなんでもやっていこうとレイナは思うのであった。
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