第127話 休日②

 昼食が終わると午後からはどうしようかという声が上がる。昼寝をしたらどうかと提案したが、大人たちは「働いてもないのに寝れない」などと言う。基本的に真面目な民族なのだと改めて認識する。

 ただ農作業チームは受粉や収穫をしないといけない物があると思い出したように言い始め、子どもやお年寄りたちは昼寝を、大人たちは総出で農作業の手伝いをすることになった。ただし休日なのといつもよりも人数がいるので働くのは一時間と決め、ニコライさんから貰った砂時計を準備し昼寝と農作業が始まった。


────


「みんな!時間よ!」


 私は大声で畑に向かって叫ぶ。子どもたちは昼寝とは言ったが、私とスイレンはこの一時間リバーシの勝負をしていた。やはりスイレンは頭が良いので、数手先まで考えてコマを置く。私はやり慣れている分対策をするが、それでもスイレンとの勝率は五十パーセントである。


 私とスイレンは有意義な時間を過ごし、大人たちは収穫の喜びを楽しみ、子どもたちは昼寝から起きてくる。その子どもたちにまだ遊べるほど元気があるかと聞くと全員が肯定してくれる。


「よし!鬼ごっこをしましょう!」


 子どもの遊びの定番である鬼ごっこを提案すると「オニゴッコ?」と全員が首を傾げる。種類もあればご当地ルールもあるのでどうしようかと思ったが、美樹が住んでいた地域でのオーソドックスな鬼ごっこの説明をする。まずは鬼の役割について説明し、次にルールを説明する。


「まずは鬼を一人決めて全員が逃げるの。鬼に触られた人は新たに鬼となってみんなを追いかける。最後まで鬼にならずにいた人が勝ちよ」


 逃げる範囲はこの広場だけと言い、私が鬼となって実際にやり始めた。秒でスイレンをタッチし鬼にし、子どもたちを追いかけ回す。キャー!ワー!と騒ぐ子どもたちは楽しそうだ。そして今度は逃げるほうをやったが「鬼の美樹に逃げの美樹」と呼ばれていた私は最後まで逃げ残る。


 次に提案したのは助け鬼だ。これもご当地ルールがあるだろうが、美樹の地域では鬼がタッチすると子はアジトに連行され、連行された子たちは手を繋いで助けを求める。アジトには見張りの鬼がいるが、その見張りの隙をついて逃げている子が捕まっている子をタッチすると、タッチされた子までが逃げられる。


「実際にやってみましょう」


 スイレンを見張り役にし、まずは一人捕まえる。アジトはデーツの木にした。


「誰か助けに来るまでこの木から手を離せないの。逃げている誰かがあなたに触ったら、あなたは逃げられるわ」


 そうして始まった助け鬼だったが、運動神経がよろしくないスイレンは助けを捕まえることが出来ずに子たちはみんな逃げるので大いに盛り上がる。

 しかしこれを見ていたお父様がウズウズとし始めたようだ。


「私もやるぞ!」


 と突如逃げる子として乱入してきた。私たちとしてはやることは変わらないので受け入れたが、お父様の身体能力が凄すぎてタッチが出来ないのだ。追い詰めたと思ってもバック転や側転で逃げ、驚異的なスピードで走り回り子たちを助ける。体力のないスイレンは肩で息をし疲れきっている。


「一度休憩しましょう!」


 果実を食べながら休憩をしていると、見ていた大人たちも混ざりたいと言う。なので範囲を広げ森と畑、民たちの家とナーの花畑までの広範囲を使ってやることにしたが、私はじいやに鬼になって欲しいと頼んだ。シャガは自分から鬼になりたいと志願してきた。イチビは子をやるようだ。

 そして始まった助け鬼だが、大人が入ったことにより本気度が増す。私とシャガが子たちを追い、疲れきったスイレンはただ見ている見張りになり、じいや一人で鉄壁の守りをしている。その守備はさすがである。


 休憩前から走っている私もついに体力が尽きてじいやと見張りを交代した。するとじいやはとてつもないスピードで走り出し、次から次へと子たちを捕まえる。捕まえながらも見張りの補助までし、ついに私とスイレンとシャガの三人で見張りをすることになった。捕らえられた子たちは長い列となっているが、現在残りの子はお父様だけとなりじいやと攻防を繰り広げている。

 二人は私たちを飛び越え、空中ですら一応鬼ごっこをしようとしている。じいやが手を伸ばせばお父様は空中であろうとも体をひねりそれを躱す。地上に降り立つと、もはや何の映画を見ているんだろうというくらいじいやは手と足を駆使しお父様に触れようとするがお父様は見事にそれを避ける。私たちはただただ呆然とそれを見ているだけだ。


「……何をしているんだ?」


「お!?タデ!鬼ご「隙あり!」」


 戻って来たタデの一言でこうして鬼ごっこは終わった。じいやは全国民から賞賛の嵐を受け、悔しがったお父様はタデに八つ当たりの攻撃をし始め、今度はお父様とタデの攻防戦が始まったのだった。

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