第40話 王妃様からの贈り物

「アオイさん、こっちですよ。」


そう、声を掛けられて見た馬車は飾りがそこまで無いとはいえ王族だろうなと思えるようなものだった。でも、その隣にあるレティ様がここまで乗ってきたと思われる馬車はルイス様のよりも飾りが凄かった。レティ様には申し訳ないけれど乗ることにならなくてよかったと思った。ルイス様の手を借り、私は馬車に乗るとさっそく話しかけられた。


「今日は、母上をありがとうございました。本当は、アオイさんの初仕事をしている姿を見たかったんですが…」

「そんな、私の初仕事なんて見るものじゃないですよ」

「僕が見たかったんです!」

「そんな?」

「そんなです!」


別に見て、面白いような職業でもないしなぁ…それより、ルイス様の一人称が…


「あの、ルイス様の一人称って…」

「一人称?あ、もしかして私じゃなくて僕っ て言ってました?」

「はい、入店してから僕って言ってましたよ?」

「公共の場では、私にするように。気を付けていたんですが…」

「確かに厳しそう…」

「そういう決まりみたいなのはないですが、私が個人的に決まった人の前でしか砕けた口調に出来ないというか」

「それは、分かります。信頼してる人にしか砕けれないって言うか…なんていうか。それに私が入っているかどうかは分かりませんが気楽にしてもらえれば私としては嬉しいです。」


王族ってだけで私よりも大変なのはよく分かる。だからこそ、気軽に砕けて話せる人がいて欲しいと思った。そういう人が一人でもいると本当に助かる。


「アオイさんは、入れてるつもりですよ。タイミングがなかっただけで」

「私が、入ってるなんて…なんかありがとうございます。」


入っていると聞いた私は、なんだか嬉しかった。頼ってもらえてるのかもと思ったのかもしれない。この世界に来てから私が頼ってばかりだったから尚更。


「もうそろそろ、ですよ。」

「もうですか?あっという間ですね。話してたからですかね?」

「かもしれません。門が見えてきましたよ」


そう言われた先には、王城の入り口の門が見えた。ちゃんと見ていなかったからどんなのか知らなかったけどとても美しかった。場所は場所でも、私にはちゃんと帰る場所があるんだなと思っているといつの間に馬車は揺れていなく止まっていた。


「アオイさん着きましたよ。」


そう、声を掛けられて振り向くと乗った時と同じような状態だった。少し恥ずかしいものの差し出されている手を取り、馬車から降りた。今からどうしようかなと思っている中レティ様に呼ばれた。


「アオイ、今日は他に何も予定はないかしら?」

「特には、決まってないです」

「なら、今から私とお茶しないかしら?新しい紅茶が手に入ったのよ」

「いいんですか?私でよければ是非!」

「私から誘っておいてあれだけれど…準備をしたいから少し待っててもらえるかしら」

「全然、大丈夫ですよ!」

「ありがとう、そういえば、アオイ用にドレスを仕立てたのよ。せっかくだし、それを着てお茶しない?」

「そんな、受け取れません。何もしていないのにドレスなんて…」

「いいのよ。私がアオイに来て欲しいから仕立てて貰ったのよ。貴方に来てもらえれば満足なのよ。私は」

「分かりました。私はどうしたらいいですかね…」

「私の侍女が、これから案内してくれるわ」


そう言われた通りに、レティ様の侍女さんたちについていった。案内された部屋は、とても綺麗な内装の部屋だった。


「騎士様たちは、部屋の外で待って頂けますか?」

「分かりました。ツキノ様、私たちは外で待っております。」


そう声を掛けて、外に行ってくれた。


「早速ですが、レティ様がツキノ様の為に仕立てたドレスがこちらです。」


そう、侍女さんが持ってきたドレスは物凄く美しいものだった。レティ様は私の事をよく知っているかのように飾りと露出は控えめなのに凄く惹かれるデザインだった。


「うわぁ~これが、私の為にレティ様が仕立ててくださったドレス…」

「レティ様はとても考えていらっしゃいました。ツキノ様はどのようなドレスの形が似合うかやデザイン、色についても悩んでいましたよ」


そんなにも、考えて仕立ててくれたと思うとずっと大切に着たいと思った。


「そろそろ、着替え始めましょうか」


と言われ、私は誘導されるままに動いた。

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