第38話 初めてのお客様

開店して一番のお客様は誰だろうかとドキドキしていると、扉につけたベルがいい音を立ててなった。扉の方に目線を変えるとお客様らしき人が来ていた。顔は隠れていてよく見えない。だが、その人物から知ってる声が聞こえた。


「無事、開店おめでとう」


その声に驚き、目を凝らすと声の主はやはりレティ様だった。まさか、一番に来てくれるとは思わなかった。公務があり無理だと思っていた。


「なんで、レティ様が?!」

「あら、私が一番目のお客さんじゃ不満なのかしら?」

「あっ、そう言う意味じゃないんです」

「じゃあ、どういう意味かしら?」

「公務で忙しくて来れないんじゃないかなと勝手に思っていたんで…」


レティ様は、この国の王妃だ。本当なら私が関われる人じゃない。ここまで、私によくしてくれて味方でいてくれた。ある意味、私の母的存在だ。


「アオイのオープン初日を行かない訳ないじゃない」

「今日は、レティ様の髪を切ればよろしいでしょうか?」

「それでいいわ」

「分かりました。ではこちらのお席へどうぞ」


そう、レティ様に声を掛けて異世界最初の仕事の準備をする。その準備の途中に私はある事を不安に思った。それは、気軽に話しているこの方がこの国の王妃だという事。いつもだと、王妃だという事は忘れてしまうぐらい仲良くしているから。こういう場になると余計に王妃様の髪を切ると言う事が重大に思えてきてしまうからこそ不安だ。そんな事をぐるぐる考えてる私に聞こえてきた声はやっぱりグレンさんだった。


「ツ…ツキ…ツキノ様!」

「あっ、はい!」

「どうかしましたか?」

「え、えっと…この国に来てからの初仕事で王妃様の髪を切るんだなと思うとちょっと心配になっちゃって…」

「大丈夫ですよ。王妃様は、ツキノ様の事を信頼してますから。」

「でも…私みたいな一般人がこの国の王妃様の髪を切るなんて…私には重すぎます」

「ツキノ様!ここに居るものが何も言わない理由はみなツキノ様の腕を信頼しているからです」


確かに…普通は誰かひとり何か言ってくる人がいるイメージはある。まぁそのイメージは日本にいた時に読んでた小説も異世界ものもそういうキャラ居たな~って感じだけど。でも、そう言ってもらえるだけで軽くなった。


「ありがとうございます。私、一生懸命に頑張りますね。」


再び、私は準備に取り掛かった。全部の準備を終わらせて、私は王妃様に声を掛けた


「レティ様、どんな風にしたいとか要望はあったりしますか?」

「特には、ないわ。アオイが私に似合うと思った髪して頂戴。」


正直、私が手を加えなくても十分綺麗過ぎるし、きっとレティ様なら何でも似合うから絶対!!余計に迷うんですよ…だけど、今は長いロングだから思い切ってバッサリ切って雰囲気を変えてみようかな…


「今回は、長い髪のイメージを変えようかなって思ってバッサリ切りたいんですけどいいでしょうか…?」

「勿論、いいわよ。あと、数日後にお茶会をしようと思っているの。私の雰囲気が変わってたらどんな反応をしてくれるのか楽しみだわ」


そうやって、楽しそうに話す。レティ様は、とても幸せそうだった。

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