第42話 優しすぎるあの子 (レティ様視点)
初めてあの子を見た時は、驚いた。聖女様とは全く雰囲気が違ったから…アオイはとても控えめでとても優しかった。念には念と思って、性格についてはどんな人柄か知るために事前に何人かに聞いたわ。勿論、色んな立場の人になのにみんなの口から出るのは「優しい」「あの人が聖女様だったらよかったのに」とだけ。私も流石におかしいと思ったけれど…いざ、会ってみたらみんなが言った通りだったから。その時、絶対この子を大切にしたいと思った。正直、私もびっくりよ。私が気にいる子なんてそう、いないのだから。でも私の目に間違いはないと思っているから本当にあの子はいい子なのよ。
「私、貴方みたいに気軽に話せる子が欲しかったの。だから、一週間に一回でいいから今日みたいにアオイとお茶をしながら話をしたいのだけどいいかしら?」
「私でよければ、またレティ様とお茶したいです!」
あぁ、この子はこんな我儘まで聞いてくれるのね。優しすぎるから心配になるわ。あれから私たちは、お茶をするようになった。あの子の話を聞いたりこの国の話もしたわ。アオイとの時間はとても楽しく有意義な時間だわ。まぁ、こんな楽しいことをして見逃す子なんていないわよね…そう思った矢先、ルイからアオイに会いたいと言われた。私も、もうそろそろ言わなければとは思っていたからいい機会だと思ってすぐアオイに手紙を送った。正直、急に送ったから心配だったけれど…数時間後にはアオイの護衛が来ていい返事を貰えてよかったわ。あとは、この間に執務を終わらせなければいけないわね。それから、執務をいつものように早めにこなしているとあっという間に時間になった。いつも間にかあの子たちも揃っていたしそう言う事だけは本当に真面目ね。
「急に手紙ごめんなさい、今日は来てくれてありがとう」
そう、一言言うとあの子なんて言ったと思う?
「いえいえ、初めてのお手紙がレティ様でとても嬉しかったです。ありがとうございます。」
急に呼び出したのは私なのに…お礼を言われるなんて思わなかったわ。それから私の息子たちを紹介することが出来た。ルイとリベルはめったに許さない愛称呼びまでさせて相当気にいったのね。それに比べてアルは聖女様信者になっちゃって愛称呼びにも怒っていたわね…確かにアルの言う通り王族は簡単に愛称で呼ぶことを許さないからアルの意見も一理あるけれど人を見る目は自信あるのよ私。何年、この国を守っていると思っているのかしらあの子は…個人的には、アオイより聖女様の方が警戒した方がいいと思っているのだけれど夫もアルもいつになったら気づくのかしらと思いながら、ふとアオイを見ると何か言いたそうにしていた。そのままアオイを見つめていると覚悟を決めたように声を出した。
「レティ様、お菓子を作ってきたのですが。食べて頂けますか?」
何を考えこんでいたかと思ったらお菓子だったのね…数人から聞いた話だと美味しいと評判がいいのよね。私は、毒見係を呼んで食べて安全確認をしてからではないと食べられない。すぐに私のそばまで来た毒見係に貰った袋からマドレーヌを一つ取り出し渡した。毒見係は口に入れると表情で分かるぐらい美味しいという顔をした。
「あなたが美味しそうにすると早く食べたいじゃない。それで大丈夫だったのかしら?」
マドレーヌが気になってそわそわしている息子たちにも分けて、みんなで美味しくいただいたわ。びっくりしたのはアオイの居た所ではお菓子に意味があるという事。今日、くれたマドレーヌには特別な人と意味があるみたい。この話、少し話したらすぐ広まりそうね。そのあとは、いつも通り会話を軽くして帰らせたわ。でもまさかあんなことになるなんて私も思ってなかったわ…
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