第6話余はそういうのは二千年前にだな

「では貴様の聞きたいことを言ってみろ。分かる範囲でなんでも教えてやろう」


「(おい!こいつはあの『とてつもない力を持つもの』なんだろ?いろいろ教えちゃっていいのかよ?)」


「(そんなことは余も分かっておる。すべてをペラペラ教えるほど間抜けではない)」


「(てめえ!間抜けどころかセクハラ大魔王だろうが!お前どうせあれだろ。『ハーレム』でモテモテばっか考えてんだろ!)」


「(ごほん!余はそういうのは二千年前にだな)」


「(とにかくここはうまく話をしてみないとだな)」


「あのお…」


「なんだ?」


「聞きたいこと言っていいっすか?」


「言ってみよ」


「いやさあー。テンプレ通りに僕さあ、事故って死んだと思ったら気がついたらこの世界で生き返っててね。こういう場合はまあ百パーセント『都合のいい』『チート能力』を身に着けてこの世界で『無双』するのがお決まりなんだと思ってるんですよー。そして『俺つえええ』でこの世界の頂点にあっという間になってね、ついでに『ハーレム』でモテモテで、ついでに『ざまあ』とかでいえーい!となる予定なんですよね。それでそれがいつなのか知りたいなあーとか。誰に聞けばいいですかね?この世界で神様的な人はいませんか?」


「(おい!こいつ、全部言いよったぞ!『都合のいい』、『チート』、『無双』、『俺つえええ』、『ハーレム』、『ざまあ』は魔法じゃねえのか?)」


「(いや、今のところ、何にもダメージとか受けてないけど)」


「(分からんぞ。何しろあの『神』と名乗る女が言ってたことをこの男は口にしたからな。じわじわ防御力とか攻撃力が減ってるとか。魔法とか使える?)」


「(ふん。何を言っておる。今の様子ではあのものはまだそういう意味では力を使ってはおらぬ)」


「(あ?セクハラ大魔王のてめえに何が分かるんだよ!)」


「(セクハラは置いといて。魔王だからだ。何度も言うがそういうのは二千年前に余は捨てておる。そういう考えを持つ方が逆に自意識過剰というものではないのか)」


「(ああああ?てめえー!今なんつった!あたしが『自意識過剰』だと!)」


「(まあ待て。魔王よ。俺が代わりにあの男と話をしてみよう。魔王も分かってるだろ?あの男はこの世界の頂点にあっという間になると口にしていた。危険なものには変わらないだろう)あ、私は勇者です。初めまして(ペコリ)」


「え?マジ?勇者さん?ガチで?やっぱ異世界転生してんじゃん!で、僕の力は何かなー?ルンルン」


「あのお、こちらから今度はお聞きしたいのですが」


「あー、はいはい。一応台本的なものに沿って行かないとね。どうぞ」


「『チート』と『無双』と『俺つえええ』と『ハーレム』と『ざまあ』とはどういう意味なんでしょうか?よければ詳しく分かりやすく教えてもらえませんか?」


「え?そういう設定?うーん、そういうテンプレってあったっけ?」


「(『テンプレ』もチャンスがあれば聞いてみろ!)」


「あ、あと『テンプレ』も出来ればどういう意味か教えてください」


「へえー。面白そうだね。説明から始まるとはねえ。パンチがきいてるというか。なかなか面白そう!とりあえずじゃあ『チート』から説明するね」


 『とてつもない力を持つもの』であろう男の授業が始まる。今のところ単なる奇抜な服装をしただけのこの男が数分後。とんでもないものであることを全員が知ることとなろうとは…。

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