第690話 カメか否か


 うがー! 何度も小石を出して弾いてを繰り返しているけど、思ったように飛んでいってくれないよー!? 大半が、そもそも沼まで届いてないし、届いたとしてもあらぬ方向にすっ飛んでいっちゃってる!?


「なんでこんなに、上手く飛ばないんですかねー!? えいや! あ、また!?」


 ぐぬぬ!? 今のは沼までは届いたけど、カメとは全然違う方向だー!?


ミツルギ : まぁスキルでの命中補正が一切ないから、難しくて当たり前ではある。

イガイガ : 人類の誰も、ライオンの脚で小石を弾いた事なんかないからな。リアルで物を投げるより、遥かに難易度は高いのは当然!

神奈月 : ……でもまぁ、出来る人はやってのけるのもモンエボではあるんだよな。

ミナト : んー、出来なくもないけど、投げる方が楽ではあるからねー。

富岳 : その上、溜めで動作制限がかかってる状態でもあるからな。移動出来ない程度の範囲でしか可動が不可能だから、特にやりにくいぞ。


「うー!? 確かにそうなんでしょうけど、それでもやるしかないですよねー!?」


 この難しい状態でも、たまにはちゃんと前に飛んでいってるもん! その方向さえ合えば、目的通りになるはず! ミナトさんならサラッとやっちゃいそうだけど……私はまぐれ当たりに期待するしかないよね!?


「もう、次々と連発していきます! えいや!」


 出して、弾く! もう今は、ひたすらにそれを続けるだけなのです!


咲夜 : まぁ今すぐに当たるよりは、2段階目の溜めが終わってから当たる方が色々と楽だよな。

神奈月 : それはそうだけど……なんかそれが駄目になるフラグが立った気がするぞ?


「あ、真っ直ぐ目的の場所に飛びました! カメが動き出しましたし……本当に2段階目の溜め、駄目になりましたね!?」


 わー!? ひたすら当てる事しか考えてなかったけど、2段階目の溜めはまだ終わってないよ!? でも、マップ上のカメの反応が動き出したし……そういや、これが絶対にカメなのかも不明なんだった!?


サツキ : さーて、これは本当にカメかなー?

真実とは何か : その真実は、今から明らかに!


「あ、普通にカメ……じゃないですね!? 『剛健なスッポン』って、攻撃力がやばいヤツじゃないですか!?」


 待って、待って、待って!? 本当にあのカメじゃなかったよ!? スッポンが水面を泳いで、どんどん近付いてきてるけど……この速度じゃ2段階目の溜めは終わらないね!?


「弱点に『堅牢』が出てますし、1段階目でぶっ放しますね! これで仕留められればいいんですけど……獅哮衝波、いっけー!」


 生命が弱点にないのは気になるけど……それでも、下手に攻撃を待つ訳にもいかないのさー! このスッポン、Lv2だし! そもそも屈強系統だから、危ないもん!

 射程ギリギリまで凝縮して、思いっきり撃ち放つのです! 仕留められなくても、沼の外まで吹っ飛べば――


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「あっ!? やりました! 今の一撃で、スッポンは撃破です!」


 ふっふっふ! 私の一撃は強力だから――


ミツルギ : いや、今のは違うな。仕留めた割に、入ってきた経験値が少な過ぎる。

ミナト : うん、スッポンの撃破ではないね。少し離れたところで反応が1つ消えたし、経験値が入ってきたって事は確実に交戦はしてた相手だから……本当のカメは、そっちにいたのかも。

神奈月 : あー、別のとこでカメが死んで、その経験値が入ってきたのか。


「そんな事ってあるんです!? それじゃさっきのスッポンが……あれ? 姿が見えません……って、また潜ってます!?」


 うがー!? 沼の水面に向けて放ったから、泥を大量に含んだ水が飛び散って視界が悪くなってたけど、その間に潜られたっぽいよ!?

 ぐぬぬ!? このスッポンめ、厄介な事をしてくれますね!?


ミナト : んー、このスッポンは俊敏のステータスは高めみたいだねー。俊敏のスキルで回避した可能性は低いけど、生命はスキルとステータスが共に高いから……直撃を受けても生き残ってるかも?

ヤツメウナギ : 捕食系のスキルで、一般生物でも乱獲して回復中かもなー。

水無月 : え、ヤマタノオロチなんていた沼に、一般生物がいるの!?

ミナト : もちろん、いるよー! サクラちゃんが草むらを吹っ飛ばしてるから、そこの引っ付いてた虫の死骸は大量に落ちてるし、小魚やカエルなんかは普通にいるしね。


「……え? あー!? よく見てみたら、確かに沼の上になんか色々浮かんでます!?」


 吹き飛ばした葉っぱだけかと思ってたら、全然そうじゃなかった!? バッタとか、種類はよく分かんないけど羽虫とか、仰向けで浮かんでるカエルやトカゲなんかもいる!?


「あ、スッポンが本当に食べてます!? あ、引っ込んみました!?」


 ほぼ瀕死くらいまでHPが減ってたスッポンが、今水面に顔を出して、カエルを一口で食べていったよ!? そんな回復方法、ありなの!?


ミツルギ : あー、サクラちゃん? 別にボーッと突っ立って見ている必要もないぞ?

サツキ : 既に瀕死状態だし、畳み掛けるチャンスだー!

水無月 : チャンスだー!


「あ、そういえばそうでした!? これ以上、回復はさせませんし、このまま仕留めていきます! 『放電』『放電』『放電』!」


 沼だけど、一応は水場だし、電気は広範囲に流れていっちゃうけど、その水の中にいる限り、この攻撃からは逃れられないのですよ! ……あんまり広過ぎると無理だろうけど、そこまで広くない沼ならなんとか届くはず!


「……今のでは死にませんでしたか。でも、死ぬまで続けますよ! 『放電』『放電』『放電』!」


サツキ : サクラちゃん、どんどんいっけー!

水無月 : いっけー!

富岳 : 土成分が多い沼とはいえ、電気はちゃんと流れていくからな。他の敵の反応がない以上、サクラちゃんが圧倒的に優勢か。

こんにゃく : 確かにそうなるなー。一般生物での回復量はそこまで多くはないから、時間の問題か。


「このまま押し切って勝てそうですね! 『放電』『放電』『放電』!」


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【至妙なライオン【雷】】が完全体:Lv2に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを5獲得しました>


「あ、倒せましたね! 完全体、Lv2に上がりましたよー! 進化階位が上がると、貰える進化ポイントも増えましたね!」


 ふふーん! 色々と予想外な戦闘にはなったけど、それでも撃破は完了なのですよ!


「おー、夜明けで太陽が昇ってきましたねー。……なんか、今日の進み具合、悪くないです?」


 もう20時になってるのに、まだLvは1しか上がってないんですけど!? ぐぬぬ! これじゃ今日中に、エリアボスの撃破まで進めるか分かんないよ!?


ミツルギ : 完全体から、目に見えて敵が強くなってくるからなー。それにまぁ今日は他の脱線もあったから、多少は仕方ない。

富岳 : 少し前にも言ったが、進化条件的に最低ラインが底上げされまくっているからな。これまでより厄介になっているのは間違いない。

いなり寿司 : 完全体は、進化したての頃が一番キツかったりするぞ。

ヤツメウナギ : サクラちゃんは既に『破壊の咆哮』を持っているから、かなり楽になるはずなんだけど……なんか妙に外しまくってるのがなー。


「……あはは、まだ1回もまともに敵に当てられてませんもんねー。これが上手く当てられれば、違うんですか」


 まともに当てられてないけど、確かに威力は相当ありそうだし……動きながら溜められるのは有利なはずだもんね。うん、ここから先は、ちゃんと当てていかないと!


「とりあえず、朝焼けのスクショでも撮っておきましょうか!」


 今日のサムネイルの候補になりそうだしね! スクショを撮るぞー! ……うん、撮れた! 沼も一緒に写ってるけど……んー、なんか沼と朝焼けが一緒なのは微妙かも?


ミツルギ : ん? 朝焼けで分かりにくいが、何か小さな影が見えるな? 看破の効果は、流石に届かない距離だが……。

神奈月 : あ、マジだ。あれは鳥か? 夜が明けたから、活動を始めたのかも。

ミナト : んー、あれは……鳥じゃないかも? サクラちゃん、あれは追いかけていくのもありかもよ? 方角としては東だし、目的の方向と一緒だしね。


「確かに黒い影が、小さく見えてますね? まぁ元々の目的地は東ですし、何がいるのかは気になりますから、追ってみましょうか!」


 あれ、なんだろね? 空を飛んでるのは間違いないけど……ミナトさんの反応的に、普通の鳥ではなさそうな予感!

 もしかしたら、少し前に話題に出てたドラゴンって可能性もありそうだよね! もしそうなら、是非とも見てみたいのさー!

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